504 / 701
二章
493話
しおりを挟む
会議をする広場で一瞬揉めた。
ここはアッガスでシーズ家なので一番偉いのはレオルカさま。
だけどグレーデン辺境伯領の一つなので、ジュリアスさまがいない席では妻の私か代行で来てるセリウスさまが上座に着くべきとか。
めんどくさいな。
「ここを率いてるのはレオルカさまでしょ?」
「そうよぉ~、頑張ってちょうだいねぇ」
私とお義母さまの声で「あ、はい」って納得してくれた。
外務大臣と次官とかぞろぞろ入ってきて、席に着いていく。
めんどくさいことを言うらしい役人たちは結構な下座だぞ。よく態度がビッグでいられるもんだ。
『さて、此度のことはナギからの連絡が入ったのが急だったこともあり、グレーデンの皆さまとアッガス領民には無理を言って申し訳ないと陛下からお言葉を預かっています。私ども外交を任されている部門の者たちが予想外に使えなかったことを含め、私からも深く謝罪申し上げる』
大臣と一緒に来た人たちが深々と頭を下げた。
公用語が半分以上聞き取れなかった役人たちが困惑してる。
しかし、大臣が上手だったなぁ。トップに先に謝られちゃうとこの後ネチネチいびれないじゃん?
お義母さまとシャロンさまもひんやり微笑んでるよ。
『言葉が通じないと嫌味の言いようもないですねぇ』
『本当に。よく平気な顔をしていられること』
レオルカさまとセリウスさまが真顔で固定してる。嫌味の応酬に混ざりたくないんだね。
ガルフ侯爵は、さわやかに見える笑顔のままで、チラリと役人たちの選定理由を教えてくれた。
『彼ら王都でもあんな感じでね。王都での歓迎に支障が出そうだったから、こちらで鍛えていただこうかと宰相閣下のご提案で。私の力不足を棚に上げておまかせするしかなかった。まことにすまぬ』
ぶっちゃけすぎだけど、うちに丸投げして良い理由ではないな。
『彼らの半分は旧ハーボット勢の罪にはならなかった者でね。首にもできず』
要するに使えないから罪は犯してない、ただの手駒や数合わせ、尻尾切り要員とか、目眩し要員みたいな末端だった残り。
ハーボットの後始末の一端だから、〈私〉に投げても良いって判断だったのかな?
仮に私に押し付けるのは良しだったとして、レオルカさまたちは完全な巻き添えだな。
半分は、人手不足になって雇ったコネありな奴ららしい。むーん。
さわやかなおっさんは敵と認定したぞ。あと、宰相は〈抜けないくん〉あげるのやめた。〈禿げるくん〉を作って献上したいかも。
いや、ハーボットの搾りかすの処理くらい私もするべきかな!?
『とりあえず、うちでは外交のために公用語を使える者には昇給、昇格を約束した。試験を受けることになる。外務の役人たちも同じようにした方が良いのでは?』
レオルカさまがそう言うとガルフ侯爵と隣席の人たちが目が笑ってない顔で、
『仕官試験では一応合格はしてるはずなんだがね』
『ははは』
これはコネによる不正が蔓延ってるのかなぁ。
『まぁ今はそんなどうでも良いことは置いておこう!ナギ国の方たちに心地よく過ごしてもらわないと』
そんなわけで、到着から三日、船旅の疲れを癒してもらって、グレーデンから改造馬車を出して十日かけての移動、途中の宿泊や食事のことなど、王宮での私とルルゥのお仕事など一通り話し合った。
途中でダメ役人たちがキレた。
「我々にも分かるよう話すべきだ」
だって。
「これからやってくる方々は公用語しか使わないが、お前たちはどうやって接待する気なのかね?」
ガルフ侯爵が冷ややかに言うと、
「通訳を通して」
なんて言うものだから、
「お前たちは通訳を連れてきているのか?」
って返されて青くなった。
「通訳を経費で落とすほどの職務を担っていたかね?」
どうやら役人たちは、通訳を雇うって考えになる程度に中途半端なボンボンたちだな。
しかし、普通にレイドラアース語で話してあげてるガルフ侯爵優しいね。
『ナギ国のお客人のいる場で、私たちがこちらの言葉で話し合うのは良いことではないとは思い至らないかね?』
「は?・・・言葉・・・思う???」
中途半端にしか聞き取れないみたいで何も言い返してこなくなった。
外交の役人、おバカでもなれたのか。高給取り??羨ましいね!!!
『ガルフ侯爵、我々は夜に公用語を学時間を作った。そちらの方たちも自信がないなら仲間内で勉強会をした方が良いだろう』
レオルカさま、一緒にやろうとは言わない。セリウスさまがちょっと笑った。
『そうだな、私も自信があるわけではない』
ペラペラだけど!嫌味っぽくないのがすごい。
『私たちも一度復習をしましょう』
『それは助かります』
明るく返事をする人と困惑して何のことかみたいな顔をしてる人との温度差。
公用語って本当に使い機会が少ないから仕方ないけど、外交の人はちゃんと話せないとダメだよ。
ちなみに夕食のことも普通にコースを出すけど余分に食べたいとか贅沢を言いたいなら、獲物を獲ってくるのがグレーデンのやり方だと伝えたら、まとも役人たちがダメ役人たちを睥睨してから、
『私たちは狩は不得手ですので贅沢は申しません。それに美味しい食事を出して頂いて十二分に感謝しております』
って言ってくれた。まともな人がいて良かったよ。役人がみんなダメだったらとドキドキしたよ。
『狩か・・・朝一番なら行っても良いな』
ガルフ侯爵がいい笑顔で肩を回しちゃったよ。
ここはアッガスでシーズ家なので一番偉いのはレオルカさま。
だけどグレーデン辺境伯領の一つなので、ジュリアスさまがいない席では妻の私か代行で来てるセリウスさまが上座に着くべきとか。
めんどくさいな。
「ここを率いてるのはレオルカさまでしょ?」
「そうよぉ~、頑張ってちょうだいねぇ」
私とお義母さまの声で「あ、はい」って納得してくれた。
外務大臣と次官とかぞろぞろ入ってきて、席に着いていく。
めんどくさいことを言うらしい役人たちは結構な下座だぞ。よく態度がビッグでいられるもんだ。
『さて、此度のことはナギからの連絡が入ったのが急だったこともあり、グレーデンの皆さまとアッガス領民には無理を言って申し訳ないと陛下からお言葉を預かっています。私ども外交を任されている部門の者たちが予想外に使えなかったことを含め、私からも深く謝罪申し上げる』
大臣と一緒に来た人たちが深々と頭を下げた。
公用語が半分以上聞き取れなかった役人たちが困惑してる。
しかし、大臣が上手だったなぁ。トップに先に謝られちゃうとこの後ネチネチいびれないじゃん?
お義母さまとシャロンさまもひんやり微笑んでるよ。
『言葉が通じないと嫌味の言いようもないですねぇ』
『本当に。よく平気な顔をしていられること』
レオルカさまとセリウスさまが真顔で固定してる。嫌味の応酬に混ざりたくないんだね。
ガルフ侯爵は、さわやかに見える笑顔のままで、チラリと役人たちの選定理由を教えてくれた。
『彼ら王都でもあんな感じでね。王都での歓迎に支障が出そうだったから、こちらで鍛えていただこうかと宰相閣下のご提案で。私の力不足を棚に上げておまかせするしかなかった。まことにすまぬ』
ぶっちゃけすぎだけど、うちに丸投げして良い理由ではないな。
『彼らの半分は旧ハーボット勢の罪にはならなかった者でね。首にもできず』
要するに使えないから罪は犯してない、ただの手駒や数合わせ、尻尾切り要員とか、目眩し要員みたいな末端だった残り。
ハーボットの後始末の一端だから、〈私〉に投げても良いって判断だったのかな?
仮に私に押し付けるのは良しだったとして、レオルカさまたちは完全な巻き添えだな。
半分は、人手不足になって雇ったコネありな奴ららしい。むーん。
さわやかなおっさんは敵と認定したぞ。あと、宰相は〈抜けないくん〉あげるのやめた。〈禿げるくん〉を作って献上したいかも。
いや、ハーボットの搾りかすの処理くらい私もするべきかな!?
『とりあえず、うちでは外交のために公用語を使える者には昇給、昇格を約束した。試験を受けることになる。外務の役人たちも同じようにした方が良いのでは?』
レオルカさまがそう言うとガルフ侯爵と隣席の人たちが目が笑ってない顔で、
『仕官試験では一応合格はしてるはずなんだがね』
『ははは』
これはコネによる不正が蔓延ってるのかなぁ。
『まぁ今はそんなどうでも良いことは置いておこう!ナギ国の方たちに心地よく過ごしてもらわないと』
そんなわけで、到着から三日、船旅の疲れを癒してもらって、グレーデンから改造馬車を出して十日かけての移動、途中の宿泊や食事のことなど、王宮での私とルルゥのお仕事など一通り話し合った。
途中でダメ役人たちがキレた。
「我々にも分かるよう話すべきだ」
だって。
「これからやってくる方々は公用語しか使わないが、お前たちはどうやって接待する気なのかね?」
ガルフ侯爵が冷ややかに言うと、
「通訳を通して」
なんて言うものだから、
「お前たちは通訳を連れてきているのか?」
って返されて青くなった。
「通訳を経費で落とすほどの職務を担っていたかね?」
どうやら役人たちは、通訳を雇うって考えになる程度に中途半端なボンボンたちだな。
しかし、普通にレイドラアース語で話してあげてるガルフ侯爵優しいね。
『ナギ国のお客人のいる場で、私たちがこちらの言葉で話し合うのは良いことではないとは思い至らないかね?』
「は?・・・言葉・・・思う???」
中途半端にしか聞き取れないみたいで何も言い返してこなくなった。
外交の役人、おバカでもなれたのか。高給取り??羨ましいね!!!
『ガルフ侯爵、我々は夜に公用語を学時間を作った。そちらの方たちも自信がないなら仲間内で勉強会をした方が良いだろう』
レオルカさま、一緒にやろうとは言わない。セリウスさまがちょっと笑った。
『そうだな、私も自信があるわけではない』
ペラペラだけど!嫌味っぽくないのがすごい。
『私たちも一度復習をしましょう』
『それは助かります』
明るく返事をする人と困惑して何のことかみたいな顔をしてる人との温度差。
公用語って本当に使い機会が少ないから仕方ないけど、外交の人はちゃんと話せないとダメだよ。
ちなみに夕食のことも普通にコースを出すけど余分に食べたいとか贅沢を言いたいなら、獲物を獲ってくるのがグレーデンのやり方だと伝えたら、まとも役人たちがダメ役人たちを睥睨してから、
『私たちは狩は不得手ですので贅沢は申しません。それに美味しい食事を出して頂いて十二分に感謝しております』
って言ってくれた。まともな人がいて良かったよ。役人がみんなダメだったらとドキドキしたよ。
『狩か・・・朝一番なら行っても良いな』
ガルフ侯爵がいい笑顔で肩を回しちゃったよ。
639
お気に入りに追加
1,774
あなたにおすすめの小説
異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~
水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート!
***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
三回も婚約破棄された小リス令嬢は黒豹騎士に睨まれる~実は溺愛されてるようですが怖すぎて気づきません~
鳥花風星
恋愛
常に何かを食べていなければ魔力が枯渇してしまい命も危うい令嬢ヴィオラ。小柄でいつも両頬に食べ物を詰めこみモグモグと食べてばかりいるのでついたあだ名が「小リス令嬢」だった。
大食いのせいで三度も婚約破棄されてしまい家族にも疎まれるヴィオラは、ひょんなことからとある騎士に縁談を申し込まれる。
見た目は申し分ないのに全身黒づくめの服装でいつも無表情。手足が長く戦いの際にとても俊敏なことからついたあだ名が「黒豹騎士」だ。
黒豹に睨まれ怯える小リスだったが、どうやら睨まれているわけではないようで…?
対照的な二人が距離を縮めていくハッピーエンドストーリー。
卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな
しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく
しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ
おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ
婚約破棄にも寝過ごした
シアノ
恋愛
悪役令嬢なんて面倒くさい。
とにかくひたすら寝ていたい。
三度の飯より睡眠が好きな私、エルミーヌ・バタンテールはある朝不意に、この世界が前世にあったドキラブ夢なんちゃらという乙女ゲームによく似ているなーと気が付いたのだった。
そして私は、悪役令嬢と呼ばれるライバルポジションで、最終的に断罪されて塔に幽閉されて一生を送ることになるらしい。
それって──最高じゃない?
ひたすら寝て過ごすためなら努力も惜しまない!まずは寝るけど!おやすみなさい!
10/25 続きました。3はライオール視点、4はエルミーヌ視点です。
これで完結となります。ありがとうございました!
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる