ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

文字の大きさ
上 下
535 / 764
二章

524話

しおりを挟む
 食堂に案内されて向かうと扉の前でデイオン夫妻が卒倒して助け起こされてるところだっった。

 何事かしら。

「リリッリリ・・・」
「ググググッレレレレェェェェ・・・」

 細かく震えて私を見てる。

 何度も「リ」と「グ」を繰り返し震えてるのでちょっと愉快なことに。

「グレーデン辺境伯夫人、主人がこの状態ですので代弁することをお許しください」
 執事服の渋いおじさまが許可を求めたので頷くと、どうしてこの状態になったのか説明された。

「私はデイオン家にお仕えする執事アーノルドでございます」
 丁寧に名乗っていただきどうも。セバスチャンを期待したけどそんなわけないか。

「先ほど、グレーデン家アッガス家、ナギ王家よりお土産を受け取りましたのでご報告をしましたところ、予想外に素晴らしい品の数々にお二人は感動のあまり言葉が出なくなったようにございます」

 おー、お泊まりのお礼のお義母さまたちが用意してくださったお土産ってそんなすごかったかな。
 ナギからはアッガスで見ただけでも高価な布と薬方の入った壺や麻袋、細工の凝った家具とかだったから、ナギからのは恐ろしいかも。

「あ、あ、ああああ、有難うございます!近いと言ってもグレーデンは私どもの兵力では立ち入るのに躊躇してしまうものですから、噂に聞くお酒や化粧品も商人を通すととても手に入る値段ではなく・・・」
 魔獣の強さを知ってるだけに無謀なことはしないデイオン子爵に好感度アップだ。
 おしかけ令嬢たちってばかなり無謀だったんじゃ。
 しかし、危険地帯を移動する商人から買うのやっぱり高くなるんだね。
 王都まで運ぶ騎士隊はワイバーン便なので王都でもかなり値が張ってるか。

「一応、街道沿いの安全度は以前より上がってますが、デイオン領からですと、気軽においでくださいとは言えませんね」
「いいえ、それでも以前よろ格段に交通の便は良くなっております。食糧や魔物素材などの流通は増えております。本当にありがたいことです」

 王都に繋がる街道は特に熱心に対策してるので、護衛は必要だけどグレーデンには来やすくなってるはず。
 ここデイオンはグレーデンから王都の主要ルートからはズレてるので難易度はまだあるかな。
 アッガスから王都のルートも開拓が進んでいくはずなので今しばらくお待ちください。

 ちなみに今回のアッガスから王都に進む旅路はもう二領先でグレーデンから王都のルートに合流する。

 なのでデイオンとグレーデンのルート整備されていない。
 安全を取るなら二領先まで出て街道に出る感じ。
 結構な手間だよね。

「私、スノウリリィーさまのお使いになられる化粧品を使える機会が来るなんて夢見たいですわ」
 あっ、多分若干違います。でも監修してるのでお義母さまに憧れてらっしゃるなら満足いただけると思います。

「私も噂に聞く宝石のような煌めきで舌が溶けるような酒を頂くことがあるなんて」

 んー?琥珀色のウィスキーかな?
 
「「これは夢ではないか」」
「夢ではありませんのでとっとと中に入っておもてなししてください」

 夫妻がふわふわ夢心地なところ、やけに良い低音ボイスで突っ込まれてしまったよ。

「は!リーシャさま、失礼しましたわ!!皆様をお待たせしてはいけませんね」
「ああ、ああ、申し訳けない。あまりの喜びで我を忘れました」

 どこの家の執事も怖いのねぇ。思わず見ちゃったアーネストさん。ニッコリ笑ってくれるけど、背中に汗が滴るよう。
 セバスチャンとハロルドも怒ると迫力あるものね。

 夫妻が息を整えるのを待って、一緒に中に入った。

 すでに他のご家族と、ガルフ侯爵たち、セリウスさま、そして王女さまたちナギの主だった人たちも座っていた。

 またも重役出勤しちゃった。
 王女さまたちよりあとはまずいよね。

『皆様、お待たせして申し訳けありません』

 私は王女さまたちの右側の席に案内された。通訳の仕事してないな、あまり必要ないもん。

『『くるしゅうない。先に茶を頂きながら話しておった』』
 
 セリウスさまとガルフ侯爵がついててくれたみたい。

『さて、では食事を始めましょう』
 
 神と精霊の恵みに感謝を。

 ちなみにデイオン家のお孫さまたちは外で騎士さんたちと盛り上がってるそうだ。

 バーベキューをしている庭は食堂から少し離れてるのでさほど騒がしく感じないけど、きっと楽しんでるはず。

『『ふむ、これはまたさっぱりした優しい味だな』』

 スープが野菜とキノコと多分ウサギ系のお肉で、調味料は塩と香味野菜?
 
『グレーデンのレシピを入手いたしまして、ですが、胡椒などはなかなか入手出来ませんので我が領で育てている野菜に、ちょっと変わった味のするものがあるのでそれを代用しました』
 執事アーネストさんがスラスラと公用語で解説してくれた。
 ん、やっぱ従者コースとかのが真剣に学んでるんだよ。就職に有利にするために。

 変わった味のする野菜を詳しく聞きたいので後で聞こう。

『『工夫でより美味しくしようとするのは素晴らしいことよな』』

 キノコがふんだんなので出汁が効いてて美味しい。
 変わった味は・・・遠くの方にパクチー的な味と香り。好みの分かれる野菜をチョイスするとは、ここのコック、チャレンジャーだな。

『最近はスパイスやハーブに慣れすぎてたが素材の味をしっかり味わうのも良いものですね』
 セリウスさまはキノコの出汁を味わう。

 スパイスもハーブも大好きだけど、キノコもなかなかやりおる。この桃色とかどうにも不思議な色だけど、キノコ美味しい。

 そのあと出てきたのは、木の実とキノコたっぷり添えられたお肉のソテー。
 肉の旨みを吸ったキノコとキノコの出汁を吸ったお肉、そしてピリ辛の、実?

『そちらはメーカと言いまして、野菜の一種です。新たに作る食物を増やそうと仕入れた種の中に混ざっていたようで、ほのかな辛味となんとも言えない食感が良いということで今後は増やして育てることになりました』
 しかもより辛くなるように研究中だって。
 辛くしなくても良いのに。

『へー、これはピザやパスタに使ってみたい』

 セリウスさまが気に入ったようで、ガルフ侯爵も頷いた。

『これなら色々な料理に合いそうだ』

 今まで無かったなら、その種どこから混ざったんだろ。

 突然の商機にデイオン子爵とアーネストさんが喜びの顔を見せた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

我儘女に転生したよ

B.Branch
ファンタジー
転生したら、貴族の第二夫人で息子ありでした。 性格は我儘で癇癪持ちのヒステリック女。 夫との関係は冷え切り、みんなに敬遠される存在です。 でも、息子は超可愛いです。 魔法も使えるみたいなので、息子と一緒に楽しく暮らします。

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

竜神に愛された令嬢は華麗に微笑む。〜嫌われ令嬢? いいえ、嫌われているのはお父さまのほうでしてよ。〜

石河 翠
恋愛
侯爵令嬢のジェニファーは、ある日父親から侯爵家当主代理として罪を償えと脅される。 それというのも、竜神からの預かりものである宝石に手をつけてしまったからだというのだ。 ジェニファーは、彼女の出産の際に母親が命を落としたことで、実の父親からひどく憎まれていた。 執事のロデリックを含め、家人勢揃いで出かけることに。 やがて彼女は別れの言葉を告げるとためらいなく竜穴に身を投げるが、実は彼女にはある秘密があって……。 虐げられたか弱い令嬢と思いきや、メンタル最強のヒロインと、彼女のためなら人間の真似事もやぶさかではないヒロインに激甘なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:4950419)をお借りしています。

おさななじみの次期公爵に「あなたを愛するつもりはない」と言われるままにしたら挙動不審です

あなはにす
恋愛
伯爵令嬢セリアは、侯爵に嫁いだ姉にマウントをとられる日々。会えなくなった幼馴染とのあたたかい日々を心に過ごしていた。ある日、婚活のための夜会に参加し、得意のピアノを披露すると、幼馴染と再会し、次の日には公爵の幼馴染に求婚されることに。しかし、幼馴染には「あなたを愛するつもりはない」と言われ、相手の提示するルーティーンをただただこなす日々が始まり……?

処理中です...