ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

文字の大きさ
上 下
232 / 765
二章

225話

しおりを挟む
 ちょっとぶりにマダム・シフォンがやってきた。
 レオルカさまとマデリーさまの婚姻式や王宮の式典?用が仕上がったそう。

 レオルカさまの現在お住まいのジェイデン伯爵(お義父さまの兄)領は大雑把にまとめるとグレーデン辺境伯領、アッガスも今後はグレーデン辺境伯領。めっちゃ広い。

 レオルカさまたちは、ジェイデン領では身近な人だけの簡易な式をして、アッガス領では領民へのお披露目も兼ねて盛大なパーティーをする。 
 お義父さまとお義母さまはジェイデンのみ、セリウスさまとクラウスさまは両方出席で、私たちはアッガスのみになる。

 王都の方はジュリアスさまと私、セリウスさま、クラウスさまでみんなで顔を売ってこいって。
 今回の式典は爵位の陞爵や降爵、叙爵、廃爵、領地の拝領や変更など、貴族の顔触れがかなり変わるので今後にために社交は必要なんだね。私うまくやれるかな?

 マダムのドレスに使われてる染色布はグレーデンの銘品になってるから宣伝しなくちゃだけどお義母さまならご夫人方に憧れられてるけど私だとねぇ~?

「うふふ~、やっぱり女の子は華やかで良いわよねぇ♡」

 お義母さまが幸せそうなので無になって着せ替え人形になるよ。
 私も綺麗なドレスやお飾りは好きだし嬉しいけど、前世の暮らしを覚えてる身としては、毎日ドレスアップな生活してる感じって不思議すぎるよねぇ。ハイクラスな人達の暮らし?いやハイクラスでも家の中じゃ楽な格好してるよね?知らんけど。
 ジャージが懐かしいね。
 この世界でキャミソールワンピで外に出るなんて絶対許されそうにないや。

 今までよりちょっとだけ大人っぽいデザインがあった。王都で着る分だって。似合うかな?

「リーシャちゃんの存在を知らなかった人たちがびっくりする仕上がりねぇ」
「ジュリアスさまより先に出会えなかった不運を嘆くことでしょう」

 随分と大袈裟な持ち上げだなぁ。馬子にも衣装くらいだよ。

「ニーナ、サラ、メル、この衣装に合う化粧と髪型を研究してね」
「「「はい!」」」

 大人っぽい髪型、どんなだろうねぇ。
 ニーナとサラとメルが超嬉しそうにマダムのところの若い子達とドレスに合う色のリップや髪型の相談をしてる~。

 お義母さまのドレスは相変わらずセクシーでエレガント。決して品が悪くならない絶妙さ。

「これをまとって、このパールパウダーを使うときっと素敵よぉ♡」
 それはもうとってもファビュラスだろうなぁ。視線釘付け!

 やっと解放されたのは夕食前。

 ヘロヘロとお部屋に戻り、庭の桜を確認するとほんの一つ二つ開花してた!

 ふおー!癒されるぅ。

 なんて言うか八重桜に近いのかも。
 
「可愛らしいお花ですね」

 ニーナも小さな花の周りにたくさんの膨らんだ蕾があるのを見て楽しみになってきたみたい。

「明日の朝には三割くらい咲いてそう」

 いつか桜の下でお酒飲めると良いな。さすがに日本酒は無理かな?

 ジュリアスさまたちの帰宅が知らされたので玄関ホールに出た。

「?」

 見知らぬ男性を連れてて、その顔はカイダール父さまっぽい?だいぶ草臥れてる感じだけど。

 ジュリアスさまとともに応接室に入って挨拶をしたら、やっぱり父さまの血縁者だった。

 シェザール・ランドルと名乗ったオジサンは元ハーボット侯爵の長男でイダルンダ、カイダールの兄だった。

「・・・」

 親戚って、伯父って、言われても一度も会ったことがないからピンとこない。
 ただイダルンダとは別系統の人間だとは感じる。父さまもこんな感じの人だったのかな。

「今更と思うかもしれないが何もしてやれなくてすまなかった」

 伯父様は、次期ハーボット侯爵だったけど父親とソリが合わず、近隣諸国を巡って薬術師として研究をしてたそう。
 侯爵家の嫡男としてはどうかと思わないでもないけど、あの年まで当主で居続けて違法薬物を扱うような親とは居られないよね。
 今回騒動を聞きつけ戻ってきたら取り調べを受けて先日まで王都にいたのだとか。

 元々継ぎたくもなかったハーボット家だったのでそのまま自分は平民になろうと申し出たら、薬術師として国内外で活躍してきて、研究成果も国に差し出したことで領地なし一代限りの男爵となったそうだ。ランドルは母方の姓。今回のことで奥様とは離縁して子供も奥様に託したのだとか。

 伯父は一族のしでかした一連の出来事の責任を取るため、ハーボット家が所有していた違法な薬草の畑を一掃し浄化する役目が与えられたそう。かなりの面積だそう。

「何か悪いことをしているだろうとわかっていたのに見て見ぬふりをしてきてしまった。カイダールのことはまさかと、そこまでは、と思いたかった」

 いわゆる見て見ぬふり、聞きたくないことは聞きたくないと過ごしてきたんだろうな。
 私だってイダルンダが何をしてるか知ってたとして諌めることも、密告することもしなかったと思う。誰に言えば良い?とかもし密告したのがバレたら?って。

 しかもカイダール父さんは消された訳で。恐ろしくてスルーするしかなかったのも仕方ないのかも。

「リーシャさまには迷惑な話だろうが、カイダールが失踪する前に私に送ってくれた書と家に残っていた肖像画を受け取って欲しい」
 
 父さまによく似た人。疲れ果てた感が気の毒だ。
 本来なら私も一族の人間として連座だったはず。陛下が私をグレーデン家と婚姻をと配慮してくださったのは格別な取り計らいだった。

 伯父は私に何かを求めることもなく、今後関わることはしないと言って去っていかれた。
 正直言って父さまに似た人と縁を断つのは寂しいけど、次期当主でありながらも事勿れできた人を受け入れることが是とは言えない。
 グレーデン家に迷惑をかけるかもしれない付き合いは出来ないから。

 私はどう反応して良いのか分からず最低限の会話しか出来なかった。

 渡されたのは父さまが自分で描いたと思われる薬草の絵と薬効が記された書をまとめたものとカイダール父さまの小さい頃、少年期の姿絵だった。

 何とも言えないでいる私の背中をジュリアスさまはずっと撫でてくれていた。




 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜

望月かれん
ファンタジー
 中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。 戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。 暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。  疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。 なんと、ぬいぐるみが喋っていた。 しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。     天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。  ※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです

珠宮さくら
ファンタジー
前世の祖母にように花に囲まれた生活を送りたかったが、その時は母にお金にもならないことはするなと言われながら成長したことで、母の言う通りにお金になる仕事に就くために大学で勉強していたが、彼女の側には常に花があった。 老後は、祖母のように暮らせたらと思っていたが、そんな日常が一変する。別の世界に子爵家の長女フィオレンティーナ・アルタヴィッラとして生まれ変わっても、前世の祖母のようになりたいという強い憧れがあったせいか、前世のことを忘れることなく転生した。前世をよく覚えている分、新しい人生を悔いなく過ごそうとする思いが、フィオレンティーナには強かった。 そのせいで、貴族らしくないことばかりをして、家族や婚約者に物凄く嫌われてしまうが、思わぬ方面には物凄く好かれていたようだ。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

処理中です...