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二章

405話

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 温泉用装置を作らなくちゃなので、まず騎士団用の建設状況を見ないとってことでお義父さまに連れられて建設現場に向かった。
 騎士団棟付近に来るなら俺が連れて行くとジュリアスさまが言ってくれたけど、セバスチャンが朝一番に会議が入ってると却下して引きずって行っちゃった。合掌。

 そんな旦那さまに申し訳ないけど、只今の私は、お義父さまの胸筋やっふぅー!
 私を支える腕も逞しいので幸せです。

 お出かけだからとサラとメルがめちゃくちゃ悩んでラフな格好にしてくれた。
 乗馬&施設見学なのでカーゴパンツに上がチュニックワンピ。カジュアルにしたいわけだけどどうしてもレースとかつけたがるよね!ポンチョまで渡されちゃった。
 ジャスパーはジュリアスさまのところです、ポムとティムは畑に行くって言ったのでお供は肩に乗ってるアズライトだけ。

「リーシャちゃん、外観は周りと変わり映えしないが中は好きにいじって良いぞう」

 建物はほぼ仕上がってるように見えたのに、中に入れば仕切りがあるくらいで巨大倉庫みたいな状態だった。
 ポムたちが掘ったらしき湯源の穴ボコには栓をしたり簡易で溝を掘って外に流してる。

「追加も改造も魔法でどうとでも出来るからのぅ」
 建築基準も耐震の心配もないのって良いねぇ!

 私がなんとなくて書いてた配置図で大まかにお風呂の配置を決めてあるみたい。

 土地だけは馬鹿みたいにあるから広い。二階建てにするとハッスルした時に壊しそうだから平屋建てで正解かな。

 工事用に大工さん、石工さん、細工師さんなどたくさん呼んでくれてるんだけど、現役騎士さんも引退騎士さんもちらほら。

「みんな出来るのを楽しみにしておるんじゃ」
 お義父さまがご機嫌に案内してくれる。

 私は岩風呂やタイル風呂、ヒノキ風呂とそれぞれのイメージを伝えていく。

 サウナ部屋のそばに水風呂、熱湯風呂を置きたい。
 露天風呂はもちろん外が良いんだけど、忘れてはいけない。ここは危険区域なのだ。
 万が一にもマッパで出動になったら大変なので騎士団棟用では諦めよう。
 一応魔物避けはしてあるらしいけどね。

 ジムスペースもあるし、軽食コーナーも。

 私は作らなくちゃいけない装置の数をメモした。
 決まってしまえば数日で完成出来るそうなので、私もめっちゃ頑張らないと。

「リーシャちゃん、無理せんでも設計図を出してくれれば魔導師工房に依頼出すからの」
 お義父さまが気を使ってくれるけど、ある程度自分で試作しないと設計図は人に渡せないよ。

 岩盤浴ルームには床一面に〈温熱〉〈除菌〉〈自動洗浄〉を付与した魔法陣を魔導インクで描き込んだ。魔法陣を保護する付与ももちろん使うよ。
 岩盤浴用の石はどこでも産出してるとかわからないので粉にした魔石と鉱石、建材の石と岩を使って錬金術で一気に一部屋分を錬成した。〈自然治癒〉〈滅菌〉効果を付与して。
 力持ちっぽいオジサンたちにお願いして素材をまとめて置いてもらって、いきなり魔法陣を錬成した私をお義父さまとオジサンたちは呆気にしてたけど、気にしない。
 説明が難しいのは自分でやった方が早い。

 久しぶりに魔力を一気に放出したので気分スッキリだ。

 騎士さんには怪我が多いから回復を早めるのは大事。
 あとやっぱり足が蒸れてそうだから滅菌も大事。

 お湯の方は疲労回復程度の効果はあるだろうから薬湯も使えばかなり良いはず。

 電気風呂とジェットバス用の魔道具は作業部屋でじっくり作ろう。

 お昼はセバスチャンが呼びにきてジュリアスさまとお義父さまとで食べることになった。

 騎士団のコックさんたちがお義父さまと私の様子をめっちゃ見てくる。

 テーブルの上には、炊き込みゴハーンがてんこ盛り。たけのこがゴロゴロ入ってる。お肉ももちろんてんこ盛り。
 
「美味しい~」
「騎士たちの口に合わせて濃いめだろう?」
 ルルゥたちの料理に比べて味付けが大雑把な感じだけど逆に美味しい。
 たくさんの騎士さんたちにお腹いっぱい食べてもらう意気込みを感じる。
『主~、この肉を嫁にやるのじゃ』
 ジャスパーがテーブルに上にデンとアイテムボックスから出した丸焼き肉を前足で指す。

「ああ、これはジャスパーがいきなり空に向かって火を吹いてな・・・」

 危険察知出来ないほど上空を飛んでたサンダーバードをジャスパーが焼いて落としたらしい。
 どんだけの火力!!

『そこまで上空にいたなら害意もなくただ移動していたんだろうの』
 運のない鳥さん!!
 もしアズライトクラスの竜とかだったら危ないじゃん。
『サンダー系は主の母が好きって言ってたんだぞ!嫁も好きなんだろ?』
 キュルンっと目を丸めて首を傾げる仕草!あざとい!!

「あー、ジャスパー、リーシャは舌が痺れるのはたくさんは食べれないんだ。少しだけもらってあとは母上たちに譲っても良いか?」
『このピリピリが上手いのに嫁は変わってるんだぞ!我は優しいからあげて良いんだぞ』

 しびれ鳥って料理にあったけど肉そのものがしびれるのは違う。
 パチパチビリビリはなんか怖いんだもん。

「のぅ、ジャスパー、獲物は素材をそのまま回収できてこそじゃ、プロならば丸こげはダメじゃぞぅ」
『!!!?』

 なぜか狩り方講座は始まってしまった。
 サンダーバードなら羽毛は高額だしもったいなかったね。

 少しだけ切り分けてみたお肉はやっぱりパチパチ。
 あれだ、駄菓子にパチパチするキャンディあったのに似てる。口の中が!
 淡白だけどほろほろっと解れて美味しい。
 
 ジュリアスさまは相変わらず、サンダー系は控えめ。

「何も考えずに食べた方が幸せですよ」
 後ろで控えていたセバスチャンがジュリアスさまにボソッと言った。

 お昼からは私は魔道具を作るためにお義父さまと別れて、アランの馬に乗って作業場に向かった。





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