ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

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二章

225話

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 ちょっとぶりにマダム・シフォンがやってきた。
 レオルカさまとマデリーさまの婚姻式や王宮の式典?用が仕上がったそう。

 レオルカさまの現在お住まいのジェイデン伯爵(お義父さまの兄)領は大雑把にまとめるとグレーデン辺境伯領、アッガスも今後はグレーデン辺境伯領。めっちゃ広い。

 レオルカさまたちは、ジェイデン領では身近な人だけの簡易な式をして、アッガス領では領民へのお披露目も兼ねて盛大なパーティーをする。 
 お義父さまとお義母さまはジェイデンのみ、セリウスさまとクラウスさまは両方出席で、私たちはアッガスのみになる。

 王都の方はジュリアスさまと私、セリウスさま、クラウスさまでみんなで顔を売ってこいって。
 今回の式典は爵位の陞爵や降爵、叙爵、廃爵、領地の拝領や変更など、貴族の顔触れがかなり変わるので今後にために社交は必要なんだね。私うまくやれるかな?

 マダムのドレスに使われてる染色布はグレーデンの銘品になってるから宣伝しなくちゃだけどお義母さまならご夫人方に憧れられてるけど私だとねぇ~?

「うふふ~、やっぱり女の子は華やかで良いわよねぇ♡」

 お義母さまが幸せそうなので無になって着せ替え人形になるよ。
 私も綺麗なドレスやお飾りは好きだし嬉しいけど、前世の暮らしを覚えてる身としては、毎日ドレスアップな生活してる感じって不思議すぎるよねぇ。ハイクラスな人達の暮らし?いやハイクラスでも家の中じゃ楽な格好してるよね?知らんけど。
 ジャージが懐かしいね。
 この世界でキャミソールワンピで外に出るなんて絶対許されそうにないや。

 今までよりちょっとだけ大人っぽいデザインがあった。王都で着る分だって。似合うかな?

「リーシャちゃんの存在を知らなかった人たちがびっくりする仕上がりねぇ」
「ジュリアスさまより先に出会えなかった不運を嘆くことでしょう」

 随分と大袈裟な持ち上げだなぁ。馬子にも衣装くらいだよ。

「ニーナ、サラ、メル、この衣装に合う化粧と髪型を研究してね」
「「「はい!」」」

 大人っぽい髪型、どんなだろうねぇ。
 ニーナとサラとメルが超嬉しそうにマダムのところの若い子達とドレスに合う色のリップや髪型の相談をしてる~。

 お義母さまのドレスは相変わらずセクシーでエレガント。決して品が悪くならない絶妙さ。

「これをまとって、このパールパウダーを使うときっと素敵よぉ♡」
 それはもうとってもファビュラスだろうなぁ。視線釘付け!

 やっと解放されたのは夕食前。

 ヘロヘロとお部屋に戻り、庭の桜を確認するとほんの一つ二つ開花してた!

 ふおー!癒されるぅ。

 なんて言うか八重桜に近いのかも。
 
「可愛らしいお花ですね」

 ニーナも小さな花の周りにたくさんの膨らんだ蕾があるのを見て楽しみになってきたみたい。

「明日の朝には三割くらい咲いてそう」

 いつか桜の下でお酒飲めると良いな。さすがに日本酒は無理かな?

 ジュリアスさまたちの帰宅が知らされたので玄関ホールに出た。

「?」

 見知らぬ男性を連れてて、その顔はカイダール父さまっぽい?だいぶ草臥れてる感じだけど。

 ジュリアスさまとともに応接室に入って挨拶をしたら、やっぱり父さまの血縁者だった。

 シェザール・ランドルと名乗ったオジサンは元ハーボット侯爵の長男でイダルンダ、カイダールの兄だった。

「・・・」

 親戚って、伯父って、言われても一度も会ったことがないからピンとこない。
 ただイダルンダとは別系統の人間だとは感じる。父さまもこんな感じの人だったのかな。

「今更と思うかもしれないが何もしてやれなくてすまなかった」

 伯父様は、次期ハーボット侯爵だったけど父親とソリが合わず、近隣諸国を巡って薬術師として研究をしてたそう。
 侯爵家の嫡男としてはどうかと思わないでもないけど、あの年まで当主で居続けて違法薬物を扱うような親とは居られないよね。
 今回騒動を聞きつけ戻ってきたら取り調べを受けて先日まで王都にいたのだとか。

 元々継ぎたくもなかったハーボット家だったのでそのまま自分は平民になろうと申し出たら、薬術師として国内外で活躍してきて、研究成果も国に差し出したことで領地なし一代限りの男爵となったそうだ。ランドルは母方の姓。今回のことで奥様とは離縁して子供も奥様に託したのだとか。

 伯父は一族のしでかした一連の出来事の責任を取るため、ハーボット家が所有していた違法な薬草の畑を一掃し浄化する役目が与えられたそう。かなりの面積だそう。

「何か悪いことをしているだろうとわかっていたのに見て見ぬふりをしてきてしまった。カイダールのことはまさかと、そこまでは、と思いたかった」

 いわゆる見て見ぬふり、聞きたくないことは聞きたくないと過ごしてきたんだろうな。
 私だってイダルンダが何をしてるか知ってたとして諌めることも、密告することもしなかったと思う。誰に言えば良い?とかもし密告したのがバレたら?って。

 しかもカイダール父さんは消された訳で。恐ろしくてスルーするしかなかったのも仕方ないのかも。

「リーシャさまには迷惑な話だろうが、カイダールが失踪する前に私に送ってくれた書と家に残っていた肖像画を受け取って欲しい」
 
 父さまによく似た人。疲れ果てた感が気の毒だ。
 本来なら私も一族の人間として連座だったはず。陛下が私をグレーデン家と婚姻をと配慮してくださったのは格別な取り計らいだった。

 伯父は私に何かを求めることもなく、今後関わることはしないと言って去っていかれた。
 正直言って父さまに似た人と縁を断つのは寂しいけど、次期当主でありながらも事勿れできた人を受け入れることが是とは言えない。
 グレーデン家に迷惑をかけるかもしれない付き合いは出来ないから。

 私はどう反応して良いのか分からず最低限の会話しか出来なかった。

 渡されたのは父さまが自分で描いたと思われる薬草の絵と薬効が記された書をまとめたものとカイダール父さまの小さい頃、少年期の姿絵だった。

 何とも言えないでいる私の背中をジュリアスさまはずっと撫でてくれていた。




 
 
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