533 / 764
二章
522話
しおりを挟む
デイオン邸は、大きめの洋館だ。
ただ部屋数はグレーデンやアッガスほど、多くないので騎士たちは庭に天幕になる。
交代で警備に起きてなくちゃなので人数の半分程度の準備で済む。
デイオン家の家族と従者さんたちが出迎えで並んでる。
『『今宵は世話になる』』
王女さまたちが挨拶をするとデイオン夫人が緊張でプルプルしながら挨拶を返す。
『我がデイオンにお立ち寄り頂き、光栄です。何かとご不便をおかけするかもしれませんがお寛ぎいただけると幸いです』
隣に立っているのはご長男とご次男かな。
王女さまたちとユエさまが言葉をかけて少し話して中に案内されていく。
「グレーデン辺境伯夫人、此度は我がデイオン領にお立ち寄り頂き、感謝します」
「いいえ、大所帯で準備が大変でしたでしょう。殿下方は気さくなお方たちなのであまり気負わず接して頂けると喜んでくださいますよ」
デイオン卿が心なしかホッとしたみたい。
グレーデン含めて王都から遠いから高位貴族とそうそう接する機会ないよね。
王様はフッ軽だけど、ほぼ転移陣で移動だろうからここには来ないはず。
デイオン子爵とセリウスさまが警備の再確認をして。
騎士さんたちとナギの従者さんの大半は外でバーベキューすることになってる。
さすがにこれだけの人数分の食糧を負担させるのは各領の備蓄食糧的に厳しいと判断されているので、立ち寄る先々では、主賓である王女さまたちとユエさまたち側近は歓待を受けるけど、騎士さんたちや従者さんたちはグレーデンからと王家から食糧を出す。
軽く一季節分は食べそうな騎士さんたちがやってきたらビビるよね。
道中、王女さまたち(私もね)の乗る馬車隊に影響がない範囲で、獲物がいたら狩ってる。オヤツ追加って感じだ。
「これだけの人数をお迎えするのは初めてです」
これでも半分は別ルートで移動してるんだー。ほんと大所帯。
アホ役人たちの護衛は予算取りたいくらいだろうなぁ。来なくていいレベルだったんだし。国庫に負担も国民が可哀想だし、取れないかな。仕方なし。
「こちらは野営も遠征も慣れていることなのでお気になさらず」
セリウスさまに言われるとデイオン一家が多少顔色が良くなった。
失礼とか申し訳ないとか思っちゃってたみたい。そのお気持ちがあるだけで嬉しい。
嫌な感じの人たちならそれが当たり前って平然としてそうだもの。
「この整備された庭で肉など焼くのは申し訳ないくらいですよ」
あ、セリウスさまってちゃんとお話しできるのね。語尾が伸びない!
「あの・・・図々しいお願いなのですが、騎士さまたちの夕食の場に孫たちも混ぜていただけないでしょうか?」
「お孫さま?」
「ええ、商人からグレーデンの宴会の様子を聞いて憧れを持っているようで」
ほほう!丸焼肉とかピザとかかな。
「ですが私たちも夕食は食堂に行きますので、本当に騎士たちだけがお相手することのなりますが」
そこね。王女さまたちと夫人である私とグレーデン騎士団代表代行のセリウスさまは、一応もてなされる側なので。
「孫たちは騎士や商人になれておりますので、執事と侍女をつければ心配いりません」
いちおうお目付役がいるならいいかな。
チェイスさんとアモンさんに見てて貰えばいいか。
「では火元には近付かず危ないことはしないようにだけ言い聞かせてくださいませ」
鉄板とか触ったりしたら大変。ポーションはあるけど、怪我はしないに越したことはない。
「ありがとうございます」
どうも接待がなかったらみんな参加したかったんだろうな。
バーベキューがご近隣に噂になってるとは。
私たちも一旦、お部屋に案内してもらって、一息付く。
「ニーナ、着替えは楽なのがいいな」
少しだけ荷解きしていたニーナに声をかけるとニーナはスゥっと笑顔になった。
「まだ辺境よりなので構いませんが王都近くになったら、周りの目が厳しくなりますからきちんとしてくださいね」
おおぅ。私のニーナがルークに似てきた。ショックだ。
「デイオン領はキノコと川魚が美味しいそうです」
今夜はキノコと川魚かな。海の幸を堪能してるので魚欲は満たされてるけど、キノコは嬉しいかも。
「時間があるときなら鉱山の見学も良かったんですが」
「鉱山?」
「洞窟の奥に入ると一面鉱石で煌めいてるそうです」
おおー!
「その石の価値は高くはないそうですが多く採れる他の石は魔素を多く含んでいて高価なのだそうです」
ニーナ、しっかり勉強してきたのね。私、一晩だからちょっとしか調べてなかった。反省。
「別の機会に見せていただきましょう」
他の場所に行って帰り道とかなら寄れる範囲だろう。
窓の外を覗くと多くの天幕が組み上がってた。
あとバーベキューセットも。
さすがにキャンプファイヤーは無理だ。
キッチン馬車もでてる。
ルルゥは道中は接待役のお家に任せるからコックさんとして厨房に入らないので、賄いの方を手伝ってる。
うーん。みんな楽しそう。
「リーシャさま、デイオン子爵夫人がお話ししたいとお見えです」
ノックされたのをニーナが対応してくれた。
「お疲れのところ申し訳けありません」
夫人がカーテシーしてくれたので私もお返しのカーテシー。
「いかがなさいましたか?」
私はデイオン家なのにデイオン夫人にお座りくださいというのは変よねーと思いつつ、座ってもらうよう促した。
ただ部屋数はグレーデンやアッガスほど、多くないので騎士たちは庭に天幕になる。
交代で警備に起きてなくちゃなので人数の半分程度の準備で済む。
デイオン家の家族と従者さんたちが出迎えで並んでる。
『『今宵は世話になる』』
王女さまたちが挨拶をするとデイオン夫人が緊張でプルプルしながら挨拶を返す。
『我がデイオンにお立ち寄り頂き、光栄です。何かとご不便をおかけするかもしれませんがお寛ぎいただけると幸いです』
隣に立っているのはご長男とご次男かな。
王女さまたちとユエさまが言葉をかけて少し話して中に案内されていく。
「グレーデン辺境伯夫人、此度は我がデイオン領にお立ち寄り頂き、感謝します」
「いいえ、大所帯で準備が大変でしたでしょう。殿下方は気さくなお方たちなのであまり気負わず接して頂けると喜んでくださいますよ」
デイオン卿が心なしかホッとしたみたい。
グレーデン含めて王都から遠いから高位貴族とそうそう接する機会ないよね。
王様はフッ軽だけど、ほぼ転移陣で移動だろうからここには来ないはず。
デイオン子爵とセリウスさまが警備の再確認をして。
騎士さんたちとナギの従者さんの大半は外でバーベキューすることになってる。
さすがにこれだけの人数分の食糧を負担させるのは各領の備蓄食糧的に厳しいと判断されているので、立ち寄る先々では、主賓である王女さまたちとユエさまたち側近は歓待を受けるけど、騎士さんたちや従者さんたちはグレーデンからと王家から食糧を出す。
軽く一季節分は食べそうな騎士さんたちがやってきたらビビるよね。
道中、王女さまたち(私もね)の乗る馬車隊に影響がない範囲で、獲物がいたら狩ってる。オヤツ追加って感じだ。
「これだけの人数をお迎えするのは初めてです」
これでも半分は別ルートで移動してるんだー。ほんと大所帯。
アホ役人たちの護衛は予算取りたいくらいだろうなぁ。来なくていいレベルだったんだし。国庫に負担も国民が可哀想だし、取れないかな。仕方なし。
「こちらは野営も遠征も慣れていることなのでお気になさらず」
セリウスさまに言われるとデイオン一家が多少顔色が良くなった。
失礼とか申し訳ないとか思っちゃってたみたい。そのお気持ちがあるだけで嬉しい。
嫌な感じの人たちならそれが当たり前って平然としてそうだもの。
「この整備された庭で肉など焼くのは申し訳ないくらいですよ」
あ、セリウスさまってちゃんとお話しできるのね。語尾が伸びない!
「あの・・・図々しいお願いなのですが、騎士さまたちの夕食の場に孫たちも混ぜていただけないでしょうか?」
「お孫さま?」
「ええ、商人からグレーデンの宴会の様子を聞いて憧れを持っているようで」
ほほう!丸焼肉とかピザとかかな。
「ですが私たちも夕食は食堂に行きますので、本当に騎士たちだけがお相手することのなりますが」
そこね。王女さまたちと夫人である私とグレーデン騎士団代表代行のセリウスさまは、一応もてなされる側なので。
「孫たちは騎士や商人になれておりますので、執事と侍女をつければ心配いりません」
いちおうお目付役がいるならいいかな。
チェイスさんとアモンさんに見てて貰えばいいか。
「では火元には近付かず危ないことはしないようにだけ言い聞かせてくださいませ」
鉄板とか触ったりしたら大変。ポーションはあるけど、怪我はしないに越したことはない。
「ありがとうございます」
どうも接待がなかったらみんな参加したかったんだろうな。
バーベキューがご近隣に噂になってるとは。
私たちも一旦、お部屋に案内してもらって、一息付く。
「ニーナ、着替えは楽なのがいいな」
少しだけ荷解きしていたニーナに声をかけるとニーナはスゥっと笑顔になった。
「まだ辺境よりなので構いませんが王都近くになったら、周りの目が厳しくなりますからきちんとしてくださいね」
おおぅ。私のニーナがルークに似てきた。ショックだ。
「デイオン領はキノコと川魚が美味しいそうです」
今夜はキノコと川魚かな。海の幸を堪能してるので魚欲は満たされてるけど、キノコは嬉しいかも。
「時間があるときなら鉱山の見学も良かったんですが」
「鉱山?」
「洞窟の奥に入ると一面鉱石で煌めいてるそうです」
おおー!
「その石の価値は高くはないそうですが多く採れる他の石は魔素を多く含んでいて高価なのだそうです」
ニーナ、しっかり勉強してきたのね。私、一晩だからちょっとしか調べてなかった。反省。
「別の機会に見せていただきましょう」
他の場所に行って帰り道とかなら寄れる範囲だろう。
窓の外を覗くと多くの天幕が組み上がってた。
あとバーベキューセットも。
さすがにキャンプファイヤーは無理だ。
キッチン馬車もでてる。
ルルゥは道中は接待役のお家に任せるからコックさんとして厨房に入らないので、賄いの方を手伝ってる。
うーん。みんな楽しそう。
「リーシャさま、デイオン子爵夫人がお話ししたいとお見えです」
ノックされたのをニーナが対応してくれた。
「お疲れのところ申し訳けありません」
夫人がカーテシーしてくれたので私もお返しのカーテシー。
「いかがなさいましたか?」
私はデイオン家なのにデイオン夫人にお座りくださいというのは変よねーと思いつつ、座ってもらうよう促した。
643
お気に入りに追加
1,875
あなたにおすすめの小説
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~
水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート!
***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。

聖女転生? だが断る
日村透
恋愛
生まれ変わったら、勝ち逃げ確定の悪役聖女になっていた―――
形ばかりと思っていた聖女召喚の儀式で、本当に異世界の少女が訪れてしまった。
それがきっかけで聖女セレスティーヌは思い出す。
この世界はどうも、前世の母親が書いた恋愛小説の世界ではないか。
しかも自分は、本物の聖女をいじめて陥れる悪役聖女に転生してしまったらしい。
若くして生涯を終えるものの、断罪されることなく悠々自適に暮らし、苦しみのない最期を迎えるのだが……
本当にそうだろうか?
「怪しいですわね。話がうますぎですわ」
何やらあの召喚聖女も怪しい臭いがプンプンする。
セレスティーヌは逃亡を決意した。
ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい
珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。
本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。
…………私も消えることができるかな。
私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。
私は、邪魔な子だから。
私は、いらない子だから。
だからきっと、誰も悲しまない。
どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。
そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。
異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。
☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。
彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる