427 / 764
二章
416話
しおりを挟む
別邸は来客用に少し危険区域から離れて使用人の家族とかが居住する区域にある。
もちろんガッチガチに魔物避けは施されているし、来客中は警備を増やしてる。
なんと言うか、私の離れの最初の頃のような洋館なのでほんのり切ない。
もはやガチキャンパーの聖地くらいない有様だもの。
「フローラさま、ルシェリーちゃん、どうぞぉ」
「お迎えありがとう存じますわ」
サーキス夫人とお姉様は馬車に同乗して行く。
ジュリアスさまやお義父さまがいない分、五人で乗っても大丈夫。
まぁドレスが嵩張るけど。
他にサーキス家からの侍女さんたちは別の馬車に乗ってもらう。
「ルークやニーナから聞いてはいましたけど、本当に快適ですのね」
「この椅子はどうなってらっしゃるの?」
ぐふふ。スプリングの入った椅子は良いよね。
「リーシャちゃんが遠出でも疲れないようにしてくれて野営になっても馬車の中で寝られるようにしてくれたのよぉ~」
「椅子が変形するのにはびっくりしたさね」
お義母さまとお祖母様は背にしている面を「こうしてこう」とか説明するけど乗車中は無理ですって。
「野営なさるの!?」
あ、一般的な貴族は意地でも宿まで辿り着けるよう旅程に余裕を持って動くんだった。
「うちはせっかちが多くてぇ」
結局、馬車の購入を希望されてしまった。
サーキス家に一台とお姉様のアルヴィナ家用二台だって。
おっきいお買い物をポーンと決めちゃう。
「領地への視察を増やせそうだから良いお買い物よねぇ」
日程を減らせるし楽になるから買って損はないそうだ。
騎士団棟近くなると騎士団から護衛として十人くらい派遣されてきた。
「さすがにこのあたりは何もないのですね」
「そうよぉ、増やすって言っても訓練場が広くなるだけよぉ」
温泉スパができましたよー!
騎士団棟を抜けて真新しい建物に着く。
「ようこそ」
騎士さんが馬車の扉を開けてくれて降りるのを補助してくれる。
「まぁまぁ!ルークと比べると逞しいわ!やっぱりグレーデンでは食が違うからかしら?」
「お母さま、ルークは学園に入るまでただのおぼっちゃまですわ。基礎が違いましてよ」
さりげなく息子をディスってる?
「あんな細い子がここで生きていけるわけがないと思っていましたけどジュリアスさまの横で鮮血の悪魔とまで言われるなんてねぇ」
初めて聞いた二つ名でた。
前は氷原の貴公子だった気がする。
「いつかルドガーさまくらい育つかしら!そこまで行ったら面白いですわ」
ルシェリーお姉様は筋肉好きとかじゃなく、ただ弟の変化を楽しみたいらしい。
屋内に入ると工事中の場所がそのままなので逆に珍しいと喜んでくれる。
お義母さまがお二人を更衣室に案内してくれるそうなので私は、梅の枝を休憩場に飾り、よもぎもどき蒸しのセットをサウナ予定の部屋に置く。
接待のために来てくれたエステ隊と侍女さんメイドさんに使い方の説明をして準備をお願いする。
「下半身を温めるのは良さそうですねぇ」
侍女さんも興味津々なので後日お試しできるようにしよう。
私も更衣室に入るとお義母さまたちが薄手のガウン姿になっていた。
私もサラとメルに脱がしてもらって髪をまとめて用意する。
お世話かかりの侍女さんたちは薄手のワンピース姿でついてくる。
「じゃぁ、何からにしましょうねぇ」
ガウンを脱ぎ捨て、ウキウキしたお義母さまを先導に温泉ルームに入る。
「まぁ!こんなに広々としたお風呂は初めてよ」
まずは掛け湯をして軽く洗ってから、お義母さまの希望でジェット風呂に入る。
夫人に浸かり方を説明してまずは背中側に気流を当てる。
「あぁぁ・・・」
「はぁ・・・」
なんて言うか凝っていらっしゃったのねってくらいうっとりしたお顔になった。
お義母さまがお腹側に当てるために反転すると真似をして。
「はわわぁ」
「ああ~」
気流に押されて体が少し流されたよ。
「これは気持ちが良いです」
「妊娠で緩んでしまったお肌に刺激があって引き締まるような気がするわ」
お姉様の切実なお声が。妊娠出産後のお腹はお手入れ大変と聞いた気がする。
百目ポーションでどうにかなる気が?
つぎは電気風呂に挑戦。
電気発生地点から遠い場所に足を入れてもらうとじんわりとピリピリ。
「これが電気?」
「よくわからないけどピリッとしますわ」
お祖母様がグングン装置に近づくのを見てみんなで少しずつ近寄る。
「あっ」
「きゃっ」
ちょっと刺激が強くなったあたりでビクンっと湯船に座り込んだ。全身分ピリピリだよ。
なんか面白く思ったらしい夫人たちはお祖母様の近くに寄ろうと進んだ。
「はぁ?ああ~」
「ギャー」
グワシっと腰を掴むかのような刺激にびっくりして湯船から慌てて出ちゃった。
「あはは、骨に響く感じだろう」
お祖母様はうんともすんともならず普通に浸かってるのをお姉様がゾッとした顔で見る。
夫人は恐る恐るもう一度チャレンジとばかりに弱いところに足を入れる。
「腰痛とか痛いところがなければ無理に入らない方が良いですよ」
「あら!私は腰が痛いのですわ」
夫人がやる気を出してしまった。
「他にも薬湯とかありますから」
岩盤浴とよもぎ蒸しも腰の良いはず。
薬湯に夫人を案内すると湯船から香るハーブの香りに夫人が笑顔になった。
もちろんガッチガチに魔物避けは施されているし、来客中は警備を増やしてる。
なんと言うか、私の離れの最初の頃のような洋館なのでほんのり切ない。
もはやガチキャンパーの聖地くらいない有様だもの。
「フローラさま、ルシェリーちゃん、どうぞぉ」
「お迎えありがとう存じますわ」
サーキス夫人とお姉様は馬車に同乗して行く。
ジュリアスさまやお義父さまがいない分、五人で乗っても大丈夫。
まぁドレスが嵩張るけど。
他にサーキス家からの侍女さんたちは別の馬車に乗ってもらう。
「ルークやニーナから聞いてはいましたけど、本当に快適ですのね」
「この椅子はどうなってらっしゃるの?」
ぐふふ。スプリングの入った椅子は良いよね。
「リーシャちゃんが遠出でも疲れないようにしてくれて野営になっても馬車の中で寝られるようにしてくれたのよぉ~」
「椅子が変形するのにはびっくりしたさね」
お義母さまとお祖母様は背にしている面を「こうしてこう」とか説明するけど乗車中は無理ですって。
「野営なさるの!?」
あ、一般的な貴族は意地でも宿まで辿り着けるよう旅程に余裕を持って動くんだった。
「うちはせっかちが多くてぇ」
結局、馬車の購入を希望されてしまった。
サーキス家に一台とお姉様のアルヴィナ家用二台だって。
おっきいお買い物をポーンと決めちゃう。
「領地への視察を増やせそうだから良いお買い物よねぇ」
日程を減らせるし楽になるから買って損はないそうだ。
騎士団棟近くなると騎士団から護衛として十人くらい派遣されてきた。
「さすがにこのあたりは何もないのですね」
「そうよぉ、増やすって言っても訓練場が広くなるだけよぉ」
温泉スパができましたよー!
騎士団棟を抜けて真新しい建物に着く。
「ようこそ」
騎士さんが馬車の扉を開けてくれて降りるのを補助してくれる。
「まぁまぁ!ルークと比べると逞しいわ!やっぱりグレーデンでは食が違うからかしら?」
「お母さま、ルークは学園に入るまでただのおぼっちゃまですわ。基礎が違いましてよ」
さりげなく息子をディスってる?
「あんな細い子がここで生きていけるわけがないと思っていましたけどジュリアスさまの横で鮮血の悪魔とまで言われるなんてねぇ」
初めて聞いた二つ名でた。
前は氷原の貴公子だった気がする。
「いつかルドガーさまくらい育つかしら!そこまで行ったら面白いですわ」
ルシェリーお姉様は筋肉好きとかじゃなく、ただ弟の変化を楽しみたいらしい。
屋内に入ると工事中の場所がそのままなので逆に珍しいと喜んでくれる。
お義母さまがお二人を更衣室に案内してくれるそうなので私は、梅の枝を休憩場に飾り、よもぎもどき蒸しのセットをサウナ予定の部屋に置く。
接待のために来てくれたエステ隊と侍女さんメイドさんに使い方の説明をして準備をお願いする。
「下半身を温めるのは良さそうですねぇ」
侍女さんも興味津々なので後日お試しできるようにしよう。
私も更衣室に入るとお義母さまたちが薄手のガウン姿になっていた。
私もサラとメルに脱がしてもらって髪をまとめて用意する。
お世話かかりの侍女さんたちは薄手のワンピース姿でついてくる。
「じゃぁ、何からにしましょうねぇ」
ガウンを脱ぎ捨て、ウキウキしたお義母さまを先導に温泉ルームに入る。
「まぁ!こんなに広々としたお風呂は初めてよ」
まずは掛け湯をして軽く洗ってから、お義母さまの希望でジェット風呂に入る。
夫人に浸かり方を説明してまずは背中側に気流を当てる。
「あぁぁ・・・」
「はぁ・・・」
なんて言うか凝っていらっしゃったのねってくらいうっとりしたお顔になった。
お義母さまがお腹側に当てるために反転すると真似をして。
「はわわぁ」
「ああ~」
気流に押されて体が少し流されたよ。
「これは気持ちが良いです」
「妊娠で緩んでしまったお肌に刺激があって引き締まるような気がするわ」
お姉様の切実なお声が。妊娠出産後のお腹はお手入れ大変と聞いた気がする。
百目ポーションでどうにかなる気が?
つぎは電気風呂に挑戦。
電気発生地点から遠い場所に足を入れてもらうとじんわりとピリピリ。
「これが電気?」
「よくわからないけどピリッとしますわ」
お祖母様がグングン装置に近づくのを見てみんなで少しずつ近寄る。
「あっ」
「きゃっ」
ちょっと刺激が強くなったあたりでビクンっと湯船に座り込んだ。全身分ピリピリだよ。
なんか面白く思ったらしい夫人たちはお祖母様の近くに寄ろうと進んだ。
「はぁ?ああ~」
「ギャー」
グワシっと腰を掴むかのような刺激にびっくりして湯船から慌てて出ちゃった。
「あはは、骨に響く感じだろう」
お祖母様はうんともすんともならず普通に浸かってるのをお姉様がゾッとした顔で見る。
夫人は恐る恐るもう一度チャレンジとばかりに弱いところに足を入れる。
「腰痛とか痛いところがなければ無理に入らない方が良いですよ」
「あら!私は腰が痛いのですわ」
夫人がやる気を出してしまった。
「他にも薬湯とかありますから」
岩盤浴とよもぎ蒸しも腰の良いはず。
薬湯に夫人を案内すると湯船から香るハーブの香りに夫人が笑顔になった。
415
お気に入りに追加
1,875
あなたにおすすめの小説
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~
水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート!
***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。

聖女転生? だが断る
日村透
恋愛
生まれ変わったら、勝ち逃げ確定の悪役聖女になっていた―――
形ばかりと思っていた聖女召喚の儀式で、本当に異世界の少女が訪れてしまった。
それがきっかけで聖女セレスティーヌは思い出す。
この世界はどうも、前世の母親が書いた恋愛小説の世界ではないか。
しかも自分は、本物の聖女をいじめて陥れる悪役聖女に転生してしまったらしい。
若くして生涯を終えるものの、断罪されることなく悠々自適に暮らし、苦しみのない最期を迎えるのだが……
本当にそうだろうか?
「怪しいですわね。話がうますぎですわ」
何やらあの召喚聖女も怪しい臭いがプンプンする。
セレスティーヌは逃亡を決意した。
ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい
珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。
本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。
…………私も消えることができるかな。
私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。
私は、邪魔な子だから。
私は、いらない子だから。
だからきっと、誰も悲しまない。
どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。
そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。
異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。
☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。
彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる