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二章

257話

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 お義父さまは物凄い勢いで走り去ってしまったので残った私たちは訓練場に行くことに。

「リーシャちゃん、一か月はわかったけど運びだした材料から何か良い物って気がするのよぉ~?ぜひ見せてほしいわぁ」

 くそう。

 ルルゥの鼻か感かよくわかんないけど目敏いんだからー。

 訓練場まではセリウスさまの抱っこで運ばれて、扉を開けた瞬間、ニーナ以外はポカーンってしてる。
 隅っことはいえ厳重な扉が付いた部屋がデーンって増えてるからね。
 私が一人で作るとは普通思えないよね。

「まぁ~、相変わらず予想外ねぇ」
「中は見せてくれるのかー?」

 見せないって言っても見ようとするんでしょ~。

 セリウスさまに降ろしてもらってから扉の認証して中に入る。
 って言ってもケースは密閉で蒸留も撹拌も発酵も合板っぽい銀色のタンクだから匂いもしなければ中身もわからないよ。

「何だこれ?何かあやしいもの作ってそうな装置だなー」

 悪の秘密結社っぽい?

「果物とかハーブを発酵してるんですよ」

 まだアルコールって言わないもん。

「パンに使ってる酵母みたいなののことー?」

 まぁそうだね。

「中身見たらダメになっちゃう感じぃ?」

 ぬー。確認させないとダメか~。まだ発酵中だから匂いは酒っぽくないかな?

 渋々、発酵のタンクを少し開けて見せる。

 セリウスさまとルルゥが覗き込もうとしてもろに匂いを吸っちゃったみたい。
 まだ材料が凝縮したような香りだと思うけど一気に吸うと咽せるかな。

「リーシャちゃん、パンのと一緒ならお酒っぽくなると思うんだけどぉ?」

 ぎゃふん!

 自家製酵母作ってもらってるからバレバレだった!

「リーシャちゃんの酒への執着凄すぎない!?」

 セリウスさまにはお酒浸しのケーキ盗られた時にキレちゃったからめっちゃ引かれた。

「だってもうじき解禁って感じな時に種からお酒の素が取れたんですもん」

「種から!?」

 結局作り方を説明したら、
「ダンジョン潰さなかったのもラッキーだったのか」
だって。

 今回はビヤだけど次回使う予定な甘酒の木はダンジョン産だから今後のダンジョン産出に超期待出来ちゃうよね。

「父上の野生の勘ってやつかなぁー」

 野生って。
 セリウスさまが頭をカシカシかきながらもう一回タンクを覗いている。クセになったの?

「解禁の判断をするのは今までならロジャーだったけど、今はマギー師だろうー?許可取る時にこれ知ったら酒山盛りねだられるぞー」

 なんだって!!!??

 そういえば若さの秘訣は酒とか言ってた!!

「うー、解禁までにいっぱい作ります」
「リーシャちゃん、ビヤなら腐るほど手に入るから人任せにしちゃった方がいいわよぅ。魔導師にこの魔道具お願いしたらぁ?」

 やっぱりこうなった。
 酒工場おっきいの作りそうだな~。

「それは今回の出来を見て考えるつもりでした」
「まぁ出来次第なのは確かねぇ。でもリーシャちゃんなら失敗しないでしょ⭐︎」
 厚い信頼と期待が痛いよ。

「自分で飲む分は今後も作りたいですー」
「解禁されると良いわねぇ」
 不吉なフラグを立てないでほしいよ。

 本邸に戻るとお義父さまとアンゼリカさまはまだ戻ってなかったんだけど、夕刻前には帰ってきた。
 どうやら周辺をずっと肩車で走ってきたらしい。
「いやぁ、昔を思い出してついのぅ」
 幼い頃のアンゼリカさまが毎回喜んでたのを思い出して張り切っちゃったらしい。
 セリウスさまが気の毒そうにアンゼリカさまを見てた。


 夜の食事でアンゼリカさまはお部屋から出て来なくて。ルルゥがお弁当差し入れたらしい。ちょっと悪かったかな?

 今夜の食事はダンジョンから出てきたらしい謎肉をなぜかステーキサイズに切り分けてスープあんかけみたくされてびっくり。贅沢使い!
 普通に美味しいけどなんかあのカップ麺の中にささやかに入ってるのがワクワクして良いよねって思ったりする。
 
「ちょっと食い出が足りないかな~でも美味しいねー」
 若いクラウスさまには歯応え的に物足りないだろうねぇ。

 ピザに燻製イカみたいなのが載ってて、なんでも載せりゃ良いってもんじゃないなー。
 私もルルゥも厨房にいなかったから謎食材にチャレンジしたのはすごく前向きで良いけど。

「ふむ、酒造りか。グレーデンではエール作りが主流だから変わった酒が出るなら喜ばれそうだのぅ」

 セリウスさまが報告しちゃった。

「酒だったんだな」
 ジュリアスさまが苦笑してる。出来てからのお楽しみって言ったばっかりだったのに。

「解禁されたら一番に飲みたかったんですー」
「そうか、ならば解禁してもらえるようにたくさん食べないとな」

 ちょっとは増えたと思うんだけどまだダメかな?三キロは増えたと思う~。

「すぐに出来るものでもないんじゃろう?」
「一~三か月くらい?寝かせて美味しくなるのもあります」
 
 リキュールっぽいのとブランデーっぽいのじゃ期間が違うらしいけど、今作ってるの製造過程超適当で出来てるから多分全く違うよね。

「そうか。それくらいなら間に合うっじゃないかの。王都からもうまいのを取り寄せてやろうのぅ」

「!?ありがとうございます♡」

 わーい。どんなのがあるのかな。

 ジュリアスさまが笑って頭を撫でてくれたけど、セリウスさまとクラウスさまは、「そんなに!?」ってドン引き。

「まぁまぁ、旦那さまはリーシャちゃんが可愛くて仕方ないのねぇ」
 お義母さまがニコニコとケーキ、本日七ホールめを食べてる。お義母さまの方が「そんなに!?」くらいの不思議胃袋だよ。

 お酒は若さの秘訣にもなるらしいから良いじゃん!
 浴びるほどは飲まないし、楽しみにしたって良いじゃん!!










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