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二章

270話

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 グレーデンではエールしか作ってないらしいけど、家族が私に遠慮して滅多に飲まない中でたまに飲んでるのはブランデーやワイン。
 なので仕上がったお酒が他領の既得損益に関わっちゃったらどうしようってちょっと心配。 
 飲ませて貰えないから既存のお酒のレベルがよくわからないんだよね。
 お菓子に使っているお酒は香りが良かったから出来が悪いってことはないと思うんだけど。

 私としては家族と仲間内で楽しむ範囲にしたかったんだけど、お義父さまは美味しいものは多くの人にってタイプなのでそこは尊敬すべきところなので反対できないんだなぁ。

 作っちゃったものは仕方ない。
 タンク一式作りを魔導師さんたちにお願いすることになるだろう。金属部は鍛治師さんでもイケるかな。

 また雇用を増やさないとブラックになっちゃう。NO残業NO休日出勤にしないとストライキされちゃうよ。

 レイドラアース内の魔導師集めちゃって謀叛の疑いありとか騒がれちゃったらどうしよう?心配しすぎ?


 今夜までセリウスさまたちがいないので静かだよ。

 ジュリアスさまは兄弟たちの急ぎのお仕事も処理してるから夕食後もサーキスさまとセバスチャンがニッコリお迎えに来てたから、今夜も遅い。
 私も手伝えたら良いんだけど。

 ちょっぴり寂しいなって思ったらアズライトが窓からやって来てちょっと大きくなって寄り添ってくれた。
 コモドオオトカゲにしか見えない。
 
 寒い夜には毛のある動物がいいかも。優しさは嬉しいんだけど。

『主、今宵は月が綺麗じゃ。外を見るが良い』
 
 言われるまま窓を開けて覗けば、満月だ。
 雲のない夜空に満点の星。
 
 なんか月と星は光源か何かの関係でなかなか同時に楽しめないって聞いた気がするけど、この世界は違うのかな?
 間違い知識かな?

『幾年月生きても変わらず空は美しいものぞ』

 この世界は空気汚染もオゾン破壊も無いからかなって切ないこと考えちゃう。
 
 いつに間にかポムとティムがチェリーの木に登って来て木の上でまで踊ってる。危ないよ!

「モッキュン!」

 ポムから持っていた丸い物をポーイと投げられて思わず受けてとってから気付く。

 ◯んちだよね!?

 何すんの!
 最近はずっと馬屋番のドーリーかルル好きに預けてたんじゃなかったの!?

 とりあえず鑑定してみると、仙桃っぽい実。芋と柿が混ざったような味。少しだけ精力アップ。

 ん!?美味しいのこれ?
 あと精力はいらない。しかも少しだけってなんだ。
「「キュキュウー」」
『酒を作れと言っておるようだの』

 ポムたちが飲むの!?

『甘いの酒になるようじゃの』

 食べても美味しくなさそうだし良いけど。
 名前的にやばいお酒になったりしないよね?

『甘露なる味わいになるじゃろうの』

 ・・・・・・。

 (池に装置を一式作ってあげるから人目につかないようにしてくれない?)
『ふむぅ、そこまでもモノでもないのだがの、主がそう言うならそうしようかの』

 貴方達の基準はヤバそうだからぜひ隠してちょうだい。

『なれば種を我の寝床で育てるかの』

 精霊樹あるとこに仙桃とか。もうそこ天竺かヴァルハラになちゃううんじゃ。

 グレーデン領がどんどんヤバい方向になりそうだから程々にしてね。

『我の縄張りの時点で無駄な心配じゃの』
 しれっというアズライトにムカっ腹。
 鱗剥いだろうか。

 いまだに木の上で踊ってるポムたち。なぜ次から次にとんでもないモノ出してくるのよ。
 私のせいじゃなくてもサーキスさまがキレちゃう気がするよ。

『酒を作り始めた時点でもうダメじゃったろう』

 いや勝手に霊水にしといてなんてこと言うの。

『神水にせぬかっただけだけマシだと思うんじゃ』

 いやもう神水が出せるとか意味わかんないから。
 古代竜ってなんなのよ。もう。

 せっかく綺麗な夜空で癒されてもまたとんでもないことになるからちっとも安らがないよ。

 良い時間になったのでアズライトはポムたち連れて寝床に向かう。

『実が育ったら一式頼むぞ』

 ポムがニョキってやってすぐ要るんだろうから明日作りに行くよ。

 三匹を見送ってからベッドに入る。

 窓を開けたせいでお部屋がちょっと寒くなったから魔道具のヒーターをつけておいたよ。

 ジュリアスさまはまだかなぁ。




◽️◻︎◽️

 急ぎの仕事を片付けて部屋に戻って来たらリーシャはもう寝ていた。
 寒かったのかヒーターが入っていた。

 風呂に入って髪を乾かしてからヒーターを切ってベッドに入る。

 暖を求めたのかリーシャが擦り寄ってくる。可愛い。
 いつものように脇に抱き込んで寝る体制を整えると腹回りをペチペチと叩かれる。
 腹や胸をひとしきり叩いて納得したのか「うふふ」って笑みを浮かべてから「ふぅ」っと息を吐いて静かになった。

 数日後にはアッガスに向かわねばならないからしばらくは落ち着かないだろう。
 寂しい思いをさせないと良いのだが。










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