ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

文字の大きさ
上 下
271 / 765
二章

262話

しおりを挟む
 順番が回ってきたので私たちもまとめてご挨拶。
 デレードの王子様とウチの王女殿下ともお話しできた。
『グレーデン領ではコーナ(カカオと)薬方(スパイス系のこと)を欲しているとか』
 王子様がすんごい営業スマイルでお言葉を掛けてくれた。
『はい、それらを使ったウチの妻の料理が美味しいのでもっと食べたいし、領民にも食べられるようにしたいのです』
 ジュリアスさまが流暢な公用語で答える。
 いやん!イケボがさらに色っぽい感じに聞こえる。
『王宮での食事に出てきたカレーと良いものに使っているのだな?面白い発想だ。だがコーナは出て来てないようだ』
 え!?スパイス売ってるのにカレー食べてないの!?
 カカオってデレードではコーナなのねって言うのは置いといて。
 コーナは量が無かったからもう無いんだもん。王宮にも入ってないのかな。
『仕入れが少なくて王宮にはまだレシピを出せていないのです』
 カカオニブクッキーとかカカオティーのレシピ教えてないんだ。材料がないなら意味ないからかな。
 スパイスは結構入って来てるんだけどカカオは使い方が分かってないから流通に乗りにくいのかも?
『こちらでどんな使い方をしているのか知りたかったが残念だ。コーナをアッガス経由で回せるように手配しよう』
 え!?
 王子様何って言ったの!?
『ありがとう存じます』
 きゃー!チョコレートが出来るっ!
『今回も多少持って来ているので良ければ使い方を教えて欲しい』
 にょ!?
 王子様が私を見下げて(背が低いのでみんな見下げてるけど)話しかけてくれた。
『私の拙い料理で良ければ・・・あのデレードではどう言った食べ方をされるのですか?』
 王様やサーキスさまたちが私が公用語使えたことにびっくりされてる気配。一応学園では必須だしー。なんでびっくりされてるんだしー!
 王子様は嫌な顔せず答えてくれた。
『肉料理のソースや野菜と炒めたり、ヌーと煮込んだりだな』
 なんと!!美味しそうだ。ヌーは大麦みたいなのらしい。
『美味しそうですね。私が作るのはシリアルやクッキーに混ぜたりスイーツです』
『ほう、それは気になるな。ウチの料理人に教えていただくのは可能か?』
『はい!あの差し出がましいのですが私もデレードの料理が知りたいです』
『よかろう。交換だな』
 はっはっはと笑う王子様は随分気さくな感じだ。目もちゃんと笑ってると思うので印象は悪くない?
 デレードはカレーの国じゃ無かった。
 スパイスの流通も聞いてみたら口利きはできるがって言われた。

 デレードに近い島にあるナギ国が薬方の生産国だそう。カレーじゃなくスパイスでもなく薬方。
 薬として使われてて、薬膳として料理に使うこともあるそう。
 薬膳料理も気になる。
 
 アッガスでの滞在時にカカオ料理のレシピ交換することになった。

 それからお祖父様とアーロンお兄さんに、
『赤斑病の特効薬が出来たと聞いた。素晴らしい功績だ。ぜひ我が国でも使えるようにしたい』
と話しかけた。
 デレードでも赤斑病は出てるんだね。
『それは権利者である義妹と私でお話を聞きたいと思います』
 お兄さんが私を見て言うと王子様ご一行がバッと私を見た。
 王様から聞いてなかったのかな?
『では後日席を設けてもらおう』

 ぎゃっ!ジュリアスさまと私は今日帰るつもりだったのに!
 セリウスさまたち独身軍は三日間の祝宴の間は残る予定で。
 ぬぬぬ。

 でも特効薬はお金儲けに使うわけにも使わせるわけにも行かないので契約をしっかり詰めないとなんだよね。
 お兄さんを信用してるから丸投げしてもいいと思うけど、いきなり王子様と契約の席任せたら気の毒だよなぁ。

 なぜかデレードのご一行の目つきが険しくなってちょっと怖いな。

 ホーン家やリュフェリー家も王様たちと王子様にご挨拶してやっと解放された。

「リーシャちゃん、かなり流暢だったね~?学園の授業だけじゃあそこまで話せなくない~?」
 クラウスさまがちょっとキラキラした目で見てくる。
「でもジュリアスさまもお祖父様もお兄さんも話せてるじゃないですか?」

 家庭教師とかつけてるのかな?

「その年齢でペラペラってすごいよー?」

 なんだろう。リーシャ自身の知識なんだと思うんだけど、お母さまの教育かな?

「多分お母さまが使ってたんだと思います?」
「へぇー!?スパルタ?」

 確かに?魔道具作りとか結構すごい叩き込みだった気がしなくもない。

「あー、それはセラーナの影響かもしれんな」
 お祖父様が苦笑してる。お祖母様って厳しかったのかな。

「そうなんですね」

 リーシャにとっては無駄じゃ無かったんじゃないかなって思いたい。

 みんなで食事に戻った。
 いくら美味しくなったと言ってもパーティで食事をモリモリ食べる貴族が少ないのでめっちゃ空いてる。うま~なのにね。もったいない。
 ダンスが始まってクラウスさまやルルゥたちを誘いたいのかウロウロしてる令嬢たちが見える。
 迫力のあるガタイのいい男性陣が集まってるので近寄りがたいんだろうな。

「ルルゥ、踊ってあげないの?」
「えー?リーシャちゃんとならいいわよぉ?」
 いや既婚者と踊ってどうすんだい!
「セリウスさまとクラウスさまも踊らないの?」
「あっちの子は離婚二回ー、あの子は未婚の母~、あそこの子は公爵子息狙って玉砕した子ー」
 ワオ!若そうなのにバツニとは!
 って訳アリの人多すぎない!!?
「嫁の来ない辺境なら多少問題があっても受け入れるだろうとか思われてるんだよねー」
 以前ディゴーに居座ってた人たちも訳アリが多かったわけかー。

「うちにも押しかけがちょっと来たけど寒さにめげて逃げ帰ったぜ」
 ホーン家の寒さ半端ないな?
「そうそう、リーシャさまの魔道具、めっちゃ助かるよ。カイロってのもサイコーだった」
 それは何より。
「毛布の中に入れられるのサイコー」

 グレーデンが暑すぎず寒すぎずなのって天国なんじゃ!?

「今年は冬将軍が強くなりそうでなぁ」

 冬将軍は冬の一番寒い時に出てくる魔獣らしい。美味しくないとのこと。強くて大変なのに美味しくないとは!迷惑で嫌なやつだ。素材は良いものになるそうだからそこはよかった。

「デレードなんて聞いたことのない国だと思ってたけどあの王子様なら私が嫁ぎたかったですわぁ」
「美しい方ですわねぇ」

 突然甲高い声が響いて来た。
 ケバケバしい露出多めなドレス着てるのはあの女はアニエス・ヘイトだ。
 一緒にいる令嬢たちもちょっとケバい。
 
「絶対に選ばれるわけないだろー」
 誰かがボソッと呟いたのが耳に届いたのか一気に顔を真っ赤にさせて激怒の表情になった。

 ファティマ王女殿下とケバ女だったら比べるまでもなく王女殿下とるよ。

 近くにいる男性陣がウヘェって顔してる。

 不敬だし、なぜ自分の価値が高いと思いこんでるんだろう。
 言っちゃ悪いけど(貴族基準で言うと)年増だし、美人ではあるけど内面が表に滲んでてなんか嫌な雰囲気だしね。

 同じような年齢なら断然アンゼリカさまのが美人でナイスバディだし?
 
 早く現実に帰った方がいいと思うな。






 










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜

望月かれん
ファンタジー
 中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。 戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。 暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。  疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。 なんと、ぬいぐるみが喋っていた。 しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。     天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。  ※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

忘れられた幼な妻は泣くことを止めました

帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。 そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。 もちろん返済する目処もない。 「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」 フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。 嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。 「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」 そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。 厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。 それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。 「お幸せですか?」 アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。 世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。 古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。 ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。 ※小説家になろう様にも投稿させていただいております。

処理中です...