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二章

208話

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 途中途中、止まるためゆっくり馬車を走らせる。
 通るついでに領地の視察と治安の確認をしてるのだ。

 人の集まってる場所には降りて挨拶。
 ジュリアスさまは領民たちに尊敬、敬愛されてるのでどこでも大歓声で。
 この辺りの人たちは婚姻式の時街道まで来てくれたそうで私のことも温かく迎えてくれた。

「おかげさまで畑が良くなりました」
「奥様、たくさん稼げるようになりました」
「暮らしやすくなりました」

 なんて声をかけてもらえる。毎度思うんだけど、以前を知らないから私のおかげって言うのがわからない。
 私ってば思いつきで自分のために行動して、気がついたらお義父さまたちが物事をおっきく動かしてるから自分で何かしたとか思わないしね。

 答えようがないのでニコニコ笑って頷く。お義母さまが困った時は柔らかく笑って聞いてますってポーズをしておけば良いって教えてくれたから。

「お嫁さまは可愛いねぇ」
「綺麗ねぇ」
 10歳前後の子供たちが遠巻きにして私を憧れの目で見てくれる。
 イメージを壊さないように、日本のやんごとなき一族のお手振りを真似して微笑んでみる。気品!!気品を表現!!

「「わぁ!!」」
 喜んでいただけたので正解?

 しかし大きいね。子供達私と同じくらいにサイズに見えるよ。しかも肩幅がしっかりしてるからすくすく大きく育つと思う。

 ゆっくりは出来ないので少し挨拶するだけなのに皆さん泣くほど喜んでくれて。

 採れたて野菜をいっぱいいただいて。
 代わりと言ってはなんだけど、道中で狩ったコカトリスの肉を小分けに渡してた。

 多分ここらの人たちも狩りが得意だしお肉も困らないだろうけど、コカトリスは滅多に出て来ないそうで喜ばれた。
 ジューシーで美味しいもんね。
 足の部分もプルプルで美味しいんだよ。巨体だから足にもしっかり肉ついてるんだ。


 寄れるところは寄ったので後一時間と言ってた距離は三時間かかった。
 まぁ無意味な時間じゃないし、私自身には仕事の予定も無いので気にならないけど。

 寄る場所がなくなったので馬車は少しスピードを出した。
 
 二週間くらい離れてただけなのにホッとしてる。

 夕刻少し前にやっとグレーデン家の門が見えて、帰ってきたんだなって思える。

 門から玄関までが遠いのが玉に瑕だけど。流石に敷地内を馬車で疾走しないからね。

 玄関脇の馬車寄せでジュリアスさまに抱かれたまま降りたら。

 久しぶりに布の弾丸飛んできた。

 ジュリアスさまごとだから遠慮がない。

「っぐぅ!」

 やっぱりお義母さまはすごい。ジュリアスさまに呻き声出させるのだから。
 足で踏ん張ったから靴裏がザリィって音出したよ。
 なんだっけ。お相撲さんのぶつかり稽古?みたいな迫力で飛んでくるんだもの。
 例えるならラグビーの方がいい?どっちも詳しくないからなぁ。

 私に衝撃が来ないようにジュリアスさまが右腕で空間を作ってくれたけど結構な体当たりでした。

「母上、ただいま帰りました」
 気を取り直したジュリアスさまが帰宅の挨拶をした。
「ええ、おかえりなさい。ジュリアス、リーシャちゃん」
 お義母さまが私にもちょっハグしてくれた。
「長旅疲れたでしょう。お風呂に入って着替えていらっしゃい」

 話している間に馬車は撤収でルルゥやサーキスさまたちも屋敷に行っちゃった。
 ニーナとアラン、ジェイクだけ控えててくれたけど疲れてるのは一緒だからひとまず休んでもらった。

 私とジュリアスさまは早速お風呂に向かった。
 マーベルハント家の猫足風呂は置いといて、宿のお風呂も小さめだったから、久しぶりにゆっくりまったり出来る。

 アズライトとポムとティムもなぜか一緒に入ってる。
 ポムとティムは湯船だと溺れちゃうからおしゃれなタライ?にお湯を入れて浸かってる。

「プキュッキュ」
「モッキュンキュン」

 なんか可愛いがすぎるぞ。

 アズライトは湯船をスイスイっと泳いでる。

『身に染みるの』

 私もジュリアスさまの膝抱っこ状態でぬくぬく。
 お風呂はいいねぇ。

 露天風呂入りたいけど、近場の従者さんたちがよく行く露天風呂に領主の家族が頻繁に行くと寛げないよね。
 作るにしても裏庭がアスレチックで離れは訓練場があって。これ以上元気なオッサンたちがテンションあがっちゃう物を敷地内に作るのはいかがなものか。

「リーシャ?」
 考え事しちゃって首をカクカクしてたらしくジュリアスさまが顔を覗き込んできた。
「ちょっと寝そうになってました」

 迂闊に露天風呂のことを言うとすぐに手配されちゃうからね。

 お風呂から出るとニーナが着替えを済ませて待機してくれた。

「実家で十分お休みを頂きましたから」
 
 有給休暇もっと貰ってもいいくらい働いてもらってるのに。

 着替えだけ手伝ってもらってポムたちを任せた。

 私はジュリアスさまと髪の乾かし合いをして。簡単に三つ編みおさげにしてみた。

「じゃぁ食堂に行こうか」

 食堂にはすでにお義父さまとお義母さま、クラウスさまが席についてて。

「おかえり」
「兄上、リーシャちゃん、おかえりなさい」

 今日の食事は主にニックスが担当しているらしい。

 ガスパチョみたいなのが出てきた。
 トマトソースを色々いじってたらできたらしい。

 なんか探究心に脱帽。

 
 お肉はルルゥ仕込みのハーブとスパイスをふんだんに使ったソースを使ったステーキ。多分牛系。
 蛇系っぽいのも出てたけど痺れる系だったのでご遠慮。

 デザートもチーズを数種類使った濃厚チーズケーキで。

 食後には道中のことやマーベルハントのことも話したけど、やっぱりダンジョンが出来たってのが一番盛り上がった。

 クラウスさまが行きたいってジュリアスさまに頼んでたけど調査依頼で動いてるからセリウスさまが帰還してからしかダメだと返した。クラウスさまはしばらくブーブー言っていた。
「ちぇー、やっぱりマーベルハント領に行くの譲らなきゃ良かったよー」
 譲るも何も順番で決まったから最初からクラウスさまの予定じゃなかったよね。
 
 今夜は溜まった報告書に目を通すとジュリアスさまが執務室に籠るので独りになった。

 なのでルルゥにモンブランと和菓子の栗きんとんをお願い。
 栗ぜんざいも欲しいけどまた今度。

 モンブランは茹でて潰して砂糖と生クリーム、きんとんは茹でて潰して砂糖。
 砂糖を混ぜる時は湯煎だったかな。

 ニックスとベンには甘栗で味見してもらって栗の美味しさを布教。

 どうやらグ○コって知らないから改名しちゃって教えようと思ったらルルゥが普通に、
「グ○コっていうのよぉ~」
って言っちゃった。
 くそーーー。
 もうキャラメル作ろかな。

 ニックスとベンがイガをハイスピードで取り外してザルに栗を入れてるので私はマイフライパンを出して砂糖と生クリームとバターを煮詰めて混ぜ混ぜ。

「なぁに?プリンに使うのと違うわねぇ?」

 生キャラメル。硬いのはわかんないけど生キャラメルは流行った時に試してみたからイケる。

 ずっと混ぜ混ぜしながら、栗を洗ったら茹でてってお願い。

 茹で上がったら皮と渋皮を丁寧に剥いてもらって。剥いたらすり潰すように伝える。

 私は生キャラメルをバットに入れてゆっくり氷魔法で冷やす。
 魔力の通りが良くなったから細かい調整が出来たよ。

 バットをひっくり返してパカ~っと、いやガガンとぶつけて取り出して。
 切り分けてルルゥたちにあげた。

 グ○コじゃなくて花畑だね。まぁ仕方なし。

「まぁ!飴とは違うのねぇ」

ってお義母さまがちゃっかり混ざってしっかり味見してた。

「そっちは何作ってるの?」

 潰し終わったので砂糖混ぜてから粗布で丸めてもらったら栗きんとん~。

 砂糖と生クリーム混ぜてモンブラン~。

 モンブランの土台忘れてた。
 タルトもスポンジも好きだけどマカロンも良いのよねぇ。 
 今夜はもうモンブランクリームをパンに挟んで食べてもらおう。
 
 いつに間にかお義父さまとクラウスさまもいた。

「グ○コ、これは至高!グレーデンでも採れれば良いんじゃがのう」

 ポムに一応明日頼んでみる。根付かなかったらがっかりだからまだ報告はしないよ。

「この実、実家の領地の森にあった気がするわねぇ」

 お義母さまがポロリと呟いた。
 お義母さまは投げたり落とし穴に仕込んだりしてないのね!

「早速人をやって確認してもらおう!」

 お義父さまとクラウスさまはしっかり自分の分を確保して出て行った。

「うふふ、いっぱい確保できると良いわねぇ」

 お義母さまはさっき仕上がった分のほとんどを皿に盛って出て行った。

「・・・」

「大奥様ったら気に入っちゃったのね!リーシャちゃん、作り方はわかったからまた明日たっぷり作るわねぇ」

 ルルゥがそう言ったのでフルーツタルトの時のフルーツの代わりにモンブランを盛ってってお願いした。
 あと栗ぜんざいもね。ぜんざいは以前作ってもらったから栗入れるだけ。

「了解よぅ」

 そんな会話をしてたらジュリアスさまが覗いてきた。
 せっかくなので少し残ってた分をジュリアスさまに食べてもらう。

「ん、甘くてうまいな」

 ジュリアスさまは甘すぎなのはそこまで好きじゃないから、この中では栗きんとんが気に入ったみたい。

「もう終わったんですか?」
「あとは明日だ」

 さすがに今日ぐらい慣れたベッドでゆっくり寝たいよね。

「あらあらぁ、おやすみなさぁい」

 ルルゥにニヤつかれつつ、ジュリアスさまに抱っこされてお部屋に戻った。




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