ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

文字の大きさ
上 下
408 / 764
二章

397話

しおりを挟む
 マールベリーさま、ツゥランス侯爵家のタウンハウスはグレーデン家の質実剛健なお屋敷とタイプが真逆で都会的な瀟洒なお屋敷だ。
 おっしゃれー!
 
 門から玄関まではやっぱり馬車。
 お庭もエレガントなのだ。
 
 玄関ホールに案内されると麗しい侍従さんと侍女さんメイドさんが並んでる。
 洗練されてるぅ!

「リリィー、ようこそ!王都で会うのは幾年ぶりかしらぁ!」
「ようこそ、グレーデン家の皆さま。よくお越しくださいました」

 マールベリーさまの旦那さまのツゥランス侯爵はキラキラな金髪で端正なお顔のザ・王子様な雰囲気のオジサマだ。
 お義母さまと好みが真逆・・・あ、政略の場合もあるんだった。
 うーん、実は脱いだら細マッチョ?
 袖が緩いから筋肉はなさそうだからヒョロっこいかも?
 お義母さまとお祖母様はマールベリーさまハグ、お祖父様は侯爵と握手で。
 私は小侯爵夫妻とお子様方にカーテシーしてご挨拶。

 すでに晩餐の準備が出来てるそうで食堂に通された。
 侯爵家の兄弟の一家も揃っているそうでそれなりの人数がいる。かしこまった席じゃないのはありがたいな。

「グレーデン家の食事に比べたら物足りないかもしれないがうちの料理人もかなり研鑽を積んでくれている。ぜひ楽しんでほしい」

 グレーデンのタウンハウスとは違った都会的なフルコースは、メグミがクミちゃんとたまに行っていたフランス料理チックで目が楽しい。
 けど、圧倒的に量が足りないよね。お義母さまたち。
 だけどさすがにお付き合いに慣れてるので普通に美味しそうにいただいてる。
 ちなみに私、一人で座ってるよ。クッション多めだけど。

 お味は塩味だけを脱出して少し深みが出てきた感じ?
 コンソメスープのレシピが流通してて良かったって感じかも。
 スパイスやハーブは使われているけど、まだそこまで流通してないのかな?
 王宮ではそれなりに使われてたけど。
 
「グレーデン家がレシピを開放してくれたおかげで食べる楽しみが増えました」
「ええ、お式の時に頂いた時の衝撃には敵いませんが日々美味しくなって幸せです」
 小侯爵夫妻は私とジュリアスさまのお式に来てくれてたみたい。

「スノウリリィーが送ってくれるお菓子を料理人がどうやって作ってるんだと泣きながら味を探ってたりするのよぉ~」

 えっと研修に来てくれたらうちのコックさんたちきっと喜んで教えてくれるよ。

「しかしクラウドさまもデリアさまも無事にお戻りくださってようございましたな。これでますますグレーデンは壮健だ」
「はは、攻略して出てきてみれば二十年も時が過ぎてて、息子は引退、孫はおっさんになっておったからびっくりしましたよ」

 おっさんはジュリアスさまのことじゃないよね?シグルドさま・・・?いや三十になったくらいだよね?

「はっは!ペーペーの文官だった私が大臣になれるほどの年月ですからねぇ」
 ツゥランス侯爵は財務大臣。
「腹黒マーブルにコキ使われておった若造が国の金庫を預かるとは思わんかったねぇ」
 お祖母様は懐かしそうに言う。腹黒マーブルってあだ名?誰のことだろう。
「たまたま数字に強かっただけですよ」

 この晩餐は純粋に親戚と気安く食事するだけみたいで良かった。

「そういえば、リーシャ夫人、カイダール男爵にご紹介いただくのは可能か?」
 突然お兄様の話を振られた。
 侯爵家の声掛けなら仲介の必要もなさそうだけど、業務提携とか難しいお話かしら?
「もちろん大丈夫ですが、何かございまして?」
「いや・・・まだはっきりした情報ではないんだが緑斑病が発生している地域があってな。うちの領地に近い村だそうで腕の良い薬師のカイダール男爵に薬の情報が頂ければとお聞きしたくてな」

 なんと!それは国をあげてな問題では?
 と思えば、緑斑病は感染力は低く都会ではあまり発症報告が出てないんだそうでまだ国をあげてと言うほどではないそうだ。

 うん、深刻度がわかんないけど感染症は怖いから早期対処がいいよ。

 この世界の感染症には色の名前がついてて、黒、赤、黄、紫、緑、白、茶、灰、と言う順番で重い。
 その中で黒、赤、黄、紫とが死病で薬がないものだ。赤、赤斑病はやっと特効薬が出来たとこなわけ。

 緑斑病は薬はあるにはあるけど素材が貴重で調剤出来る薬師レベルが高いから入手困難だと思う。

 感染力は低くても中等だし変異する可能性もあるし、少しでも広がるのは良くない。

「早急に連絡を入れますわ」
「よろしく頼む」

 お父さまが生きてたらもう一つくらい特効薬が出来てたかも知れない。
 つくづく欲張ったジジイとハゲは地獄に落ちてほしい。

「そういえばリーシャちゃん、ウォレス伯爵に何をお願いするのぉ?」
 静かになっちゃった間をお義母さまの明るい声が空気を変えた。
「そうそう、樹液って何が出来るんだい?甘いのかい?」
 お祖母様、シロップ系はあるかもだけど衣料に使いたいって言ったのに。

「樹脂やゴムじゃないかと思ったんです」
「ゴム?」
「ズボンや下着の着替えに便利になるかなって」

 現物を見ないとわからないし、物が仕上がらないと説明出来ないので困っちゃうよ。

「まぁ!リーシャさまがいると色々目新しい物が見られて良いわねぇ」
「着替えが楽になるって気になりますわ」

 マールベリーさまと小侯爵夫人がワクワクキラキラしてる。絶対ゴム見つけないとダメなやつ。

 子供達は途中で下がって、お土産に出したお酒を王都で流行りだと言う砂糖菓子をアテにして一杯。

「はぁ、陛下が王妃さまに叱られてもグレーデンに逃亡するのをやめない気持ちが良くわかりました」
 侯爵さまがグラスを愛おしそうに撫でてる。
「こんな甘美な酒があるならもうグレーデンに住みたいと思うのも致し方ない」

 およよ。陛下はお酒って言うより食事だけど。

「我が領地にも甘いブドウがありますがどうも美味しい酒にならず」
 甘いブドウがあるって!?
「甘いブドウはいつ頃が旬ですか?」
 グレーデンみたいに年中は無理だよね。
「あと三月ほどすれば熟しますよ」

 速攻で予約をお願いした。

「お酒ねぇ、造り方の問題かねぇ?」
「好みの問題もありますが渋くて苦いブドウの方が深みが出たりしますよ」
「ええ?」

 結局、お祖父様たちが飲みたいからということでグレーデンで量産中のタンクを少しツゥランス侯爵家に譲ることになった。
 美味しいワインができるといいなぁ。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

聖女転生? だが断る

日村透
恋愛
生まれ変わったら、勝ち逃げ確定の悪役聖女になっていた―――  形ばかりと思っていた聖女召喚の儀式で、本当に異世界の少女が訪れてしまった。 それがきっかけで聖女セレスティーヌは思い出す。 この世界はどうも、前世の母親が書いた恋愛小説の世界ではないか。 しかも自分は、本物の聖女をいじめて陥れる悪役聖女に転生してしまったらしい。 若くして生涯を終えるものの、断罪されることなく悠々自適に暮らし、苦しみのない最期を迎えるのだが…… 本当にそうだろうか?  「怪しいですわね。話がうますぎですわ」 何やらあの召喚聖女も怪しい臭いがプンプンする。 セレスティーヌは逃亡を決意した。

ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。 本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。 …………私も消えることができるかな。 私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。 私は、邪魔な子だから。 私は、いらない子だから。 だからきっと、誰も悲しまない。 どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。 そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。 異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。 ☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。 彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...