520 / 764
二章
509話
しおりを挟む夜はさすがにジュリアスさまも解放された。
むぎゅーっとくっ付いて抱っこちゃんで過ごした。
いつもは抱っこで食事とかしてるから、逆に離してって思うけど、今はずっと隣でニコニコしてるだけで接触が足りない。
ムキムキ不足だよ。ムキムきを眺めてるだけだったメグミがリーシャな今は思う存分堪能できるんだよ!この素晴らしき日々をいきなり取り上げられたら死んじゃう!
一緒にお風呂に入ってる時もずっと抱っこちゃんしてたら、ジュリアスさまがしょうがないって笑ってくれる。
ニーナを早々に下がらせて、椅子でもベッドでも離れないよ。
「王都までの期間は寂しくなるな」
ううー。
「魔馬で早めても他が追いついてこれないからなぁ」
王国騎士の馬は立派だけど魔馬ほど馬力がない。
馬車も貴賓や高位貴族のガルフ侯爵は改造馬車だけど、全部の馬車が改良されてはいない。
もっと普及させるべきか。でもダメ役人のおケツが爆発するのは構わないよね?
良い役人にはスプリングなクッションを配給してあげて欲しい。
「途中で何泊もしないとだもの」
「王女さまたちを野宿させるわけにはいかないからな」
いっそ転移陣で移動させたいくらいだけど。さすがに他国の人に転移陣の存在も場所も教えるわけにはいかない。
「セリウスが俺と変わってくれたら良かったんだが」
「さすがにジュリアスさまが一ヶ月近く付きっきりは」
ウォレスに行ったり、カイダールの旅館の視察したり、他にお出かけも控えてるのでお仕事溜めたらダメだ。
「お祖父様がいるから俺たち兄弟が離れたところで父上と二人いれば全然良いんだが」
お二人は気まぐれにダンジョンとか行っちゃうから常駐をアテにしたらダメ。
「何を言われてもシグルドに任せるべきだった」
領主を?
だとすると私は誰の嫁に指定されてたんだろうか?
「・・・そうか、領主になってなかったらこんな悩みはなかったな」
私の頭に浮かんだ疑問に気がついたらしい。
「結婚していなかったらそもそも休みがなくても気にしてない」
おー、ワーカーホリックだった。
「仕方ない。世の中のまともな領主は年の半年は領地に単身赴任のようなものだ。俺はまだマシだな」
社交を必要とするお家は夫人がずっと王都にいたり、子供も学校と婚約相手探し、花嫁修行とほとんど王都にいて、領地の視察や管理に戻るのは当主だけとかが多い。
家令や代官に任せっぱなしの家もあるけど、それを他の領主に知られると信頼を無くして付き合いが断たれるから、みんなそれなりに領地に帰るんだそう。
グレーデンやホーンのように領地に篭りっぱなしな方が珍しい。
だけど辺境伯は、騎士団連れて領地を離れるとやばいので。奥さんとかは本人次第だけど、行き来が大変だから社交は最低限だ。
「王宮勤めがボロボロな分、地方の文官はそれなりに出来るのが多い」
王宮に残れなかったハボット派以外の優秀な人材が領地を守る家令や代官になってる。
ただ悪さに使えた土地にはハーボット派閥の文官が配属されてた。抜け目がない。
悪さをしなけりゃ今後も優秀な宰相とか大臣を輩出してたでしょうね。なんで悪い方向に向かったのかな。
「薬だけならまだ目こぼしされたかも知れないが。イダルンダの奴隷売買とカイダールの暗殺はやり過ぎだ」
薬はねー、自分で買って自分で楽しむまでは自己責任。
売るのは悪いけど、買う人がいなきゃ儲からなくて続かない。
望まぬ相手に使うのは論外だし。
薬術を悪用するのは許せないし。
薬と毒は紙一重。ちょっと配合を変えればって思っちゃうのはある。より良い薬が出来ないかって研究してるとたまに思わぬ作用があってってなったのかなぁ。
だけど、カイダールお父さまのように特効薬を作るんじゃなくて、魔薬に走っちゃった人たちに同情はしないよ。
「頭よくても悪いことに使ったら台無し。真面目にコツコツ頑張った人に良いことが起こるようにしたいですね」
腐らず真面目に生きた人が望めば、王宮の高給取りになれたら良いな。
「地方が困るかも知れない」
それはそれで困った。
「まずは問題なく王都にナギ国の客人方を送って、少しでもマシな役人を帰路では用意したい」
一ヶ月くらいでどうにかなるかしら?
「王様にネチネチ苦情言ってきます」
「陛下にそんなこと言えるのは・・・父上も母上も結構言ってるな」
私だけって言いかけて、気づいちゃった。
「お祖父様もお祖母様も言いそうです」
「そうだな」
ジュリアスさまはグレーデン家の中ではかなり常識人なのよね。一人だけ。
セリウスさまとクラウスさまはちょっと適当な部分があるけど、それでもジュリアスさまを立ててる分控えめだけど、考え方はお義母さま寄り。
「陛下は昔からお優しい方だから、あまりいじめないようにな」
お優しいって言うか、グレーデンには甘えに来てる感じ。
多分ズバズバズケズケ言われるの楽しんでる。
でも!!
「変な人押し付けたことは文句言います」
だって絶対使えないって知っててこっちに丸投げしてきたもん。
「改革中だから許してあげなさい」
えー。そう言われるとハーボットのせいだから強く言えないなぁ。とほほ。
710
お気に入りに追加
1,875
あなたにおすすめの小説
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~
水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート!
***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜
望月かれん
ファンタジー
中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。
戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。
暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。
疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。
なんと、ぬいぐるみが喋っていた。
しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。
天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。
※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる