ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

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二章

477話

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 大きめな机にところ狭しとお皿が乗った。
 
 本当は茹でカニ一杯とか並べたいところだけど、カニ味なスパイダーはデカいのでぶつ切りで、焼いたのと茹でたのを並べた。
 お鍋には薄切りのお肉数種類と旬なお野菜。
 ずっと一定した気温なグレーデンに旬とかないけど。

 鯖もどきの焼いたやつとサーペントの卵巻きとか、老舗旅館のコース風に仕上げたつもりが、おばんざい屋さんで全部頼んだみたいな感じだ。

「すごいな」

 ジュリアスさまが嬉しそうなので見栄えは気にしない。
「精霊と神の恵みに感謝して」
 最初に食前酒。
 さっぱりした梅風味のワインにした。薄味。

「「乾杯」」

 ふんわり甘い香りだけど料理の邪魔をしない感じ。

「お好きなおかずからどうぞ」

 順番とか何もなく並べちゃったし。

「リーシャが俺のためにいろいろ考えてくれたのが嬉しいな」
 
 カブと野菜の煮物から手をつける。
 口角を上げつつ、次のお皿を取っては褒めてくれる。

「フリュアを見つけた時は何をそんなにと思ったが、今では豆から作ったのに慣れて他の味では物足りない」
 煮付けの醤油がたまらなく美味しいとバクバク食べる。

 カニに合わせた味ぽんもどきには少しゾワっとしたみたい。酸っぱい系はびっくりするね。

 イェンゲの蒸したのもフライにしたのも嬉しそうに食べてくれる。
「これはクラウスが羨ましがるな」
 好きだもんね。
 でもフライは良く出てるし。
「ルルゥたちが作るのと少し違う?」
「あー、最初にお酒と塩胡椒をしてるくらいですよ」
 どうだろう?料理酒に使ってるお酒のせいかな。

 途中でジュリアスさまに日本酒の熱燗を出した。魚に合うって嬉しそう。
 私は最後に飲む一杯に賭ける。

 タケノコ料理も気に入ってくれるし、煮豆も楽しそうに食べてくれる。
 お漬物は一瞬首を傾げてから、ポリポリし始めた。

「苦手?」
「いや、茹で野菜かと思ったらしょっぱいからびっくりした」

 説明したけど漬物が伝わらなかったかな。

 ご飯は混ぜご飯にした。

 たくさんあった料理はどんどん消えて、足りない用のお肉料理も食べちゃった。

 デザートはゼリーと果物。
 ジュリアスさまは甘いものをたくさん食べないからさっぱりめ。

 最後にブランデーを一緒に一杯ずつ。
 待ちに待った一杯はしみるぅ~。

「いつもは賑やかすぎる食事だが、こうして二人で少しずつゆっくり食べるのも良いものだ」

 私を片膝に乗せてご満悦だ。良かった。

 机の上のお皿を重ねて〈洗浄〉して。
「このお宿用の食器にするので置いてきます」
「俺も行く」

 一旦アイテムボックスに入れている厨房に行くと、何やら調理中のルルゥがいた。

「あら、おかわりがいるぅ?」
「いや、食器をお気に」
「もぅー、呼んでちょうだい。私たち仕事できてるのよぉ~」

 アイテムボックスから食器を出して、棚に収納してもらう。

「何作ってるの?」
「んー、煮付けとか味がリーシャちゃんと違ってるからお出汁からかしらって思ってぇ」
 探究心の塊だった。

「醤油とお砂糖とお酒と薬草と昆布と鰹節だよ?」
 みりんがないから砂糖を少し多めで生姜の代わりに擬きな薬草の根を使ってる。
「そうよねぇ」
「ルルゥが作ってくれるのも美味しいし、そんなに変わらないよ」
「変わるわよぉ~」

 ルルゥが作ってるのを味見したけど、美味しいのに何が気に入らないのか。

「完全に模倣しなくてもルルゥの味でいいと思うんだけど、料理人の個性が出るものでしょ」
「私はリーシャちゃんの方が好みだったんだものぉ」
 そこまで言われるほど料理上手じゃないのに~。

「じゃぁ今度また一緒に作ろう?」
「やったわぁ!目で盗むわよぉ~」

 ジュリアスさまは苦笑してる。

「今日はもうほどほどにね。お義母さまたちが泊まる時は忙しくなるからちゃんとお風呂楽しんでね」

 今日はもう相手しないよ。

 ジュリアスさまの手を引っ張って、
「もう一回お風呂行きましょう?」
とお誘い。

 食事がゆっくりだったので、すでに外は暗い。

「夜空を眺めてのお風呂も楽しいですよ」

 お昼と同じ露天風呂でも夜だと風情が違うよ。
 ほんの少しだけ気温が下がってるし。

 服を脱いですぐジュリアスさまが抱っこしてくれて、一緒にかけ湯して湯に浸かる。

 抱っこされたまま、後ろからジュリアスさまがフゥッとため息。

「池で見る空とは少し違って見えるな」

 池は、水面まで星空に見えるから、空間そのものが違う気がしちゃうもん。

「野営でいくらでも夜空なんて見てるが、ゆっくりは出来ないからな」
「池でも本当はゆっくりのんびりしちゃダメですよね」
 一応危険地帯だから。アズライトが自分の縄張りっていうから、つい、安心?しちゃうけど。

「そうだな。普段はあまり警戒してないが、森や境界では気をつけている」
 強者の言い分だぁ。魔獣がこんにちはってくる場所で警戒しないのは強いからだってば。

 しばらく二人でぼんやり湯に浸かってた。

 こうしてると虫の声が聞こえてそうなのに虫の声はしないな。

 もし虫が出たとしたら、グレーデンの虫だと巨大っぽいから出てほしくもないか。

 コオロギとか鈴虫のデカいのでたら泣く。


「そろそろあがろう」
 
 夜用の浴衣は、綿生地の無地にした。
 ジュリアスさまには甚平を出したんだけど、まだ短パンのしかないので微妙な顔をされた。

「私しか見ないので着ても大丈夫ですよ?」

 少しだけ逡巡して着てくれた。

 スネ毛が濃くないので全然大丈夫なのに何故恥ずかしいんだろう。

 上を私がリボン結びしてから整えて、全身を見るとカッコいい~しか出ないよ。
 赤地に黒い縦線を数本入れた。
 竜や虎を依頼したかったけど我慢した。
 ヤンキー柄入れたいよ~。

「寝巻きだと思えば悪くない」

 甚平でお祭り行ったり、陶器作ったりしてる人もいるんですけどねー。

 屋内に戻って、続きの部屋にベッドがあるので寝床を整える必要がない。

 低めの木製ベッドにマットレスは置いた。
 普段ふかふかベッドで固くしたら腰痛めそう。

「変わったデザインだな」
「ナギの家具と聞いてますが、彫刻が独特ですね」

 私的には馴染みがある方だけどね。


 久しぶりにジャスパーのいない二人だけで眠る夜。

 何かあるわけでもなく、ガッツリ抱き込まれて寝た。





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