ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

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二章

287話

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 朝早く、一ヶ月くらい前から漁に出たり軍艦の出入りはしていたものの、正式な開港式典が始まった。
 出航や入港の様子を華々しく演出して見せるため、音楽隊(いたんだ!)がド派手にファンファーレを鳴らし、まず軍艦が祝砲を撃ち、大小十隻出て、沖で待機、漁船がそのあと三十艘続き沖に出る。

 招待客や観客はレイドラアースでは初めて見る光景となった開港式を大歓声で見守る。
 もう一つの港は数百年に歴史があるので存命の人で見たことのある者はいないのだとのこと。

 しばらく見守っているとデレード国の大きな豪華客船?と護衛艦、そして先ほど出たグレーデンの軍艦とカマランからデレードの船を護衛、案内して来たアルジェさまの軍艦が追走して来た。

 いきなり海が軍に占拠されたみたいになってるよ。

 デレード国との国力に違いがはっきりわかるような巨大な客船。
 アッガスの港まで入って来れず、ギリギリのところで待機になった。
 護衛艦が入って来て、デレード国の騎士たちが降りて来て、指定された場所で整列している。みなさんエキゾチックだ。あとちょいマッチョ!うちの騎士さんたちのがマッチョポイントが高いのだった!フンス!!

 音楽隊が再びファンファーレ。
 どこの世界にもラッパっぽいのがあるんだね。法螺貝とかだったら腹筋捩れるところだったのに!
 
 レオルカさまが開港の挨拶と、王女殿下の御出立を発表するとその場が歓声と雄叫びに包まれる。
 この様子は魔道具の拡声器でグレーデンの領地内の主要な場所で聞けるようになってるらしい。映像はないけどね。

「ファテイマさまー!!お幸せに!!」
「王女殿下ー!!」

 王都からのご友人や幼い頃から見守って来たと思われる重鎮からお祝いを述べられ送り出される王女殿下は強い眼差しで王都の方角を見つめ、カーテシーする。美しい礼だった。

 アレキシ殿下が王女殿下の手を取り、

『この度の婚姻で我がデレードとレイドラアースの友好が永遠のものとなろう。そなたたちの大事な姫を私の元に嫁ぐことを心配されないよう私は妻となったファティマを尊重し慈しむことを誓う』

 ちょっとクサいけどレイドラアースの国民に向けての誓いを立てた。

 レオルカさまとジュリアスさまが、
『ご無事に帰国されますようにお祈りします』
とアレキシ殿下とプライド殿下に挨拶して。
 マデリーさまと私で王女殿下に、
『殿下の未来が穏やかで暖かき光に包まれまうように』
とお祈りを伝えた。

「ありがとう。リーシャさま、父より格別なお心遣いを頂いとと聞きました。私からも心より感謝を。貴女のことはグレーデンにあれば心配はないと思いますが貴女にレイドラ神の加護があらんことを祈っています。マデリーさま、新しきことを成す苦労は並大抵のことではないでしょう。ですが貴女の心の強さ、レオルカさまとならばきっと成し遂げられましょう。頼みましたよ」

 ありゃ、王様ったら魔道具の種明かししちゃってるんだ?大丈夫かな。
 
『では参ろうか』

 アレキシ殿下が王女殿下の手を取って護衛艦に乗船する。客船に寄せて移るようだ。

 ファンファーレと歓声、祝砲乱れ打ちでお見送りする。
 グレーデンとカマランの船はレイドラアースの領海まで護衛して帰ってくる。その先にはデレードの軍艦が待ってるそうだ。

 客船に移った殿下たちが手を振ってくれる。

 船が見えなくなるまで見送って。

 そのあとは、レオルカさまがマデリーさまと寄り添って領民に向けての挨拶をする。

「私がこのアッガスを預かることになったレオルカ・シード、そして妻のマデリー・シードだ。このアッガスはグレーデン辺境伯領の一部となった。全てをすぐに改善は出来ると言えないが民たちが飢えることのないよう暮らしを整えたいと持っている。それにはそなたたちの協力が必要だ。不満も不安もあるだろうがよろしく頼む」

 散々嫌だー変わってくれとごねてたレオルカさまが立派な意思表明をした。
 前領主のせいで荒れに荒れた領地を豊かにするのは大変なことだけどグレーデンと聞いただけで喜んでる人がいた。

「噂は耳にしているかもしれないが今、グレーデン領は不毛の地と言われていたのが信じられないほど豊かになった。その恩恵や加護はこのアッガスにも広がっていくことになると断言する」

 それを聞いた領民たちは雄叫びを上げ、咽び泣いたり、うずくまったり。
 どれほど追い詰められていたのだろう。
 前領主に激不味ポーションを贈ろう。

「さぁ、これからは忙しくなる。英気を養ってくれ」

 そんなわけでまたもバーベキュー大会。

 屋台も出店も全部タダでお振舞いだ。

 貴族の騎士も平民も関係なく。


「・・・なんでこっそり見送ったんです?」

 私はついに出されたキッチン馬車の中でたこ焼きを作りながら隅っこでたこ焼きを食べてる目を腫らしたオジサマに声をかける。
 綺麗なオジサマが台無しだよ。

「王妃も我慢しているのに私だけ参加したらダメだろう」
「こっそりでも一人で見送りしちゃってるから王妃さまからしたらアウトです」

 そう、王族は警備などなどの事情で王女殿下のお見送りは王都で済ますことになっちゃってたのだ。
 王様、転移陣でこっそり来てちゃっかり食事もしてるわけで。

「でも~父親としたら一人娘を手放すの辛いでしょうから見送りたいのは仕方ないわよぉ~」
 未婚のオネエさまが父親心を・・・。

「陛下、魔道具のことバラしちゃってましたね」
「・・・娘は感が良いんだ」

 ふーん。まぁあの様子なら無体なことにはならないかなぁ?
 
「プッキュン!」
「モッキュン!」

 知らない人の前には出ないように言ってあるポムたちはずっとニーナのそばにいて、今はキッチン馬車の中で出来立てを頬張ってる。

「おぉ。うまいな」
「モキュン」
「プッキュ」

 なぜか頷きあってるポムたちと王様。

 王様、加護とかお願いしたいとか言ってたのに食べるのに夢中で会えてることに気づいてないのかな?




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