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二章

452話

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 木の周りになんとなく人型っぽい輪郭が浮かんでる。

 四体ともう一体ちょっと存在感の違う気配。

 圧倒的な存在感の前に怖い者なしな、グレーデンの騎士たちもちょっと身震いしてる。

『ここに用意される御饌は素晴らしいのでな』
『我は其方が作っている酒が気に入っておる』
『我が愛しき仔らが世話になっておるからのう』

 どうやら、ぼんやりな人型は四大精霊王でポムが土の精霊王、ティムが風の精霊王に飛びついている。
 ディディエとアズライトは加護を受けてるわけじゃないからそこまで親しげに振るままえないらしく近くで平伏してる。

『ジャスパー、良き名を受けたな。幸せにやっておるか?』
『はい!!体を得て動くこともなんでも食べられるのも嬉しいんだぞ!』
 他の精霊王に比べて輪郭がはっきりしているのは火の精霊王。ここが火の加護のある土地だからなのかな。

 そこら中にいるふわふわした子たちのご機嫌も良いみたいで、楽しそう。

「あの・・・王都の大神殿におられるのでは?」
『ああ、呼び出されて一通りの祝詞と御饌をいただいたがな、話が通らぬし、どうせほとんど見えておらぬようだからの、代理を置いて逃げてきた』
『なぁに、ちゃんとそれなりの恩恵は授けてきたわ』
『うむ、今代の王はちゃんと精霊を敬っておるしな』

 あ、投げ出したわけでも見捨てられたわけでもないみたい。良かった。
 大神殿、ダメダメじゃんー!!

『今の司祭たちなど、レイドラ神が降臨したら権能の前に魂が潰れそうな脆弱さよな。さすがに長居はできぬよ』
『あれでもなけなしの信仰心で勤めておるからな。死なれては困る』
 うーん。無いよりマシみたいな感じだね。

 って今まさに私みたいなか弱い魂が砕け散っちゃいそうなくらい尊き方々がいらっしゃってる。

『面白い冗談を言うのじゃな』
 心読まれたぁ!
『其方ら皆強い魂を持っておるでは無いか』

 ん?ジュリアスさまたちはさすがにちょっと汗くらいだけど、アランとジェイクとニーナは脂汗だよ。

『さすがに神気はキツイか?』
 火の精霊王が三人の周りだけ結界のようなのを張ってくれた。

『今日は精霊樹を育て守っておる其方らに礼と今後も頼むと伝えにきた』

【汝らがその愛しき仔らと大地や魔素を豊かにしてくれたことで、我は幾年ぶりかにほんのわずかではあるが顕現出来た。我や精霊王が消えれば地上は荒れ、いずれ滅ぶ。神代の頃のようには望まぬが、こうしてわずかなりとも人の世に触れられることを、我は望む】

 魔素がそれなりに満ちて、精霊が増えて暮らしよくしていけば自ずと神の恩寵が得られるということだそう。

 レイドラ神はほぼ人の輪郭な光にしか見えなかったけど、神々しかった。

【我はもう行く。汝らのこの一年が実りのあるものになるように・・・】

 圧倒的な気配はスゥッと消えた。

『お前たちの耐性はすごいな。国王でさえ、膝を落としたぞ』
 楽しげに言うのは風の精霊王。大神殿で神が一瞬だけ降臨した時に王様と王族、一部の者が崩れ落ちたそう。
 逆に崩れ落ちなかった人たちは神気や精霊の気配を感じ取れない人たち。
 神殿の者がほとんど平気で笑ったそう。
 笑い事じゃないよう!!

『あれだけ魔素が少ない場に暮らしておればそうなろうて』
 土の精霊王がポムの腹を吸いながら言う。めっちゃフレンドリーなのね!

『魔素が広がれば、魔獣も増える。対抗できぬ者の住まいは今のままで仕方ないであろう』

 信仰が増えれば、神の守りの力も強くなるそうなので、神の存在をもっと認知させたいところ。
 
「ポムのくれた種で荒野に精霊樹の子供が植えられ少しずつだが大地が息を吹き返していると報告を受けております」
 ジュリアスさまが土の精霊王に伝えると『そうだな』と返ってきた。

 ポムとの偶然の出会いからティムやアズライトと縁があって、彼らの好きにさせてたら何故か精霊に貢献していたって感じなんだけど、これお礼を言われるのポムたちじゃない??

 人(ポム)のふんどしなので、とっても居心地が悪いね。
 ジュリアスさまもルークもどうしたものかって感じだ。

『其方らがこの仔らに良くしてくれたからこその結果じゃ。畏まらずとも良い』

 精霊王たちは輪郭ぼんやりだけど、笑っていたり優しげだったりが伝わってくる。

『ほう、随分な気配を感じてきてみれば、久しぶりだな、ジジイども』

 唐突に精霊樹の裏から声がして、存在感の強さに緊張が解けない状況で、何かまたすごい圧がかかった。

 声の方を見れば、立派な体格のライオン?タテガミがわっさわさな姿があった。

『久しいの』
『新たな守護獣が生まれたのなら良い加減俺は
解放して欲しいものだ』
 ジャスパーの方を見てライオンが言う。
『これは守護獣と言う存在では無い。この地を守るのはライデンであるぞ』
 ライオンはライデンと言う名でホーン領にいたフェンリルと同じような存在らしい。
 グレーデンで一番危険な魔の森に棲む守護獣はライデンだったそう。

『なんだ。自由になったら、世界中を巡ろうと思ったのに』
『そなたの図体であちこち巡ったら大騒ぎであるぞ』
 ライデンは何か人にとって危険な夢を持っていたらしい。
「ライデン殿、私はこのグレーデンの領主のジュリアスと申す。貴方に会えて嬉しい。長きの守護に感謝申し上げる」

 グレーデンを魔の森の脅威から人知れず守ってくれているライデンは存在を知っていても今まで歴代の当主は会うことが叶わなかった。
 グレーデンがずっと危険だったとはいえ、全滅しないでいられたのはライデンが魔獣を間引いて、死骸を処理していたからだそう。
『我は与えられた役割をこなしているに過ぎぬ。気にせずとも良いぞ』

 かっこいいライオンとジュリアスさま。良きスチルだ。横でジャスパーが拗ねてるけど。

『我は基本的に森からは出ぬ。これからも知らぬふりでいるが良い』
「そうですか。承知しました」
 とても残念そうなジュリアスさま。ジャスパーの姿をグリフォンで希望していたから、ライデンの姿が好みなんだろうなぁ。






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