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二章

251話

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 本日の予定は、セリウスさまがキッチン馬車の進捗を見てって事だっったのでジュリアスさまとアンゼリカさまと共に騎士団本部の途中までご一緒です。
 団服のアンゼリカさまってば「あゝアン○レ」とかやって欲しいくらいカッコいいよね。マッチョも大好物だけど、男装の麗人も良いよね。
 サーキスさまも後ろに付いてる。

 騎士団棟は本邸から魔馬で十分くらいだけど今日はゆっくりめなので十五分。
 我が家も騎士団もグレーデン領の一番危ない魔の森に近いからね。即時対応出来るように。

「草刈りしないといけないな」
「今まで刈るほどじゃなかったしねー」
 なので土地がもったいない気がするけど騎士団までの道以外は原っぱ。本当に勿体無いけど安全第一で。
 本邸近辺は警護も含めて人手があるから庭と馬場があって多少の作物を育てられてる。
 離れの庭とかは簡易結界内だから人を置いておけるって感じ?
 アズライトの池のおかげで以前よりはぐれ魔獣とか出てこなくなってるみたい。
 
 騎士団本部に近くなったら以前に来た時に無かった使用人棟と似た建物、工場?が建ってる。
 
「じゃぁここからは別行動だな。リーシャ、お昼は一緒に食べよう」

 一旦魔馬から降りて、セリウスさまの魔馬に乗せられる。

「はいはい、無事にお届けするよ、兄上ー」
「私も工場を見てからそっちに行く」

 アンゼリカさまも工場を見たいとのことなので一緒に工場に行くことに。

「リーシャさま、魔導師たち若い者は少し生意気なので鼻っ柱を折っても良いですよ」

 サーキスさまがブラックオーラだ。若い者、何やってんだよ。勇者なの?馬鹿なの?
 サーキスさまはジュリアスさまと騎士団本部に行っちゃうの一緒じゃなくてで少しホッとしたよ。

 キッチン馬車の話が出てからそう日にち経ってないのに見に来いなんて行動が早いよね。

 馬を預けてからセリウスさまに抱っこされて工場に中に向かうと、魔導師ローブを来た五十名くらの老若男女が錬成板を使って付与作業をしてた。

「これはセリウスさま。おはようございます」

 代表っぽい年配のおじさまが挨拶に出てきた。私とアンゼリカさまを見て「そちらは?」って尋ねられたのでやっと下ろしてもらえた。

「こちらがこの魔道具工房の設立者のリーシャ・グレーデン辺境伯夫人だ。大柄の方はアンゼリカ・ジェイデン、グレーデン辺境伯騎士団大佐だ」

 一瞬、魔導師たちの集中が途切れて騒ついた。付与失敗しちゃっただろうな。
 って設立者って何!?聞いてないよ!

「恐れ入ります。私は魔道具工房の管理代表を任じられております、ヨーハ・ダインです。リーシャ夫人、我らにこのような場を与えてくださりありがとう存じます」

 めちゃくちゃ恐縮されちゃった。

 今見えてる範囲の魔導師たちは下級で魔法学を学んでいるものの魔力が低いので簡単に出来るホットプレートやカイロもどきのような大量に必要な物を作ってるらしい。

 地道な作業じゃ飽きちゃうかも。何か差し入れ持ってきた方が良かったな、もう先に教えてくれないんだから!

「あすれちっくぅ?と言うもののおかげで肩凝りなど辛い時はリフレッシュ出来ます」

 次の作業場に向かう途中に窓から見えた道具に目を止めたらダインが教えてくれた。頭脳派のはずの魔術師たちが脳筋に毒されてる!?

「こちらは普段はスケートボードなど動力のいる魔道具を中心に作っている中級魔導師たちです」

 なるほど、保有魔力差が違うんだね。ガクンと人が減って七人で仕事をしてる。

 今はキッチン馬車用に車体の部品に重力軽減や浮上の魔法陣を描き込んだり、貯水や排水など少し面倒な魔法式を使っている物を作ってるらしい。

 だいぶ苦心してるっぽいな。

 この国の魔導師はレベルの高い人が少ないので七人いるのも凄いことだ。
 学園で同年代の魔法学科の人は王宮魔術師団や王国騎士団の魔法騎士を目指す人が多いからいくら高位貴族でも簡単に人集めできない。
 だから危ない場所にある騎士団本部近くに魔道具工房を置いたのは逆に重要な人材を守るためなんだろうな。
 騎士団の兵舎も併設されてるからね。
 魔獣被害より魔道具工房の情報漏洩や魔導師たちの誘拐とか人災の方が困るってことだと思う。

「リーシャ夫人、この貯水は以前からある物ですが濾過や排水は素晴らしい発想ですね」

 ダイン卿は純粋に魔道具製作に喜びを感じてるみたい。
 王宮魔導師のようなエリート街道に入れなくても引く手数多だろうに苦労したのかしら?

「ここでは予定数をこなせば試作をしたり実験をしたりが経費で出来るのでとてもありがたいです」

 それは当たり前じゃないのかな?投資しないと新製品出来ないもん。

 説明を受けていると年若い男性が手を止めて私たちを見てた。

「授業を覗き見してた貧乏男爵の女がなんで・・・」

 ってすごく小さくて呟いたんだけど、他の人はここの制作物に熱中してて無言だし、私たちも邪魔をしないように様子を見つつだったから、しっかりはっきり聞こえちゃった。
 どうやら学園の時の魔法学か魔導術科の同窓生かな。

 ダイン卿がム○クのあれみたくなってるし、アンゼリカさまがすごい殺気出してる。

「アンゼさま、本当のことだから良いですよ」

 うん。おこぼれで授業受けてたのは確かだし。そんな女が作ったらしい工房に雇われるのはプライドが傷付くのもわかるよ。

「この工房はグレーデン家がグレーデン領、そしてレイドラアースの発展のために設立したので私のことは気になさらないで?」

 正直、名前も知らない顔も覚えてない人のことはどうでも良いや。

 バツの悪そうな顔をしてるけど、あの学園時代のわたしの状況を見た事あったらつい口に出しても仕方ない。オレオユ家は特別貧しく無かったけど私自身は自由なお金が無くて貧乏そうだったしね。

 追撃もなかったのでスルーだよ。

 他の人たちの作った部品を見せてもらったら、合格点に達してる出来だったのでヨシ!

「ダイン卿、この馬車に限らず、道具の不具合は命に関わる事も有りますから最終チェックは数名で行ってくださいね」

 あ、信用してないって言ったことになっちゃうかな?まぁ、ダブルチェックとかは普通よね?

 彼らの魔法陣は描き込みだから長持ちではなさそうだけど今のこの国の魔導師たちのレベルならこれくらいだと思う。

 労いの言葉をかけて、そういえばクッキーはアイテムボックスに入れてたと思い出したので持ってた分を放出。
 帰ったらポムたち用にまた持っておかないと。
 みなさん手を止めて喜んでくれたよ。

 工場を出て騎士団本部に向かう。

「悪かったね~。アイツは査定にチェック入れておくよ~」
 いや、うん?まぁ口に気をつけた方がいいからちょっとだけ痛い目に遭うのもやむなし?
「叩き出してやれば良かったんだ」
 アンゼリカさまはまだオコだった。

「とりあえず、キッチン馬車はジュリアスさまやセリウスさまの部隊がお使いになる分は私が作りますね」

 長持ちさせたいし、ちょっと改造したいから。

 アンゼリカさまも欲しいって言うので了承したら、
「お前の部隊、肉すら焼けんのにどうするんだ~?」
 二人がちょっとした小競り合いを始めちゃったよ。仲良いな。




 

 










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