ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

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二章

486話

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 レオルカさまのお屋敷の庭に降り立った。

 大きなワイバーンたちの合間にちまっとした私。

 セリウスさまに降ろされてホッと一息ついたら。先触れを受けてたアンゼリカさまがドーンと飛んできた。

 ひょえー。

 私相手だから手加減されてるし、抱き込みなので吹っ飛ばされたりはしないけど、結構な衝撃だよ。

「アンゼリカ、母上の真似はやめろ」
「お前にはしない」
「そうじゃねぇよー」

 私が立ってた場所よりちょっとズレてるのがアンゼリカさまの急ブレーキの後だよ。ワイバーンたちが尻尾をへにょってさせて引いてるよ。

「セリウス卿、リーシャさま、ようこそお越しいただきました」

 マデリーさまが淑女の挨拶でお迎えしてくれる。
 前回はまだカッコよさのが勝ってたけど、夫人の貫禄ってやつ・・・ん??

 なんか不思議な魔力を感じる。よく見れば、腰回りがゆったりしてるな。報告は来てないぞ。まだ内緒のやつかな?

 私の目線だから分かりやすいのかな。
 身長差が三十以上ある。涙。

「マデリーさま、しばらくお世話になります」

 こりゃ大変だな。マデリーさまが無理しないように気をつけなくちゃ。

「スノウリリィさまやデリアさまのおかげで準備は恙無く進んでますがナギ国のお方たちをお迎えするにあたって不備がないか気になるばかりで」

 豪傑なアンゼリカさまの補佐なマデリーさまに不安があるとな。

「マデリーさまなら問題なく対応出来ると思いますよ」
 アッガスを任されるにあたって、レオルカさまも騎士団の隊長たちも公用語修習に必死だって聞いてる。
 海向こうのお客様の受け入れのためには、いずれはあちらの公用語も必修になる。
 付き合いが濃くなるからデレードやナギの言葉も覚えられると強みになる。

「アンゼリカさまは公用語はどれくらい・・・」
と質問しようと思ったら目を逸らされちゃった。
 セリウスさまがこっそり「少し」っておしえてきれたよ。
「お前もだろうが」
 って追いかけっ子が始まった。さすがイトコだね。

 ニーナたちが降ろされた荷物と一緒に近くに来たので、みんなで屋敷の中に向かった。

 玄関ホールに入ったところで、レオルカさまが随分お疲れな顔で走ってきた。

「リーシャさま。ようこそ。お出迎えに間に合わず申し訳ない」
「かまいません。邪魔をしてしまいましたね」

 私はお手伝いのために来たので、仕事を中断させるのは本意じゃない。

「歓迎の式典の騎士の配置や宴のことはおおよそ決まったのですが、なにぶん主賓が未成年の王女ということで長時間にはしたくないのですが・・・」
 短いと歓迎の意が伝わらないと王都から来た役人がうるさいらしい。

 金出さないのに口は出すみたいな奴らか。

「グレーデンほどではないとは言え、魔獣の心配もあるのに兵を出さずに長時間の式典をしろと??」

 王都暮らしはこれだから!!って騎士さんたちが怒ってる。

 殺気立ってるな。胎教に悪いよ。

「役人どもは無視して、レオルカさまに決定権があるときっちり認識させましょうね。人手を出さずに文句を言うのは図々しいですからね」
 
 私がはっきりものを言うのには慣れてないだろうからビックリしてるね。
 
「レオルカ、リーシャちゃんは理不尽な相手にはハッキリものを言うからー、気をつけてねー」
 セリウスさまがニヤリとしつつ、レオルカさまの背を叩き。
「気をつけるって何を」
 若干青ざめた表情で引き攣る口元を隠す。私は下からなので丸見えだよー。

「目上でも言っちゃうよー」

 セリウスさま酷いなー。多少は相手を見るよ。不敬罪とか暴力的な相手だと困るっしょ。

「俺は討伐の方見てくるから~」
 セリウスさまはレオルカさまにいい笑顔で告げて、爽やかに逃げたよ。

「さて、サクサク仕事を片付けましょう」
 セバスチャンが近くに控えていた執事服の二人を促してレオルカさまを連れていく。

「リーシャさまはまず休憩を!マデリー夫人、お願いしますね」

 アンゼリカさまとマデリーさまとでお茶をすることに。

「アンセリカさま、マデリーさまと書類仕事をする予定なので、セリウスさまの方を手伝いに行かれますか?」

 お茶の後の予定を先に言ってみたら、にっこーり笑って。

「遠慮なく行ってくる」

 軽やかに去っていった。

「猛獣使いのような手際ですね」
 クスクスと笑うマデリーさまは私が話したいことに気がついていそう。

「人払いしますか?」
「ここに居る者は大丈夫です」

 侍女さんがお茶とお菓子を用意して待機してくれる。
 ニーナもそこ隣に立った。

「ニーナさま、出来れば式典や宴にはサーキス夫人として参加していただきたいのですが」
 マデリーさまがニーナに声を掛ける。

「ご要望とあれば」

 でもそれ以外では侍女でいるというお堅いニーナなのであった。

「マデリーさま、私は貴族的な婉曲な会話は出来ません」
「私もです」
 知ってる。知ってるけど、一応の前振り。
「お腹の子のご報告はお済みですか?」
「まだです。レオルカにも言っておりませんが、デリアさまにはバレました」
 年の功!!
「ナギ国の歓待が終わるまでは言わないと言うことですか?」
「言えば行動を制限されると思うのです」
 そりゃ、大事にして欲しいからね。
「安定期前と言うことですか?」
「安定期?」
 ぬー。産婆さんの知識がいかほどかわからない。

「本で読んだ知識なのですが、四ヶ月以上になるまでは無理は禁物と書いてありました」
「皆腹が膨れるまで動き回ってると思いますが」
 丈夫だな!?

「産婆さんに色々聞きたく存じますが、私は無理をさせたくないので最低限のこと以外は、うちのお義母さまとお祖母様、レオルカさま、もしくはマデリーさまのお母上にご助力願えたらと思います」

 万が一があって後悔するのは嫌だ。

「仕事など出来るものがやればいいのです。マデリーさまの今一番のお仕事はそのお腹の子を守ることです」

 面倒な役人に振り回されるとか、ストレスすぎる。

「ナギ国の歓待は私とお義母さまで、王都の面倒な者はレオルカさまとセリウスさまとセバスチャンが引き受けますから」

 勝手に決めちゃうけど、まだ報告してないなら、ここ一月、二月の月の障りのことで分かったあたりのはず。
 不安定な時期に不慣れな仕事が入るなんてってやつだよ。

「報告を先延ばしにしたいのでしたら、せめてお義母さまにだけ応援を頼みましょう?」

 困った顔をされちゃってるけど、引けないよぅ。



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