487 / 764
二章
476話
しおりを挟む夕食までの間は、縁側で寛いだり、お庭をお散歩した。
完全な和風は無理だったけど、わりと落ち着く静寂を楽しめる感じ・・・。
反対側の庭で過ごしているルークたちが少し賑やか。
まぁ、良いかな。
私たちがゆったりしてる間は、側仕えのお仕事も休憩でいいし、せっかくなので楽しんで欲しい。
「ジュリアスさまは、あっちに混ざりたいですか?」
「いや、毎日一緒にいるんだから、お互い休みを楽しんだ方がいい」
ジャスパーもいないからなんとなく寂しい気もする。もふもふって常にいて欲しい。
「お風呂に入ってから着替えましょうか?」
「ユ・カーターか?」
「はい」
露天風呂のある方に着替えを用意して向かう。
樹木と竹垣で目隠しなので心許ない気もするけど、魔物避けは厳重にしてあるから安心。
着替え用の囲いの中で、衣服を脱いで、お互いマッパ。
湯着もあるけど、濡れて張り付くのやだし、お世話されることに慣れたのでマッパも平気。ジュリアスさまも私の裸には慣れただろうしね。私はいつでも筋肉に釘付けだけど。
ジュリアスさまの手を引いて、掛け湯をしてから湯気立ち上る温泉に入湯!!
くぁー!
誰かが柚子みたいなのを入れてくれてる。
ドッジボールくらいのがボヨンと五個浮いてるのが面白い。
なんか勿体無いのは日本人だからかしら?
「景色を楽しみながらというのは贅沢だな」
使用人さんたち御用達の温泉は、岩場に大雑把な囲いを作った感じなので実用的。
逆にそのダイナミックさが好きだけどね。
ここは、竹垣と低木とまだ少しだけど地植えの花を楽しめる。
後、空だね。
あっちの世界なら盗撮され放題だよ。
ここだと魔獣に喰われますって思われてるから他所の人は来ないね。
温泉は少し熱めの単純泉。
炭酸泉とかも出たらいいねぇ。
まだ陽が落ちてないから風が冷たいとかもないので、風情は足りないかな?
「ジュリアスさま、お酒は飲みますか?」
「ん?今か?」
「はい」
日本酒もどきの冷酒をアイテムボックスから出す。
熱燗の方がいいかもだけど、グレーデンは熱いので温泉浸かって熱燗はねぇ。
私が普通に冷酒の方が好きってだけ。
「ふふ、楽しそうだけどいっぱいだけだ。リーシャは茹るだろう?」
「えー、そうでもないと思います」
「ははは」
お猪口サイズで一杯のカウントされちゃったぞ。食事時のカウントに入れないでね?
小さく乾杯してクイっと一口。
「ん、うまい」
「さっぱり形でしたね」
ジュリアスさまは残りを全部飲んじゃう。
何気に厳しい。
「夕食の時に二杯な?」
「やったー!」
抱きついて甘えちゃう。
一回湯から上がってハーブ石鹸で身体を洗ってからまた浸かる。
「スパも良いものだったがこうしてゆっくり時間が流れるのも良いものだ」
お仕事いっぱいで、ルークとセバスチャンに見張られてる(言葉が悪い)から、安らげないよね。
「頻繁には無理でもこうしてゆっくりしたお休みをまた一緒に過ごしたいです」
「ああ、そうだな。俺もリーシャとゆっくりしたい」
開放感いっぱいの露天風呂だとジュリアスさまがデレるのね。
お風呂から上がって、身体を乾かしたら、浴衣の出番。
ジュリアスさまの浴衣は、黒地に濃赤の混じったしじま織風のになった。
かっこいい。身体が大きいから迫力がある。
私は、桃色に赤い花と水色の花柄。
「ユ・カーターが似合ってるな。可愛い」
髪は適当に一つ三つ編みを丸めてアップした。
着付けは適当だけど、なんとか様になってる。
「足が落ち着かないな」
下着はもっこふんどしみたいなのでスースーかも。
私も似たようなものだけど。
下駄を忘れてたので、草履みたいなので我慢。
お部屋に戻って冷たい飲み物をだす。
アク○リアスもどき。水分を補給しておかないと。
竹枕を置いて、ジュリアスさまに寝転がってもらう。
「食事ができるまで寝ててください」
「リーシャは?」
「用意した物を並べて仕上げをしてきます」
「一緒にする」
ひとりぼっちが嫌らしい。
厨房に向かうとルルゥがお肉の準備をしてた。
「あらぁ、ジュリアスさままで」
「たまにはな。休暇なのにリーシャだけ働くのはダメだ」
「まぁ!良い旦那ねぇ」
「・・・ルークたちは?」
「順番にお風呂に入ってるわぁ」
従者用にも屋内と露天風呂がある。けどみんな露天風呂に入りたいんだって。
私はとりあえず用意してきたおかずをドーンと出して、小鉢や椀、大皿に少しずつと指示を出して、手伝ってもらう。
ちょっとしたら、ルークもニーナもアランとジェイクも入ってきて手伝ってくれた。
「少しずつ、食べやすく盛る」
「お野菜の色合いとか見栄え良く」
色々と料理名と使用した食材の説明すると、ルルゥが舌と目で確認。
次回からのお義父さまたちの料理のためにインプットしてる。
ちゃんとレシピも渡すけど、味と盛り付けはしっかり覚えるって。
ほとんど普段の応用で作れるってば。
汁物と茶碗蒸しは、最後の仕上げで薬味や三つ葉もどきを乗せる。
時間経過なしのアイテムボックスだけど、なんとなくね。
「お酒は飲む?」
「いやぁ、一応勤務中ですしー・・・」
「一杯ずついただきます」
一杯なら酔わないからって。酔拳使えそうなチェイスさんとかに飲ませたい気もするぞ。
「お鍋に残ったおかずは好きなだけ食べて良いよ」
お酒が楽しめない旅館は悲しすぎるので食事を楽しんでくれたまえ。
配膳だけ、ルルゥとルークにしてもらって。
「明日の朝食はゴハーンと魚の用意だけお願いね」
「了解よぉ~☆」
さて、旅館っぽいお食事を楽しみます。
743
お気に入りに追加
1,875
あなたにおすすめの小説
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~
水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート!
***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。

聖女転生? だが断る
日村透
恋愛
生まれ変わったら、勝ち逃げ確定の悪役聖女になっていた―――
形ばかりと思っていた聖女召喚の儀式で、本当に異世界の少女が訪れてしまった。
それがきっかけで聖女セレスティーヌは思い出す。
この世界はどうも、前世の母親が書いた恋愛小説の世界ではないか。
しかも自分は、本物の聖女をいじめて陥れる悪役聖女に転生してしまったらしい。
若くして生涯を終えるものの、断罪されることなく悠々自適に暮らし、苦しみのない最期を迎えるのだが……
本当にそうだろうか?
「怪しいですわね。話がうますぎですわ」
何やらあの召喚聖女も怪しい臭いがプンプンする。
セレスティーヌは逃亡を決意した。
ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい
珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。
本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。
…………私も消えることができるかな。
私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。
私は、邪魔な子だから。
私は、いらない子だから。
だからきっと、誰も悲しまない。
どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。
そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。
異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。
☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。
彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる