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二章

223話

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 食後にお部屋に戻って窓を開けた。
 桜っぽい木はどうやら開花まで数日ってことらしい。そりゃきっちり開花直前とは行かないかも?
 蕾が膨らんでるのを窓から眺めて悦に入る。

「もう一つを植えに行くか?」

 夜の池デート再び!

「二人きりで行こう」

 そう言って私を抱き上げると窓から飛び降りて。
 普通に部屋から出るとアランやセバスチャンがすぐ見つけちゃうもんね。でも護衛はいいのかなぁ?ジュリアスさまは強いから良いのかも?

 窓から飛ぶなんてもちろん始めてなのでびっくりしたけど、音も無く静かに着地して軽やかに走った。

 侍従さんや護衛さんにバレたら大変だから声出さないようにジュリアスさまの首に掴まって。

 庭を突き抜けて門塀を飛び越して外にでた。

「誰にも見つからなかったですねぇ」

 ホッとしたもののこれでいいのか?とも思う。

「裏側はあまり侵入の不安がないから人を最低限しか置いてない。魔獣対策は結界でしてるしな」

 まぁ空き地となぜか突然の池(巨大)、奥には危険度MAXな魔の森だしね。

「少し歩くか?」

 ジュリアスさまが降ろしてくれて手を繋いでの夜のお散歩だ。

 私の歩調に合わせてゆっくりと歩く。
 一応池までの道を整えてあるので石に蹴躓くとかのイベントもない。

 灯は月と星の光って言うロマンティックさ。左右見渡すと荒れがちな原っぱだけどね。流石に昼ほど見渡せないから気にならないよ。

「こうしたゆっくりとした時間は若い頃は持とうとも思わなかったな」

 私が転けないようふらつかないように気を使って背をかがめがちに歩いてるジュリアスさまの表情は影になっててあまりよく見えないけど声がひどく優しい。

「若い頃って今も若いですよ?」
「リーシャから見たらオジサンだろう?」

 うーん?中身22歳、日本人、マッチョ好きな私にとってはドストライクなんだけどな。彫りの深いワイルドイケメン、ガチマッチョは高嶺の花ですよ!

「私の好みは包容力があって身体が逞しくて、私にだけ優しくてたまに可愛いジュリアスさまなのでオジサンとか思わないです」

 なんかはっきり言わないと勘違いして落ち込まれる気がしたので恥ずかしながら告白みたいなセリフになっちゃった。
  
 もしかしたらずっと歳の差気にしてるのかな?
 十歳前後なんて普通だよねぇ。タメとかより年上が好きだし。

「可愛い・・・?」

 不思議そうに首を傾げてる。

「そこは私だけ知ってれば良いので気にしなくて良いです」

 直されちゃったりしたら嫌だもん。

「俺も可愛くて面白くて一生懸命でたまに不思議なほど大人びているリーシャが好みだ」
 
 恥じらいを混ぜた声音が耳元で吐息を洩らす。
 ジュリアスさまの本音はあまり聞く機会がないので嬉しい。握られた手が少し熱い。

 ちょっと照れくさい空気が漂う中、池に到着。
 今日も星空が水面に映って綺麗。

 ボートを停めてるところから少し離れたところに桜っぽい木の種を植える。
 ポムがいないからすぐに成長させれないけど今度お願いしよう。

「この星空と水面と花が咲いてる景色、きっと最高ですよ!」
「そうか、楽しみだな」

 アズライトの寝床で見た精霊の光もすごかったけど、夜空に桜(もどき)の花びらが舞う様はきっと素敵。

「そうですか。それは私もとても楽しみです」

「?」

 二人きりしかいないはずなのに全く違う声が後ろからする。

 振り返ってみたらセバスチャンが立ってた。サーキスさまが際立ってて気が付かなかったけど、セバスチャンもジュリアスさまをお仕事に引っ張っていける人なんだった。
 めっちゃ笑顔で冷気を漂わせてるよ。

「たまには散歩に出るくらい良いだろう」

 ジュリアスさまはちょっと不機嫌になっちゃった。

「あなた一人なら別に気にしませんが若奥様を連れて報告無しで、しかも護衛無しでお出かけされるのはいけません」

 ジュリアスさまだけなら良いんだ。

「俺がいて護衛は付かなくても問題はないだろう」
 
 基本的にお義父さまもセリウスさまもクラウスさまも護衛はいないよね。身軽に行動してる気がする。

「報告を入れてくだされば問題はないですね」
 普段は静かに控えてるセバスチャンがめっちゃ怒ってる。

「報告なんか入れたら誰か着いてくるだろう」

 多分二人きりは無理だね。

「・・・女っ気無しだった貴方からそんな言葉が聞ける日が来るとは」

 何気に失礼をぶっ込んできたー!

「もう戻る。お前は先に歩け」
 
「・・・良いですけど、大奥様が待ってらっしゃいますからね」

 おおう。いきなりいなくて探されちゃったんだね。もう寝るだけだからバレないと思ってたよう。

 ゆっくり歩いてる場合じゃないので再び抱っこで戻ることになった。 

 せっかくのラブな時間をばっさり終わらされちゃった。
 でもすごく良い時間だった。
 常にニーナやアラン、ジェイク、もしくはルルゥやサーキスさまが付いてるから、部屋以外で二人きりって中々無いもん。

 セバスチャンが言うことはもっともなんだけど、今日って言う日は一生大事な思い出になると思う。

 屋敷に戻れば、お義母さまがお茶を飲みつつ待ってた。

「デートは別に良いと思うのよ。二人きりでいたいのも良いことよ。でも報告はしなくちゃダメよぅ」

 ニコニコしながらケーキを食べるお義母さまに注意を受ける。
 食後の食後・・・。

「今後は報告だけはしなさい。行き先も知らずにいなくなられたら心配するのだから」

 門限破って怒られたような気持ち。

「申し訳なかった」
「ごめんなさい」

 心配かけちゃったのは悪いから、反省はします。

 部屋に戻って一緒にお風呂に入ったら、

「悪かったな」

 って謝られちゃった。

「止めなかったので共犯です」

 誘ってもらって連れて行ってもらって嬉しかったから。

「二人きりの思い出です」

 次から行く時は誰かついてるだろうしね。

 
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