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二章

309話

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 マッチョに抱き込まれている幸せな寝起き。
 化粧水とクリームの香りと剥き出しのスベスベな弾力ある胸元に朝からノックアウトされてる。
 うぐー!モチ肌ースベスベー!
 肌触りが良くてつい頬を擦り付けちゃう。

「リーシャ、くすぐったいから」
 
 ジュリアスさまがクスクス言いながら起き出す。
「ん?リーシャ、赤子の肌のように柔らかい気がする?」
「え?」
 何かのCMみたいな表現~!
 自分の頬をペチペチすると確かに質感が違う。目の前のジュリアスさまのお顔もっちり髭がちょっと伸びてるけどピッチピチしてる。
「ジュリアスさまも、ツヤツヤのピッチピチです!」
 効き目良すぎない?
「ん?」
 自分のお肌も触り、私の頬や首を触り確認。

 化粧水もクリームももっと希釈すべきかもしれない。恐ろしい効果だ。

「ジュリアスさま、ちょっとだけ薄めても良いですか?」
「ん?」
「効きすぎは良くないです」

 そんなわけで隠し部屋に入るのは却下なので簡易錬金台を出して、化粧水とクリームを調整した。

「バレたら怒るんじゃないか?」
「でもちょっとダメだと思うんですよ」

 化粧水は三倍の量、クリームは十倍にした。かなりの量になっちゃったので当面追加で作る心配はないはず。
 昨日詰めた分はそのままにしておいた。
 ポーションも心配だけど、ポーションはお義母さまとルルゥだけにしたら良いはず。

 ニーナを呼び入れる前にポムたちを起こして卵に魔力をあげてもらって。

 ニーナは私たちの顔を見てあんぐりと顎が下がったけど一瞬で立ち直って。

「今日はとても潤っていらっしゃいますね」
って言われちゃった。

「ニーナ、いつもありがとう。これを使ってみてね」
 化粧水とクリームを渡すと一瞬スッと目を細めて隠し部屋の方を見た。バレてる!
「ありがたく頂戴します。旦那さまが黙認されたのなら私からは何も言いませんけど、今日から旦那さまがお戻りになるまでそばに控えさせていただきますね」

 ぎゃーん!藪ヘビー。

 ジュリアスさまが苦笑しつつ了承しちゃった。とほほ。
 ニーナの勤務時間がまたブラックに。
 
「ニーナ、いつもリーシャに寄り添ってくれてありがとう」
 ジュリアスさまがお礼まで言っちゃった。
「とんでもないことでございます」
 ほんのりニコッと微笑むニーナに私は頭が上がらないよ。
 でも瓶を嬉しそうに抱えていつもより足取りが軽やかなので私も嬉しい。

 廊下ですれ違う侍女さんや騎士さんに二度見されたりしたけど「おはよう」って声をかけて進む。 
 食堂に入ると今度はお義母さまとセリウスさまとクラウスさまがジュリアスさまを見てポカーンってなってる。

 うん。多分だけどセリウスさまくらいに見える若返り!
 二人の歳の差は六歳なのであんま差がないと言えば無いんだけど、ジュリアスさまは貫禄がある分老けて見られがちだからね。

「ちょっとどうなってるのー?」
「リーシャちゃんもプルプルじゃない~?」
 
 ガタンッて音がしてお義母さまがジュリアスさまに近付いて物凄く凝視してる。

 プルプルッて聞こえちゃったからかルルゥがバーンって厨房から出てきて私の顎をクイって持ち上げてしこたま観察してからジュリアスさまの頬を両手に挟んでもはやキスしちゃうんじゃってくらい接近して肌感を調べてる。怖。

「リーシャちゃん?二人して何したのぉ?」

 お義母さまが私の頬をプニプニして。
「赤ちゃんを触ってるみたいよぉ~♡」
 ってめっちゃ頬擦りされた。

「えっと、私とジュリアスさまは化粧水をつかいました?」

 目が怖いよ!

「お肌用のポーションと化粧水とクリームを作ったのでお義母さまとルルゥにも用意しました」

 テーブルの端に載せたらすっごい速さで掻っ攫って二人とも出ていっちゃった。

 お義母さまがご飯とおやつより優先するだと!?
 ルルゥ、今仕事中ー!!!

「あー、まぁ見ちゃったら仕方ないよねー」
「兄上、兄さんと似てるんだね~」

 ん?セリウスさまとジュリアスさまは元々似てる・・・

 わぁ!!

 双子みたいになってる。

 けどお肌の若さでジュリアスさまの方が爽やかになってる!!!!

 池でもらったお酒で十分過ぎる効果があったけど、それはセリウスさまも飲んでたからジュリアスさまと同じように効果が出てたんだよね。そこに化粧水でジュリアスさまの方がピッチピチになっちゃった感。

「似てるのは分かってるけど兄上だけ若返るのはズルだなぁ、リーシャちゃん、俺にも化粧水くれなー?」

 おお、薄めてしまったけど十分効くからこれで良いかな?

「肌が綺麗だとモテるんでしょ?僕にもちょうだい~」

 二人とも女受け気にしてないよね!?

 まぁお外仕事が多いからケアはした方がいいよね。ってことで化粧水とクリームを渡す。
 あとで試す~って言ってマジックバッグに仕舞った。二人はやっぱり美肌にこだわってるわけじゃないらしい?

「食事、お義母さまをお待ちします?」
「いや、俺たちは仕事に出ないとだから先にいただこう」

 食後にお迎えに来たサーキスさまにお説教込みで製法を聞かれて。

 その後、グレーデンでは空前の美肌ブームが起きて。
 コックさんどころか騎士さんたちにもクリームをプレゼントすることになって。
 騎士さんたちが娼館でモテるとガチ目の美肌男子になって、そのお肌に感激したお姐さんたちにおねだりされてプレゼントしたいと頼み込まれて。
 化粧水とクリームの超希釈版が一般向けにそれなりな値段で発売されることになるのはすぐのことになった。

 のちに広まって販売することになった貴族用は一般よりは成分濃いめで物凄い金額になってて私はかなり震えた。

 百目ポーションは売りには出さずに、化粧水とクリームを鍋で作る時にちょっぴり混ぜるだけなので百目が滅多に獲れなくても問題ないのでホッとしたよ。




 

 

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