ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

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二章

475話

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 お宿は旅行って言うには、かなり近い。
 
 使用人棟と言っても使用人の家族が住む居住区は安全のために少しは離れている。
 ほぼ住み込みな独身や家族みんなでお勤めだと敷地内の従者棟、ルルゥたちはそっちにいる。

 使用人棟の奥のお宿まで、馬車二台と騎馬で移動だ。

 お昼前に出発するときは、お見送りしてくれた。
 田舎で言うほんの隣みたいな距離なのでいつもの朝のお見送り程度と思いきや、遠出のように大騒ぎ。

「やっぱり一緒に行きたいわぁ!でも我慢よぉ~」
「ワシもじゃが我慢だのぅ」
「若い者を邪魔するではないさね」

 お祖母様がベシッと背中を叩いて送り出してくれた。

「父上も母上もいつまで経っても楽しいことには目がない」
「温泉とお料理どっちが気になってらっしゃるのかしら」
「両方だな」

 馬車の中で、私はジュリアスさまのお膝に乗ってる。広い馬車だけど、片方のソファにジャスパーとアズライトがベローンと寝てるからね。
 ディディエ、ポムとティムは騎馬での移動を楽しんでいる。
 結局、私にはいつものニーナ、アランさんジェイクで、ジュリアスさまには、ルーク、ルルゥ、アモンさん、チェイスさんって、いつもと同じ顔ぶれ。
 セバスチャンはお仕事。

 周囲の警戒は、使用人棟の警備が増員で当たってくれるらしい。

 のんびり~と言う感じだけど、すぐ着いた。

 外からの見た目は和風の小ぶりな旅館っぽいかな?
 
 馬車寄せで降りて、馬と馬車は宿の使用人さんがお世話してくれるそう。

 早速、お部屋に通してもらって一息。

 主賓室は私とジュリアスさまが使って、ルルゥたちは、従者用の部屋に割り振り。
 アズライトとジャスパーたちが、
『旅先で夫婦の邪魔はできぬでの』
と、ルルゥたちと過ごすと言う。
 旅先ではないけど、〈二人きり〉を楽しみたかったのでお言葉に甘えておく。

 前回来た時とは違って、家具も揃っている。やっぱりバリとか南国風な家具なので和風が遠のいてる。それはそれで良い感じ。
 
 今日は、私が他所行きなふんわりワンピースで、ジュリアスさまはラフなパンツにジャケット。とりあえずジャケットは脱いでもらって寛いで貰う。

 主賓室用に横の部屋に簡易キッチンがあるので、お茶を用意する。

「全部リーシャがするのか?」
「いえ、簡単なことだけ」
「そうか」
 
 低いテーブルに「椅子は・・・」って困る姿がちょっと可愛い。

 適当に座ってって言われても困るか。

 座布団にこうって、胡座を勧めた。
 正座の習慣はないからね。

「お茶とお菓子をどうぞ」
「リーシャは?」
「昼食の準備をします」

 お昼は、下拵えしたのを松花堂弁当風に詰めたものにした。
 お吸い物を付ければ完成という手抜き?にした。
 ルルゥたちにお昼と夕食の説明をしたいので少しだけ席を外すと伝えると手持ち無沙汰そうだったけど、了承してくれた。


「ニーナ、お部屋は大丈夫?」

 従者待機室を覗けば、みんなお茶飲んでた。
「お部屋は大丈夫です。お昼はお弁当でしたね?」
「そう」
 私はみんなの分をアイテムボックスから出して、お吸い物用の鍋と器も出す。
 和食器はないから無理だけど、お宿では、普段お屋敷で使わない無骨な焼き物と木製の碗を使うことにした。

「まぁ綺麗ねぇ」
 ルルゥがお弁当をうっとり見つめる。
「詰めてるものは普段食べてるものと大差ないよ。飾りつけとか変えただけ」

 普段が卵焼きも煮物も大皿で盛るから、お弁当にちょっとずつが新鮮なんだよ。

「夜もここで盛り付けするから、ニーナとルルゥは手伝ってね。後も量が足りないからお肉とか大盛り料理はルルゥに任せた」
「了解よぉ~」

 お弁当二つ、お吸い物を二碗、運ぶだけなのにニーナが運ぶってお盆を取られた。

「食事の時間以外はみんなご自由にね」
 護衛のお仕事もあるけど、交代でお風呂入ったりね。

「戻りました」
 襖を開けて、お部屋に入るとジュリアスさまは、スッと立ち上がってニーナからお盆を取り上げてくれた。

「ニーナも寛いでくれ」

 そのままお盆を机に乗せちゃったけど、親切なので気にしないで、お弁当とお椀を並べる。

「美味しそうだ」
 
 いつもの癖で膝抱っこをしかけて机の低さに止まる。

「今日はお隣に座って食べます」
「そうか」

 ほんのり残念そうだけど、たまには隣り合うのも良いでしょう?

「これはどこから手をつければ良いのか」
「お好きなように」

 箸じゃないのでちょっと愉快なんだけど、仕方ない。

「バブーが柔らかいな」
 タケノコの煮物は、お出汁が染みてて美味しい。
 タコもどきの酢物やサーペントの白焼、芋を潰して蒸した餡掛けとか、それっぽくしたものばかりだけど、私頑張った。

「少しずつだと食べてしまうのが勿体無い気がする」
「そうですか?」
「美味しいのにもうない」
 物足りない感じかしら?

「おかわり入りますか?」
「いや、じっくり味わうのも良い」

 お吸い物もゆっくり飲んで、
「美味しかった」
と言ってくれた。
 色々試して作った甲斐があった。


 食後のお茶を飲むジュリアスさまは、庭の鹿威しの音を聞きながら息を吐いた。





 
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