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二章

242話 

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 夕食が二人だけなので広々とした食堂がちょっとだけ寂しいね。

 でもコックさんたちがラーメンとうどんに興奮して厨房が賑やかなので全然静かじゃない。

 鶏だしラーメンとブシラーメンとうどんっていう麺ばっかりだけど、いい匂いが充満してるのでジュリアスさまは興味津々。
 餃子とチャーハンもあるのでボリュームには問題ないはず。

 ちなみにチャーシューはさっぱり鶏チャーシューと濃厚な豚チャーシューにしてみた。
 ラーメン屋さんでめっちゃ美味しかったやつを必死に再現したけど味が足りない。あれまた食べたいな。

 分厚い濃い味チャーシューが別皿にドーンと積まれてるので好きなだけ食べれるよ。

「リーシャ、これはどう食べればいいのだ?」

 スパゲッティで混乱したのに難易度の高いラーメンだもんね。

 フォークでなので食べにくいけど麺をすくって「ズルルー」って吸ってみせる。

「ええー」って壁に待機してるセバスチャンやニーナたちもちょっと困惑してるけど、噛みながら飲み込むのはちょっとね。

「スープをまとった麺ごと吸い込む感じで食べてみてください」
「そうか」

 若干の戸惑いを感じつつ、「ズズズー」ってチャレンジしてくれた。

「!!!???」

 ものすごい勢いで各種の麺鉢を引き寄せる。

 合間にチャーシューとチャーハンも。

 そして餃子!

「!!!クッサ!うまい!」

 ニンニク臭で一回唸ってすぐにウマ!ってなった。

「この臭い野菜、滋養強壮や疲労回復にいいんですよ!元気溌剌です!!」

 またも給仕中のコックさんやメイドさんがモジモジしてる。もしかして下ネタだった!?日々の疲れに良いって話なのに!?

 ちなみにニンニク臭とかは別に〈洗浄〉で取れるから心配しないよ。食べる時はアレだけどね。

 様子を見ていたポムとティムもニックスたちが用意してくれた小さな小鉢ラーメンでこぼさないように器用に啜ると鉢に顔を突っ込んでスープを勢い良く飲んだ。
 
 正直言ってラーメン屋さんには遠く及ばないけど、まぁまぁできたほうだと思う。家庭で中華スープの素使って作る程度にはなってるはず。

 十分美味しい。

 鳥の骨やボアの骨、ホーンブルの骨で色々試して、ブシ味と混ぜたり色々やって貰って、最高の一杯をいつかニックスに極めてもらいたい。ザ・人任せ。

 ルルゥがやっちゃうかな?

 ブイヨンもコンソメもどんどん美味しくなってるからきっと麺にもこだわり出してすごいのが出てくるよね。

 うどんもコシがあって良い感じでブシで取った出汁とフリュアでいい塩梅に和風出汁になってるよ。

 私はそれぞれを数口貰ってあとはジュリアスさまが平らげてくれるので残す心配なしで色々楽しめる。

「音を出すのがマナー違反なら広めずウチでだけにしますかね?」

 貴族のマナーって美味しいものを美味しく楽しむにには面倒だよね。

「うーん、これだけ美味しいものが食べれないのは気の毒だ。公式の場でなければ良いだろう」

 まぁ立食パーティでドレス姿のご婦人たちがラーメン丼持ってズズズーって食べてたらカッコ悪いよね。しかも物凄い香水が香ってる中でニンニク餃子食べてたら殺意が沸くかも。

 私は締めに半熟の煮卵を食べる。一番最後には好きなものの味で締めたいもん。

「はぁ、これは父上たちも興奮しそうな食べ物だ。明日も麺だな」

 ニックスたちがルルゥをビックリさせたいから今日は徹夜でスープ仕込むんだろうね。

「モキュッー」ばたり。
「プキューン」バタッ。

 ポムとティムが餃子を食べてお互いにフーってやって「クッサー」って死んだふりごっこをしてる。
 唐辛子類でもやれる遊びじゃんね。

 アズライトはうどん派だったみたいでターラうどんにパバブを山盛り入れて食べてた。それだけ入れたら出汁も醤油も関係ないでしょ。
 豚チャーシューと餃子は酒のつまみで食べるとお持ち帰りにしてもらってた。池の寝床でしっぽりするようだ。うらやましかー!

「今日は大風呂でゆっくりしようか」
「はい!」

 久しぶりにお部屋のじゃなく大風呂で。
 
「しばらく忙しくなるから今のうちだ」

 アッガスのレオルカさまたちのお披露目兼披露宴や王都に行ったり、王女殿下の嫁入り前にアッガスでお相手の海洋国の王子様お出迎えパーティとか目白押しだもんね。

「アッガスは突貫工事ではあるが領民に活気が戻って来たそうだ」

 税金搾るだけ搾って暮らしはどんどん苦しくなるだけっていう状態にした前領主から、最近豊作で税収も増えてるグレーデン辺境伯領として吸収されて魔獣の脅威も減るって言う未来が明るい状況になったことはかなり喜ばれてるらしく、領民のレオルカさまへの期待は高いみたい。

 海運業が軌道に乗ればさらに暮らし向きが良くなるってことで今までは出て行くばかりだった領民が少しずつ戻って来てるそう。

 恵まれてたはずの領地でそんなに絶望されるなんてどんだけ運営出来てなかったんだ。

 農業のテコ入れも好意的に受け入れてくれて前向きに協力してくれてるそう。
 良い街になると良いな。

 そして海苔と牡蠣と真珠が獲れたら良いなぁ。タコやイカもね。魔獣海獣じゃない方向でね。


◽︎◆◽︎◆◽︎

 賄いをいただく、セバスチャンとルークは初めてのラーメンに四苦八苦している。

「相変わらず突飛な発想の食べ物ですね」
「まぁハズレがないからな」

 ズズズー
 ズルルルー

「今まで飲んでいたスープとはまた違った罪深い味だ」
「このチャーシュー?もなぜか止まらない」

 ルークは長い横髪を耳にかけてはスープをスプーンで掬う。

「うどんもまた優しい気持ちになる良い味だな」
「ホッとするな」

 ちょっと餃子をつまむ。

「「!!!!??」」

 ニンニクもどきはルルゥもよく隠し味的に使っていたがこんなにガッツリは食べたことがなかった二人は口に広がるとんでもない臭いに一瞬固まる。

 皮に包まれてほんのりしか臭ってなかったのでここまでとは思っていなかった。

「うまいけどちょっと鼻から抜ける香りが不快ですね」
「ちょっと強烈だが癖になる」

 ここにルルゥがいればもっと騒がしいんだが二人だと淡々としてしまうのでただ味を伝え合うだけで食事が進む。

「これはまた明日うるさくなりそうだな」
「明日の深夜はニックスたちは寝かせてもらえんだろうな」

 ズズズー


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