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二章

305話

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 みんなが戻ってきて食事のオヤツの時。

「まぁ!そんなに凄いお酒ならお義父さまたちが戻ってきた時のお祝いに頂きたいわねぇ」

 ニーナたちが運ばれていった時にお姫様抱っこだったからかルルゥに姫抱っこされたニーナは侍女メイドさんたちに羨ましがられ、アランに姫抱っこされたジェイクはからかいのネタになってるみたいで。目が覚めたらかなりびっくりするだろうなぁ。

 加護舞+霊水の方は私があまり出したく無い気持ちを理解してくれて広めない方向だけど、ちょっとだけお祝いの時とかは出して欲しいなってことなのでそこはアズライトとポムたちに確認して了承したよ。

「美味しすぎて一杯で満足して寝るって凄いよねぇ」
 いやぁ、ウワバミたちは全くもって普通だったよ。

 今日も一杯だけ、甘酒の木で作った焼酎を出してる。わりとアルコールはキツいと思うけど、ジュリアスさまはじっくり、お義母さまは薄めて、セリウスさまとクラウスさまはクイっと飲んだ。

「カーーー!!」
「・・・喉にくるー」

 オッサンが出た。

「なんか飲みやすいぇ」

 アルコール濃度高いから飲みやすいわけじゃ無いと思うんだけど味は淡麗かもね。

 今日はパンケーキを山のようにしてお義母さまがエンドレスでお皿に積ませてる。

 何枚食べてるのかもう数えられないよ。

「母上、私たちはまだ仕事が残っていますのでこれで」

 ジュリアスさまたちが執務室に戻るそうなので私はお部屋に。

 ニーナがいないのでサラとメルにお風呂と着替えを手伝ってもらって寝る準備。

 寂しいけど、仕方ない。

 ポムたちが私たちの部屋で卵を温めながら寝るようになったので少し癒されるよ。

 今日も籠の中にはポムたちの愛情がいっぱい。パンは入れないように。

 眺めてるとポムたちが「プスー」と寝息を立て始めてデローンと伸びる。無防備だ。

 私もそのまま寝落ちしちゃった。



「・・・リーシャ」
「んにゃ?」

 揺り起こされて朝かしら?と目を開けるとまだ暗い。

「ジュリアスしゃま・・・?」
「起こしてすまない。アズライトが池に来いと言うのでな。どうする?」

 ・・・?池?

「どうやら良いものが観れるらしい」
「・・・いきましゅ」

 あかん。寝起きで口がうまく回らないよ。

「じゃぁ行こうか」

 私のフード付きマントを羽織らせてくれて、ポムたち入りの籠を持たせてくれて。アズライトも私の肩に乗る。

「窓?」
「ああ、書き置きをしておくから平気だ」

 ジュリアスさまが窓に足を掛けて飛び出そうとした。以前めっちゃ怒られたから思わず聞いちゃったら、ジュリアスさまは大丈夫だって。本当かな?

 以前と同じように身軽に飛んで軽々と壁を越えてあっという間に池に出る。

 ソーラーライトがいい味出してて途中の道も綺麗だった。

「相変わらず透き通った水だな」

 水面がキラキラして跳ねる魚も波間の光も幻想的。
 空も満天の星だよ。

 ボート寄せにはチェリーが咲いてて、花吹雪と花筏も見れた。なにこの超接待。

 私用のゴンドラボートでジュリアスさまと二人(ポムたちもいるけど)水面に浮けば、いよいよ宇宙に漂っているような気分。

 星の瞬きも水面の波に現れる青白い光もずっと見ていられるよ。

 点在する島には精霊の出す淡い光がふわふわしてる。
 何かすごい花でも咲いたのかしら?

 アズライトの棲家に上陸したら、島全体がキラキラふわふわで。

「これはすごいな」
『今日はイベントじゃからの』

 イベント?

 アズライトの寝床のある精霊樹に着くと一層光が増えてて。

『主、仙桃の酒と竜殺しをそこに並べてくれるかの』

 前回のお供えのようにジュリアスさまに手伝ってもらって並べる。

 起き出したポムとティムが踊り始める。

 周りに漂っていた光も一緒に舞っているみたいになって。

 木の騒めきと光の揺らめきが心地よい。

「・・・」

 精霊樹から新たにたくさんの光が生まれてより濃い気配が発生する。

 ジュリアスさまが私を抱き寄せて様子を伺うと精霊樹の周りに大きな光が出現した。

 ほんのり人型が見える。

 あれだ。火の精霊王が出現した時みたいになってる。

 たくさんの光がお供えの周りをクルクル回って大きな光が一瞬弾けると物凄い勢いで遠くに飛んでいった。

 えええ。

『お供えものに満足したようじゃの』

 仙桃とハーブで作れって言ったのはポムたちが精霊王に貢ぎたかったからか。

 言ってくれれば最初から専用に酒蔵を島に設置したのにね。

『ほれ、おこぼれじゃぞ』

 アズライトがお供えのあった場所を指差す。

 なんだろう?漫画とかで見るお酒の入った壺みたいなのが置いてある。仙人が腰からぶら下げてるみたいなの。

『ほぅ、これは良いものだの』

 手に取って見てみると蓋ががっちりしまっているから中身は見えない。

『神の園の蜜酒じゃ』

 はぁーーーーー!?

 お供えしたお酒よりヤバそうなのキターーー!!

「・・・証拠隠滅しよう」
「ん?」

 幸いそんなに大きい壺じゃ無いんだ。

 誰にも見つからないうちに飲もう!

 私は無言でアイテムボックスから小さいグラスを出す。

「ジュリアスさま、こんなのが見つかるとヤバいので飲んでしまいましょう!」
「そ・・・そうか」

 捨てるとか死蔵はせっかくの精霊さんのご好意だからダメ。

 アズライトもポムたちも嬉しそうだ。きっと正解!

 黄金色のとろみのあるお酒。匂いは甘くて芳しい。
 発光してるかのような液体をみんなで一緒に口に迎える。

 美味しい。もう人間の持つ語彙じゃ言い表せない。
 体が蕩けて自分がお酒そのものになった気がする。
 ジュリアスさまも目をトロンとさせ口に微笑を浮かべる。

 ポムたちは軟体動物みたいにクネクネ踊ってて、アズライトがオオトカゲくらいのサイズになって腹天してる。

 まだ三杯分ずつはいける。

 でも私の飲んで良い量はあと一杯だ。

『この酒は悪いものでは無いから気にせずとも良いのでは無いかの?』

 アズライトが誘惑してくる。呑兵衛の言い訳の〈体に良い〉が甘い誘いを!

 もう二度と飲めないだろうお酒だ。

 誘惑に負けても仕方ないよね!

「リーシャさま、その二杯は譲って頂きましょうか?」

 いつの間にやらサーキスさまが!
 ついでにセリウスさまとクラウスさまが!

「ジュリアスさまは気配を感じてましたよね?」
『我もわかっておったぞ』

 ええええー。

「兄さんたち、面白いことするなら誘ってよねー」
「兄上、書き置きをしたのは良いけど、護衛はつけなよ~」

 くー!!

 結局ジュリアスさまと私の分を譲ってみんなで蕩けた。

「なんかあー、光がグレーデン越えて遠くまで行ったみたいなんだけど~」
「そうそう、広範囲だったけどなにしたのー」

 なんてこった。そんなに目立つことになってたの?

『心配せぬとも見える者にしか見えぬ。信仰が薄れ弱った神への力添えのようなものじゃの』

 なんかとんでも無いこと聞いた気がする。

 神様弱ってたんだ。

 一杯ちょっとでも天国の花園にいる気分になってみんなが気分良くなったからか屋敷に戻ってもお説教を受けずに済んだよ。







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