上 下
366 / 701
二章

356話

しおりを挟む
 旅の汚れ落としをしてからみんなでお茶を頂く。
 夕食前なのでお菓子を少し・・・じゃないけど少しね。グレーデン家基準で。

「リーシャちゃん、ゆっくりできたかしらぁ?」
「おかげさまで」

 温泉とか畑とか色々あったけど実働はポムたちだしね。

「魔獣が闊歩しない長閑なとこだったよー」
「兄さん、普通の場所は魔獣は闊歩しないんだよー」

 お約束ギャグのつもりらしく二人で笑い合ってる。

「魔の森がないと言うのは安心という反面、食糧や素材の入手が限られるのじゃ」
「そうねぇ、人の手で育てられる範囲では細々になるわねぇ」

 機械がない世界だから本当に人力なのだ。育てるのに精一杯だからあの渋みのある野菜も改良とかないままなんだろうな。
 腐葉土が広がって多少作物の育ちが良くなったらしいけど。

「温泉宿が出来ればお祖父様たちも遊びに行くといいですよ。穏やかで気持ちの良い場所です」
「あらぁ私たちには言ってくれないのかしらぁ☆」
「母上・・・しばらくは忙しいのでお祖父様たちの後にしてください」

 留守中のグレーデンのことも聞きながらオヤツを頬張る。

 お祖父様とクラウスさまは領主のお仕事、お義父さまとお祖母様は騎士団のお仕事をしてたそう。
 お祖父様は書類仕事は苦手そうなのにと思ったら過去二十年の領地の状況とか見ておきたかったそうでちょうど良かったとカカカと笑ってる。
 スピネルさんが補佐してくれてるから楽したそうだ。なるほどインテリオジだったか。

 時間になったのでそのまま夕食になった。

「ルルゥ、もう仕事してるの?」
「そうよぉ、私のお城♡落ち着くわぁ」

 村で仕入れたばかりの野菜をふんだんに使ったサラダをルルゥが持って来てくれた。

「こちらポムたちが舞をして育った美味しい野菜ですよぉ」

 ポムたちも嬉しそうにサラダに突進。ディディエのテンションが高い。とうもろこしを高速で突いてるよ。

「まぁ!」
 
 グレーデンで採れる作物はほとんど精霊の加護が行き渡ってるけどマシマシになってるから美味しさアップなんだよね。もう王都や他の地域の野菜食べれないよ。

 あとで干してもらう野菜も用意してもらおう。ポムたちのおやつになるし。

「ジュリアスさま、リーシャさま、こちらルドガーさまの狩ってこられたワイルドフレアボアです」

 おお。やっぱりご馳走用を用意してくれてた。ニックスが持って来てくれたのはローストビーフチックなボアのお皿。

「「ありがとうございます」」

 お義父さまのお礼を言うと今度はお祖父様が、
「俺の獲物も早く」
って急かして持って来させる。
「ジオルドさまの獲物、サンダービッグホーンでございます」
 
 痺れ牛ーー。嬉しいけどあまり食べさせてもらえないんだよ。

「お祖父様、ありがとうございます」

 ジュリアスさまがいい笑顔でお礼を言ったので首を傾げると、
「今日は徹夜なのでありがたいです」
って痺れ牛を私に一切れ食べさせたあとバクっと食べちゃった。
「あらぁ、そんなに切羽詰まったお仕事あったかしらぁ?」
「切迫詰まってなくともルークとセバスチャンの圧がすごいですからね」
 通常運転になるまで怖いオーラだものねぇ。
「良い側近が付いてて有難いさねぇ」

 食後のオヤツまでしっかり食べてから解散になった。

 お義母さまのケーキホール食いが相変わらずで安心しちゃうのはどうしてだろう。

 食後に、ジュリアスさまはやっぱり執務室に行っちゃったので、私は申し訳ないと思いつつ、ニーナとサラとメルにお風呂とマッサージのお世話を受けて休む。
 サラとメル、使用人さんたち用にお花の砂糖漬けなどお土産に渡したらとても喜んでもらえた。
 ニーナがジュリアスさまが戻るまで付いててるって言ってくれたけど旅の疲れもあるし、今日は大人しくしてるからって下がってもらった。

 今日もポムとティムはここで休むそうだ。アズライトは池、ディディエはルルゥだけどね。

 デローンと伸びたポムたちを横目にグレーデンに温泉が出たらスパを作りたいなって妄想を広げた。

 電気風呂と打たせ湯が欲しい。
 あとマッチョなおじさんたちが頑張るサウナっていいよね。いや、さすがにそれを覗くことは出来ないけど。
 
 カイダールの方も和風旅館っぽいのとかあったら良いかも。建物はすぐに手をつけられないから提案書を送ったりしよう。
 いっそ私がオーナーでも良いかも。税金をカイダール領に納めるんだから応援になるよね。

 そういえば転移陣をいじりたいんだった。リックさまと王様にお手紙を書かねば。

 グレーデンとカイダール間の開通を許可して欲しいし。

 マーベルハントのお祖父様にもカイダール家への協力のお礼と温泉のことなど書いて。
 
 やることやりたいことをリストアップしたりしながら気がついたら寝てた。


 起きたらジュリアスさまにガッチリ抱き込まれてたので身じろぎして抜け出そうとした。
 ジュリアスさまはお疲れなので起きない。
 なので腕から出られない。
 乙女のピンチなので脇をこしょこしょ。

 おーきーなーい。

 珍しいことにぐっすりだ。

 起こさないでいてあげたいけどピンチがピンチでピンチなので「んーーーーっ」とジタバタ。

 ギリギリのギリでジュリアスさまがうとうとと目を覚ましたので「お花を・・・」でやっと抜け出せたよ。

 





 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

三回も婚約破棄された小リス令嬢は黒豹騎士に睨まれる~実は溺愛されてるようですが怖すぎて気づきません~

鳥花風星
恋愛
常に何かを食べていなければ魔力が枯渇してしまい命も危うい令嬢ヴィオラ。小柄でいつも両頬に食べ物を詰めこみモグモグと食べてばかりいるのでついたあだ名が「小リス令嬢」だった。 大食いのせいで三度も婚約破棄されてしまい家族にも疎まれるヴィオラは、ひょんなことからとある騎士に縁談を申し込まれる。 見た目は申し分ないのに全身黒づくめの服装でいつも無表情。手足が長く戦いの際にとても俊敏なことからついたあだ名が「黒豹騎士」だ。 黒豹に睨まれ怯える小リスだったが、どうやら睨まれているわけではないようで…? 対照的な二人が距離を縮めていくハッピーエンドストーリー。

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

婚約破棄にも寝過ごした

シアノ
恋愛
 悪役令嬢なんて面倒くさい。  とにかくひたすら寝ていたい。  三度の飯より睡眠が好きな私、エルミーヌ・バタンテールはある朝不意に、この世界が前世にあったドキラブ夢なんちゃらという乙女ゲームによく似ているなーと気が付いたのだった。  そして私は、悪役令嬢と呼ばれるライバルポジションで、最終的に断罪されて塔に幽閉されて一生を送ることになるらしい。  それって──最高じゃない?  ひたすら寝て過ごすためなら努力も惜しまない!まずは寝るけど!おやすみなさい! 10/25 続きました。3はライオール視点、4はエルミーヌ視点です。 これで完結となります。ありがとうございました!

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...