ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

文字の大きさ
上 下
224 / 764
二章

218話

しおりを挟む
 私の足取りはボーナスが出なかったサラリーマンより重い・・・なんてことはなく、いつも通りジェイクの抱っこで帰宅なのです。

 ポーションは五本分、あとはアズライト達が全部飲んでくれた。確か三十本は取れたはずだから二十五本分くらい飲んでくれた。
 普通に特級、最上級作ったら一回で一、二本らしいから改めてとんでもない。
 入手困難な素材使うより魔力ゴリ押しの方が量が出来ちゃう?古代竜の涙とか無理・・・。
 あれ?

 (アズライト、ちょっと涙くれない?)
『いきなり何を言うのかの?』
 (確か極上級ポーションの素材に古代竜の涙ってのがあったよ)
『それは不可能な話だの、我のような偉大な古代竜が涙を流すことなどそうそうあるものか。担がれたんじゃないのかの?』
 (だよね?だって焰獄鳥の肝ってのも眉唾だよね)
『燃え盛る火山にいる魔獣を捕獲するのも捌くのも人間には無理じゃの。しかも死んだら炎になって消えるから内臓どころか骨も残らぬ』
 (作れない物を依頼されて腹立ち紛れに入手出来ないものを書き出した感じだね)

 だとすると超級も嘘っぽいなぁ。まぁ作る気はないけど。

 現実逃避で現実的ではないことを考えてたら屋敷に着いちゃった。

 そろそろジュリアスさま達が帰ってくる時間なので玄関ホールで待機しようと思ったら、ディディエの事思い出した。
 いきなり成長した事はルルゥに報告しないとダメだよね。

「アラン、ルルゥと話をしなきゃ」
「そうですね」

 流石に夕食の準備中だから後の方がいいかな?

「あらなぁに?内緒話かしらぁ?」

 ルルゥ、食べ物絡みじゃなくても鼻がいいのか。

「あのね。ディディエが成長しちゃった」
「あらぁ?雛なんだから育つのはいい事じゃない?」
 ニーナが抱っこしていたディディエを渡すとちょっと固まった。

 まぁそうなるよね。サイズはあんまり変わってないけど羽毛が消えちゃってミニトカゲの羽がでかいバージョン。ぽっこりしてたお腹は羽毛だったのかな。
 鳥の部分どこだ?普通にドラゴンじゃ?みたいなさ。
 竜鳥って鳥ってついてるけど口は嘴じゃないし、鳥って部分が羽ついてるってことだけ。あとサイズがこのくらいで落ち着いちゃうって言う。謎生物。
 今回のレベルアップ?で羽毛消えてより恐竜チックな怪獣チックな仕上がりに。

「まぁ毛ないわねぇ、つんつるてんねぇ」

 禿げたみたいに言うのはやめて差し上げて下さい。

「ピキャー」

 ルルゥを見つめて嬉しそうにスリスリ。ちゃんと主従なのねぇ。

 ほっこりしてたんだけど、私の処刑台行きは刻々と近づいてる。

 お義母さまもお迎えに出てきて、「リーシャちゃんおかえり」ってハグしてくれた。

 門の方から声がして気配が近付いてくるよ。
 BGMはサメ映画のアレ。

 デーデンデーデンデーデン。 
 シャークが来るよぉ~!

 デーデデデデデン!

 侍従が扉を開けて迎え入れる。

 (きゃーーーー!!ヘルプミー!!オーマイガ!オーマイガ!)

 悪ノリしました。
 ジュリアスさまの顔を見てちょっと落ち着きました。

「ジュリアスさま、おかえりなさい」
「顔色が悪いな?どうした?」

 些細な顔色にも気がついてくれる素敵な旦那さま。

 その旦那さまの後ろには・・・。

「何かやらかしましたか?」

 ヒィー!!やっぱり無理ー。
 綺麗な弧を描いたような微笑みでサーキスさまが近寄ってきた。

「早く楽になりましょうね」

 その楽は極楽行きでしょうか?

 居間に連行されて私はジュリアスさまの横にちょんと座って。
 蛇に睨まれたカエルの気分。
 ルルゥもディディエのことがあるから話を聞きについて来てる。

 アランとジェイクが状況を説明してくれてた。

「はぁ。なぜ下級が特急になるのか全くわかりませんが、わざとじゃないのはわかりました」
 サーキスさま、ポーションを手に取って光に透かして見て、頭痛が痛いみたいになってる。それ、飲んでもいいですよ?

「そしてこれを山ほど飲んだと・・・」

 私にくっついていたアズライトをジロリと見る。

「これ一本でオークションに出しますとおそらく最低白金貨一枚はしますよ」
 白金貨は確か日本円だと一千万円?
 一般的な庶民の年収は銀貨六十枚くらい・・・。
 銀貨は一万円相当で金貨は百万だっけ。

 誰が買うんだ。

 アズライト達が飲んだの白金貨二十五枚分!すっご!めっちゃ年代物のワインたくさん飲めた!!

 特級ってそんな高いんだ。

「リーシャさま、これは騎士団が一本白金貨一枚で五本引き取らせて頂きたい」
「え?お金要らないですよ」
「ダメです。これだけのものを無償で出しては世の理が崩れます。上乗せはできませんが口座に入金しておきますね」

 クソ真面目か。たまたま出来ちゃっただけなのに。

「ところでこんなすごい物を作って貴方の体調は大丈夫なのですか?」

「魔力使ってスッキリですよ?」

「それは良かったですね」
 
 あれ?なんか怒ってないっぽい。

「ですがくれぐれも外部に特級ポーションが作れるなんて知られてはいけません。誘拐され監禁されポーション製造機にされますよ」

 うげ。そんなのは嫌なのでもう作らないよ。

「しかしヘドロポーションが出来なくなってしまいましたか。困りましたね。便利でしたのに」

 あれ?一体何に使ってたんだろう?
 サーキスさまがちょっと悪い笑みをしたよ。

「何かいいアイデアがあると良いのですが」

 それは私も元クソ親父のためにどうにかしたいよ。

「ポム達がレベルアップしたのは困ったわねぇ。食い逃げが今までより上手くなっちゃいそうねぇ」

 ルルゥがそんなことを呟いたので気が抜けて解散になった。
 断頭台はとりあえず回避だ。

 ジュリアスさまとお部屋で着替えてると、
「魔力が不安定じゃなくなったから急変の心配が無いからな。ルークも安心したんだろう」って。
 どんだけか弱い生き物だったの私・・・。

 夕食後にルルゥに丸投げしといた栗が出てきた。

 マロングラッセが出来たみたい。
 お酒で漬けたのとノーマルの。
 私はもちろんお酒の方。

 ルルゥがちゃんと栗に合うブランデーを使ったみたい。
 おいしー。
 噛み締めてる間にどんどんなくなっていく。

「これはいいな」
 ジュリアスさまもお酒の方気に入ったみたい。

 ポム達にはノーマルな方でアズライトはお酒の方。

「あらあら、これはすぐ無くなりそうねぇ」

「「「キュ!?」」」

 ほっぺにいっぱい蓄えてたポムとティムがガーンとなってから外に行っちゃった。

『池の島に行くのであろうの』
 ああ、魔法で育てて回収するのか。

「ルルゥ、ポム達が池にグ◯コ採りに行くみたい」
「あらぁそれは素敵ね☆」

 今までよりレベルが上がったからさらに豊作かも?

「よし!僕も池に行く~」
「ワシも行こうかの」
 クラウスさまとお義父さまが張り切って出て行っちゃった。

『やれやれ、今夜は騒がしかろうの』

 アズライトは食べるだけ食べて池に行っちゃった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

聖女転生? だが断る

日村透
恋愛
生まれ変わったら、勝ち逃げ確定の悪役聖女になっていた―――  形ばかりと思っていた聖女召喚の儀式で、本当に異世界の少女が訪れてしまった。 それがきっかけで聖女セレスティーヌは思い出す。 この世界はどうも、前世の母親が書いた恋愛小説の世界ではないか。 しかも自分は、本物の聖女をいじめて陥れる悪役聖女に転生してしまったらしい。 若くして生涯を終えるものの、断罪されることなく悠々自適に暮らし、苦しみのない最期を迎えるのだが…… 本当にそうだろうか?  「怪しいですわね。話がうますぎですわ」 何やらあの召喚聖女も怪しい臭いがプンプンする。 セレスティーヌは逃亡を決意した。

ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。 本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。 …………私も消えることができるかな。 私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。 私は、邪魔な子だから。 私は、いらない子だから。 だからきっと、誰も悲しまない。 どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。 そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。 異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。 ☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。 彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...