上 下
501 / 710
二章

490話

しおりを挟む
 
 夕食後の公用語講座には、かなりの人数が来てくれた。
 平民出のメイドさんや騎士さんたちも学びたいとのことだったので、急遽レベルわけで、講師役を家令さんや得意だと言う侍従さんにお願いした。
 今後も希望者には時間を作ってもらうことになるよ。やったね。

 いわゆる貴族出の侍従さん、騎士さんがそれなりに使える人向けの講座を受ける。
 今は急遽なので三クラスで、お義母さまが一番話せるクラス、シャロンさまが二番目、私が三番目を受け持つ。
 マデリーさまは、シャロンさまの授業をレオルカさまと受けるそうだ。

 お義母さまたち、かなり流暢だった。

 私はほぼ初心者の人たちと齧った程度の人たちだったのでまずはアルファベッドみたいに文字と発音を大きめな板に書きながら説明。
 差し迫って必要なのは接客用語なので、
ご挨拶と、『私では出来かねますのでご要望は侍従にお願いします』ってご案内する言葉を並べた。
 後から必要な事は徐々にね。

 ナギ国以外でも基本的に外国のお客様には、屋敷内は侍従侍女が応対するから、失礼のない程度の挨拶ができれば良いかな。
 学習意欲がある人だけ、この先も続いていって昇給や昇進を目指してくれれば良い。

 アッガスのシード家は出来たばかりのお家だからやりがいを感じて集まってくれてる子も多いんだろうな。楽しそうに質問してくれたり、真剣に聞き入ってくれたり。

 マーベルハントのお祖父様に協力してもらって、公用語のわかりやすい教科書を作りたいな。
 その前に海洋王国圏の公用語を勉強しなくちゃ。
 デレード国から譲ってもらった訳本は、デレード後↔︎あちらの公用語だった。
 あちらの公用語↔︎こちらの公用語ってのをまず作るべきなんだよー。

 よく考えなくても勉強するべきだった。
 ネイマーシェや他の国はあちらとのお付き合いがあるから多分学んでるだろうなぁ。
 リックさまは学んだかなー!?

 カマランのアルジェさまとかも話せそうだな。機会があったら聞いてみなくては。

 授業は、一日一時間、足りないだろうけど、個人学習もしてほしい。

 授業の後は、少し質問を受けてからお部屋に戻った。
 お風呂は備え付きので済ませた。
 ニーナが付いててくれるものの、いつもの賑やかさがないのでちょっと寂し。

 ところでニーナさん。私のベッド周りにクッションとフットレストとかいっぱい置かれてるのはなぁぜ?
 じっと見てたら、ニーナがニコリと私をベッドに乗せた。
 まぁ、力持ち!!

「頭を落とされると危ないですから」
 
 あー、んー、そうね。寝相が悪いらしいのは良い加減気付いてますけどね。
 フットレストがこんなにあるのに驚くなぁ。他のお部屋の分だったりしないかな。

「今夜はジュリアスさまもアズライトもジャスパーもおりませんので大事を取りました」
 
 もう重ねて説明はいらないから。

 おやすみを伝えて、一人寂しくお布団に入りましたとさ。



 ゴズン!!

「ふぁぁ??」

 朝の光が窓から入ってるなか、私はニーナが用意してくれたフットレストの上に体半分置いてた。
 なぜ枕の位置から逆になって落ちてるんざましょ??

 掛け布団が左に落ちてるのでかなり暴れたのかな。

 ニーナが入ってくる前に証拠隠滅しよう。
 ベッドカバーを整えて、崩れたフットレストの並びを直してクッションも整えて。

 ふぃー!

 普段、ジュリアスさまがぎっちり抱きしめてくれてなかったら顎とか蹴っ飛ばしてそうだなぁ。

 ニーナを呼び入れても問題なさげかしっかり確認してからニーナを呼んだ。

 すぐバレたよね!

「無駄に体力をお使いにならずに。全部洗いに出しますし」
 ぐふぅ。

 顔を洗って、お着替えとお化粧と髪の毛をやって貰い、食堂に向かう。

 王都からの客人たちは自室でとるそうなので気楽だ。
 すでにレオルカさまとお義母さまとシャロンさま、アンゼリカさまとセリウスさまが席に着いてた。
 マデリーさまは今朝は食欲がないそうだ。

 悪阻とかだと大変だなぁ。あとで果物とあっさりした物を届けよう。

「ルルゥ、朝も厨房に入ってるの?」
「ええ、こちらのコックたちはグレーデンから移った者たちですから新しい料理も教えがてらねぇ~」
 ほほう。コックさんたちが嬉しそうだから良い上司だね。

「昨日仕入れたお魚もたくさんあるから朝からお魚いっぱい出すわよぉ~」

 わーい。
 
 出されたのはパンに揚げた魚フライと魚の叩きサラダだった。
 私以外にはお肉数種類付き。量がいるからね。

「これが最近よく浜に飛んでくるんで迷惑なんだ」
 レオルカさまが言うのは刺身になったヤガラみたいな魚。ただし巨大。
 ダツみたいな感じで飛んでくるのかな?危ないな。
 んで、口が尖った魚ってこれ!?
 ノコギリザメとかマグロっぽいのとかじゃなかったかー。

「セリウスさまが言ってた魚?」
「違うよー、もっと大きいのー」

 あ、まだサメかマグロの線残ってた。

「でもレオルカさま、この迷惑なのも美味しいので、スープや煮物にしても高級なお味ですよ」
「・・・綺麗なまま捕獲させよう」

 上品なお吸い物で飲みたいなぁ。

「サシミでも美味しいから楽しみねぇ」
「リーシャちゃん、後で教えてちょうだいねぇ」
 お義母さまとルルゥが目を輝かせてる。

「飛んでこないなら歓迎なんだけどなぁ」
「飛んできたら剣で叩き落とせば良いだろー」
 
 セリウスさまなら嬉々として叩き落としてそう。

「後でお魚の貯蔵庫見せてね」
「「「はい!!」」」

 厨房のコックさんたちが大変元気だった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

三回も婚約破棄された小リス令嬢は黒豹騎士に睨まれる~実は溺愛されてるようですが怖すぎて気づきません~

鳥花風星
恋愛
常に何かを食べていなければ魔力が枯渇してしまい命も危うい令嬢ヴィオラ。小柄でいつも両頬に食べ物を詰めこみモグモグと食べてばかりいるのでついたあだ名が「小リス令嬢」だった。 大食いのせいで三度も婚約破棄されてしまい家族にも疎まれるヴィオラは、ひょんなことからとある騎士に縁談を申し込まれる。 見た目は申し分ないのに全身黒づくめの服装でいつも無表情。手足が長く戦いの際にとても俊敏なことからついたあだ名が「黒豹騎士」だ。 黒豹に睨まれ怯える小リスだったが、どうやら睨まれているわけではないようで…? 対照的な二人が距離を縮めていくハッピーエンドストーリー。

愛なんてどこにもないと知っている

紫楼
恋愛
 私は親の選んだ相手と政略結婚をさせられた。  相手には長年の恋人がいて婚約時から全てを諦め、貴族の娘として割り切った。  白い結婚でも社交界でどんなに噂されてもどうでも良い。  結局は追い出されて、家に帰された。  両親には叱られ、兄にはため息を吐かれる。  一年もしないうちに再婚を命じられた。  彼は兄の親友で、兄が私の初恋だと勘違いした人。  私は何も期待できないことを知っている。  彼は私を愛さない。 主人公以外が愛や恋に迷走して暴走しているので、主人公は最後の方しか、トキメキがないです。  作者の脳内の世界観なので現実世界の法律や常識とは重ねないでお読むください。  誤字脱字は多いと思われますので、先にごめんなさい。 他サイトにも載せています。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

もふきゅな
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?

朱音ゆうひ
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!  「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」 王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。 不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。 もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた? 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)

処理中です...