ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

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二章

353話

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 マーベルハントのお祖父様と伯父様たちが防波堤になってくれてるから心配ないけど、せっかく出来た兄が困ってるのはダメだ。シェザール伯父様も今となっては父方の血筋では唯一の身内だ。
 私の気持ちを汲んでくれたジュリアスさまが抗議するとお手紙を預かってくれた。
 チラッと見たらグレーデンに押しかけて来た令嬢の家名も紛れてた。
 行き遅れとかは事情もあるだろうから別にいけど、身持ちが悪いとか金遣いの荒い人は絶対弾かないと。

「ははは、今は結婚など考えている余裕はないんですよ」

 お兄様は背が高くてヒョロってしてるけどスッキリしたお顔立ちで清潔感がある。伯父様はお父さまに似てるだけあって綺麗系で品のある知的なイケオジだから二人とも優良物件。
 今回温泉が出来たことでさらに美味しくなっちゃったかも。

「いずれマーベルハント家の親戚筋から選んでもらうのが一番無難なのだが」
「グレーデンからでも良いけどアーロン卿に合う年頃って言うとアンゼリカかちょっと若いけどプラムローズなんだよねぇー。気性が荒すぎるからおすすめできないんだよー」

 プラムローズさまはマールベリーさまの娘さんだそうだ。まだお会いしたことがないけどアンゼリカさま系なのかしら。

 ジュリアスさまとセリウスさまの目が遠くなったよ。

「気が強い方は嫌いじゃないですがまだ妻をお迎えするのは早いですから」

 気の強いのレベルが多分想像の数倍だよ。アンゼリカさまは性格は優しいと思うので悪い話ではないけどお義父さまがいない場所は拒否だと思う。


 三日目の夜に屋敷の裏のお風呂のお湯が貯まったので簡易な仕切りを作って男女別で入った。ポムたちはルルゥたちに男湯に絶望の顔で連れて行かれた。

「はふー・・・」
 
 チラリと鑑定したら単純温泉だって。
 効能が疲労回復、筋肉痛に効くみたいな。ノーマルだ。

 お世話を兼ねてニーナが一緒に入ってくれた。

「グレーデンの温泉とはまた違ってますね」

 屋敷から離れた場所にある温泉は使用人さんたちがよく行ってるのでニーナも誘われてる。そのうち私も行けるような温泉がほしいところ。アズライトが池を広げまくってても温かい湯が出てないから、屋敷からの範囲にはないのかも?

「外に出てる肌にも潤いを感じます」

 グレーデンは空気が乾燥してるからねぇ。
 
「このお湯にハーブや薬草を入れて入るのもいいと思うの」
「それは神の国にいるような気分を味わえそうですね」

 男湯は人数が多いので順番だそうだけど結構賑やか。
「アズライト~、うちにも温泉欲しい~」
ってセリウスさまがねだってる。
「騎士団棟にも欲しいいぞー」
 チェイスさんまで。

 火の加護がある土地だからあるにはあるんだろうけど、山の方や魔の森近くだとちょっとねぇ。

 アズライトが返事をしたかは聞こえなかった。



 領内の薬草群生地とかも見せて貰って、少しずつ採取もさせて貰った。

 子供の頃外にあまり出てなかったからほとんど初見の場所だったけど、それでも故郷なんだなって感じたよ。

 固有植物も見つかったので、化粧水のレシピも託してカイダールでしか作れない香りの物を作ってもらえることに。
 お酒造りのタンクも設置して薬酒を作ってもらう約束をした。

 お父さまの研究資料は少し読ませてもらった。失踪前に赤斑病とは別の感染症の研究をしていて完成目前だったことがわかった。そのために素材を探しに出掛けたところをイダルンダからの刺客に襲われたんだろう。
 お父さまが生きていたらレイドラアースだけじゃなく大陸中で多くの命が救える薬が出来てただろう。ハーボット家の罪は重い。
 私が引き継げたら良かったんだろうけど無理なのでお兄様たちに期待するしかない。
 

 カイダール領にも王都、マーベルハント家に行ける転移陣があるけど魔導師が常駐してないのでお兄様たちは使えないのだと聞いてびっくり。
 転移陣のシステムは許可なく変更できないので今度王様から許可を貰えたら、お兄様たちが操作できる設定に修正したいな。
 多分用事があるときは王都側からお迎えに来て連れて戻れば良いって感じなんだろうけど。

 カイダール領には合計一週間滞在させてもらった。

 ジュリアスさま的にはかなりゆっくりさせて貰った感じらしいけど、割とお仕事したと思う。

 グレーデンと違って魔獣が出て来なかったのでチェイスさんたちが「オヤツ」のお肉を持って来たりが無かった。それを不思議に感じるようになった私はすっかりグレーデンの暮らしに馴染んでるな。

 お兄様たちは屋敷の門で私たちの馬車が見えなくなるまで見送ってくれた。
 ガンモさんもドーラさんも「また来てください」って。

 王都のオレイユ家は寂しい記憶しかないけど領地での思い出は今も昔も優しい。
 今はもうグレーデンが私の場所だけどカイダールはずっと故郷なんだろう。
 リーシャは王都に向かった時にはもう戻って来られないのかもと思っていたからきっと喜んでるはず。

 感傷的な気分で馬車の窓から外を見ていた私の背をジュリアスさまはずっと撫でていてくれた。







 



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