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二章

508話

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 晩餐の後は、気が合った人たちと部屋で飲むとかがちらほら。
 ダメ役人はお仲間らしい同類たちと集まったまま飲み直したいと侍従たちにいったらしいので一般的に流通してるお酒しか出さないようにってレオルカさまが通達した。ごねるようならガルフ侯爵に苦情言うぞって伝えるように指示。
 お仕事しないのにお酒飲んで過ごそうなんて図々しいな。
 私だって好きに飲めないって言うのに!

 ちなみに王女さまたちにはスペシャルエステ付きお風呂、ユエさまたち上級役人さんたちにはお部屋付きお風呂でよもぎ蒸し(希望者のみ)って言う接待があるよ。

 お付きの侍女さんたちにもお休み時間には大浴場を開放だって。

 アッガスの旅館は、我が国の王妃さまを真っ先にお呼び出来る余裕がないまま、慌てて開業なので、後日、グレーデンとカイダールの方でおもてなしの予定。

『ファリンさま、ルアランさま、旅のお疲れをお風呂とハーブの香りで癒してくださいませね』

 お休みのご挨拶をしてスペシャルエステにご案内。

 十二歳じゃお肌ケアは要らないだろうけど、船旅と見知らぬ土地で見知らぬ大人に囲まれた気疲れをとっていただかないと。

『『リーシャ、ありがとう。また明日』』

 腕を重ねて腰を落として礼をされた。
 私も真似して見るとニコッと笑って、
『『この国の礼で構わない』』
って言われた。下手くそだったかな。

 ガルフ侯爵がユエさまたちに挨拶をして別れた。

 レオルカさまとセリウスさま、ジュリアスさまとお話しするそうで、私とお義母さまが同席することに。
 マデリーさまとアンゼリカさまは明日の相談があるってシャロンさまが連れて行ってくれた。
 レオルカさまに体調不良とか伝えるわけにいかないからね。アンゼリカさまは途中で何か用事を頼まれる感じかな。

 ささっと場を用意されて、軽めのお酒とおつまみ、軽食が並ぶテーブルに座る。

「ハァ、まずは至らぬ者を先に送ってしまったことを深く陳謝する」
 ガルフ侯爵が深いため息を吐いた。

「俺たちは王宮の状況を知らないからここまでとは思っていなかったが、随分と人材不足のようですね」
「はっきりいえば、ハーボットの犬たちは自分たちが旨い汁を啜るためならどんな抜け道も使うような狡賢さがあった」

 法を掻い潜るには法を詳しく知ることからって感じで、罪に問えないように行動できる者を重要な部署に置いてたりしてたみたい。
 その才能があるなら普通に頑張れば昇進出来ただろう。
「旨い汁を吸う気概も能力もないか」

「混沌期も戦時も経験がないからか、野心もない。日々楽に生きていくほうがそこそこ暮らしていく分には良いんだろう」

 レオルカさまとジュリアスさまがお酒をすすめれば、嬉しそうにコップを持ち上げた。

「今は混乱期なのでは?」
「そうとも言えるが他人事だろう」
 そっか。人が足りなくても日和見のままなんとなく仕事が片付いてるならなんとかなってる?

「リーシャ夫人の言う学生の奨学金なんかもなかなか話が進まないのは自分たちの利益がイマイチ見込めないからだろう」
 なぬ!?
 有効な人材は宝でしょ?利益もりもりだよ。

「大局が見れない者が多い」
「ハーボット派閥じゃなければ出世出来ない期間が長過ぎたのです。自分たちの領地を守ってさえいればなんとかなったのがいきなり自分たちにもチャンスが回ってきたとして、護りに徹した期間のせいで野心がない」

 うーむ。俺の時代ー!!とかはっちゃけられても困るけど、無関心も困るね。

「これから未来に希望を持てる者が増える、と言う実感を持つには留学は良い機会だが、魔導師派魔力が多い、魔法学を理解できる能力が必要だ。望む者が少ないと言える」
 ガルフ侯爵と側近のイーム伯爵は渋い顔をしつつ、口に含んだお酒の美味しさに一瞬口元が緩む。でも真面目な話が続く。

「ネイマーシェに限らず、文化や言語を学ぶ留学の話はまだ議題に上がってないのですか?」
「それは私たちも通したい話だが、今の自分たちの職を失う危険を犯したくないと賛成しない者が多いのだ」
 なんてこった。後進に道を開いてあげないなんて。

 でも昔、高校の生徒会長やってた子が「制服のデザインや仕様変更の希望は生徒会が出すんだよ」って言いつつ、「でも私たちその制服着れないじゃない?だから強く意見しないんだよ」って言ってたなぁ。
 他の高校がどうだったかわからないけど、ビックリだった。功績を残したりしなんだって。学生だから内申点のために生徒会入ったとか言ってた先輩もいたし。

 自分たちの為にならないならどうでも良いって人は多いのかも。
 
 良いことしたら自分にも返ってくるかも知れないのに。
 情けは人のために在らずなんだよ!
 ちょっと違うかな。

「奨学金は別にグレーデン内だけでやっても良いのでめんどくさいこと言う人は放置でいいです」
「いや、外務も執務も有用な人材が欲しいんだ。魔導師団もそうだろう。もう少し待ってくれ」
 切実って感じで言われちゃった。

「今回のことで使えない人間の大半は部署異動になる。口しか出さない連中に押し付けてやれば、有用な人材が欲しくてたまらなくなるだろう」
 あら、クビ切られずに済んじゃうのね。とりあえず。

「はぁ、旨い酒に旨いつまみがあるのに不味い話は勿体無いな」
「そうねぇ、人事移動は王都でしか出来ないんだからもう放って自滅を待ちましょうねぇ」
 お義母さまが良い笑顔でお酒のおかわりをすすめる渋い顔をしていたオジサマたちが途端に笑顔になった。

 高級ラウンジのママ!!

「陛下がグレーデンに行きたいとよくぼやくのが物凄くよくわかります!!」

 あーあ、オジサマたちが飲み過ぎちゃった。明日ちゃんと起きられるのかな。



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