ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

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二章

350話

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 寝る前にジュリアスさまとお庭に出た。

 グレーデン家でも庭の花木が増えてて良い感じだけど、カイダール領は薬草やハーブを多く育ててるから漂う香りが爽やかで優しい気がする。

 ここは春と秋が交互に来るような感じでグレーデンより温度が低いので体調不良の人には過ごし良いかも。
 元日本人の私は花粉症が怖いって一瞬思ったけど花粉症っぽい人がいる話は今のところ王都でも聞いたことがないので耐性があるのかな?

「マーベルハント領も過ごしやすいと思ったがここは夜の寒さが無いのも良いな」

 んー、結構な僻地だとは思うけど確かに寒暖差が少なくて適温快適かも。

 朝は少し霞みがかってた気がする。

 二人で小さな野菜畑を眺めるとセロリっぽいがあった。セロリかー、スティックにするくらいしか思い浮かばないなぁ。

 久しぶりにサラダスティック食べたいから明日採らせてもらおう。

「お母上がやられていたのか?」
「そうですね。新鮮な方が良いと」

 お母さまも王都の野菜がトラウマだったのかも。エグ味を食べてたんだもん。

「今もですが最低限の使用人しかいなかったのでお母さまはなんでもやってたと思います」

 今思うと貴族らしくなかったのかも。お父さまも実家の援助がなかったからお金を節約してたとかかな。
 マーベルハント家にほとんど頼らなかったみたいだし。

「リーシャが色々美味しい物が作れるのはお母上のおかげでなのだな」

 ・・・!!
 それはちょっと違うんだな~。メグミのことは言う気がないので誤解にそのままのっておこう。

「堅いクッキーが始まりでした」
「リーシャが作った兵糧にしているシリアルバー?のようなものか?」

 あれはまだ歯茎に優しいほうだと思います!

「明日作ってみますね」
「顎が鍛えれそうで楽しみだ」

 あごまで鍛えたいのか!

 夜空は雲がかかっててお月さまが幻想的に翳ってる。晴天のグレーデンでは見られないから堪能しよう。

「さすがに冷えるだろう」

 ジュリアスさまが私のポンチョを取り出して羽織らせてくれる。

「そろそろ部屋に戻ろうか」
「はい」

 屋敷に戻って元私のお部屋を覗く。
 掃除は行き届いてるけど最低限の何も無いので殺風景。

「確かに小さなベッドだな」

 一般的なサイズの家具だと思うけどグレーデン仕様と比べたら小さいかも?

「小さなリーシャがこの机で勉強していたと思うと愛おしく感じる」

 ただの木製テーブルや地味な椅子まで触れてほっこりされた。どんだけ小さい姿を想像してるんだろう??

「母上がこの部屋見たらレースのカーテンと寝具で整えてリーシャを着飾らせて楽しみそうだ」

 リアルなドール遊びになりそうだ。

 そういえば離れのカントリーハウスのイメージはこの家のことが根底にあったのかも。全然カントリーじゃなくなったけど。

「アーロン殿が結婚してお子が生まれたら母上が張り切ってここに来て模様替えするかもな」

 あはは。まだ予定がないお兄様より私たちの方が先に授かりたいのですが!お義母さまたちが振り切りそうだから怖い気もするね。

「お兄様は今注目株なので良い方とご縁があると嬉しいですね」

 グレーデンに来てもらうよりは確率があるかもだけどアルモンド出身で元平民?だとどうなのかな。名誉と財産目当ては困るな。
 お祖父様とシェザール伯父様チェックが入るだろうから心配はないかな。

「明日は温泉を掘るのでもう寝ましょう」
「そうだな」

 客室に戻るとニーナが寝巻きを用意してくれてハーブティーを淹れてくれた。

「ありがとう」

 ポムたちはすでに卵の籠に埋もれてて、アズライトは外で寝るそう。

「グレーデンでもお茶が格段に美味くなったと思っていたがさすがカイダール領のハーブはさらに質がいいな」

 豊穣の舞でかなりチートな栄養状態のかグレーデンの大地だけどカイダールは気候や雨も関係している分ポテンシャルが高い。
 今回ポムたちが加護を与えてるから今後はさらに良くなるだろうな。

「この品質は水捌けもあるのかもですね」

 グレーデンの畑も水路とかもっとやれることは多い。ポムに甘えきりじゃダメかな。
 育成と品質向上はポムとティムがやってくれて入るけど、グレーデンに向かない種類も加護でどうにかなってるんだよね。多分。

「水路ももっと作らないとだな」

 アズライトの池改め湖のおかげで少し空気に水分が混ざりつつあるから以前よりは水の気配もある。

「川から用水路を引ければ一番良いんですが」
「大きな川は人里からは遠いのだ」

 やっぱりポムに貯水池を各地に置いてもらう方が良いかな。

「今まで困っていなかった部分をいきなり変えていくのも良くないので各地の長と話し合いをしつつゆっくり進めましょう」

 飢え死ぬとかの状況なら焦るけど今は食糧も困ることはないので、品質向上を目指してやれることから進めてもらおう。

 二人で色気も全くない話をしながらグレーデンより涼しい夜が更けてしまった。



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