上 下
208 / 710
二章

202話

しおりを挟む
 銀髪ロン毛のお祖母様の兄!
 兄ってほどお年を召してると思えない若々しさ!!
 伯父様やお義父さまくらいに見えるよ!?

 この場に揃っている親族を見回してため息を吐く。

「アレは本当に詰めが甘い」

 お祖母様のことかな?だとしたら確かに!!って思うしかないよ。ネイマーシュに関わらないようにって言ってたのに〈ゲート〉?とやらが開いたのはお祖母様のせいだろう??

「あのぅ、クリスタニア公爵、ネイマーシュ国から転移を?」

 カンガリー教授が恐る恐ると言った感じで質問する。

 あ!転移陣は行き来するお互いの場所を登録して設置するから、ここにネイマーシュと行き来出来る魔法陣はないはず。

「お前は・・・見たことがあるな。転移陣とは似て非なるものだ。セラーナの空間魔法の繋がりを移動してきたからな」

 どっちにしてもすごい魔力が必要だし、長距離転移だからとんでもないことだよ。

 大伯父は大したことではないとあっさり答えてくれる。
 やっぱりお祖母様のミスー!!!

「どこぞのスレイプニルの骨が妹をたぶらかしてから一度も会うことが出来なかったからな。セラーナの子たちよ、孫たちよ。私はそなたたちに会えて嬉しい」

 馬の骨っぽいことわざあるんだ。スレイプニルって!!

 お祖父様がめちゃくちゃ汗流してる。

「そこの小さき娘、近う寄れ」

 え!?私?従兄弟たちじゃダメ?

 大伯父は私の目を覗き込み、逆に私は大伯父の瞳をしっかり見れる。

 銀に煌めく瞳が魔力を帯て薄い水色が揺らめく。
 私の体がピリッと電気が走った。〈鑑定〉されちゃったかも?

「クリスタニア公爵、それはマナー違反ですよ!」

 リックさまが私と大伯父の間に割って入り抗議してくれた。

「お前も見たことがあるな」
 大伯父が手を振り払っただけでリックさまが壁際まで飛ばされた。

「心配せずとも魔力の濁りと滞りを解消するだけだ」

 濁り?滞り!?

「セラーナは天才肌でなんでもできてしまった分、細かい部分がおざなりだ」

 大伯父の手が胸元に来て私の体内に自分の魔力を通していく。

「我らに引き合わせたくなかったのだろうが、無理を通せば弊害が出るのは当たり前だ」

 さっきお祖母様に封印を解かれた時よりずっと体の深い部分、精神?まで魔力が行き渡るようなそんな感覚を受ける。

「そこのお前も」

 伯父に手を翳し、同じように魔力を流したみたい。

「お前はあまり不便はなさそうだな。セラーナの意地のせいで簡単に施せる処置が複雑になってしまった」

 何のことかイマイチわからないけど、駆け落ちのせいで大伯父になら簡単に助けてもらえたのにお願いできなかったってことかな!?

「その上早くに死んでしまって嘆かわしいことだ」

 言い回しはツンツンだけど悔やんでて悲しいって感じっぽい。

 伯父様もなんだかスッキリした面持ちだ。お祖母様に似てる私たちは高魔力で大半の魔力が封印されてたってこと?

「この娘も魔力に翻弄されたのか」

 お母さまの棺に手を翳して〈鑑定〉したようだ。
 レイドラアースの魔素では足りなくて早くに亡くなったと言いたいの?

「・・・セラーナは無茶をした。孫子にまで影響するとは想いもしなかっただろうが」

 深い深い溜息を吐く。

“そなたは《稀人》なのであろう”

 大伯父は突然、古代神聖語で話しかけてきた。

“以前にも言われたことがありますが《稀人》ってなんですか?”

“この世界ではない世界の記憶を持つ者のことだ”

 私、確実に《稀人》じゃん!

“その魔力量と無属性、魂の色は特徴的だ”

 よくわからないけどそうなんだ。

“私をネイマーシュに連れ帰りますか?”

 ネイマーシュに見つかれば利用されるって言ってた。

“いや、無理に連れかえればセラーナの二の舞になる。まして我が血脈を王家の都合の良い駒にされ、好きにさせるのは業腹だ”

 おや?自国の王族嫌い!?

“稀人は王家に嫁ぐものですか?”
 
“稀人の知識や高魔力、国のためには手に入れたい存在だ。稀人を見つければ国への報告義務がある。だがそなたはレイドラアースの者で、セラーナは国から離れておるから義務の範囲ではない”

 とりあえず良かった!?

“私はもう帰る。用があればセラーナの文箱に呼びかけるがいい”

 大伯父はそのまま消えてしまった。自由人だな!?せめてお祖父様に挨拶・・・あ!王様いるのに華麗にスルーだった!!

「・・・リーシャ様。古代神聖語で会話が出来るんですね」

 リックさまに言われて気がついたけど、魔法学習ってたら多少は学んでるよね。

「ところどころの単語しかわからんじゃったわい」

 教授もそうだし、ジョシュー先生もいるんだよ。
 マーベルハント家の人たちも叡智とか言われてるんだから聞けちゃったかも。
 大伯父もお祖母様と一緒で詰めが甘いようだ。


「えっと、私の魔力の不安定さを解消してくれて、お祖母様とお母さまの死に哀悼の念を伝えられました。あとネイマーシュに連れて行かれずに済みました」

 だいぶ端折ったけど。

「私も不快感が解消されました」
 伯父様は胸に手を当てて嬉しそうに確認してる。
 
「お前にも影響があったのか!?」
 お祖父様がびっくりした。伯父様は家族に言ってなかったんだね。

「母上に近しい魔力はこの国では少し生きにくかったようです」

 お祖母様に施されていた封印を理解してたんだ。

 いつまでも小寒い霊廟にいるわけにもいかないので屋敷に戻ることになった。

 司祭さまたちは帰られて、王様ご一行は残るそうだ。暇か!?いやわざわざ来てくれた気持ちは大変有り難いんだけどね。

「リーシャ、もう魔力の不安定さが無くなったんだな。良かった」

 屋敷に戻る間にジュリアスさまが抱っこしてくれてそっとこめかみにキスを落としてくれた。













しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

三回も婚約破棄された小リス令嬢は黒豹騎士に睨まれる~実は溺愛されてるようですが怖すぎて気づきません~

鳥花風星
恋愛
常に何かを食べていなければ魔力が枯渇してしまい命も危うい令嬢ヴィオラ。小柄でいつも両頬に食べ物を詰めこみモグモグと食べてばかりいるのでついたあだ名が「小リス令嬢」だった。 大食いのせいで三度も婚約破棄されてしまい家族にも疎まれるヴィオラは、ひょんなことからとある騎士に縁談を申し込まれる。 見た目は申し分ないのに全身黒づくめの服装でいつも無表情。手足が長く戦いの際にとても俊敏なことからついたあだ名が「黒豹騎士」だ。 黒豹に睨まれ怯える小リスだったが、どうやら睨まれているわけではないようで…? 対照的な二人が距離を縮めていくハッピーエンドストーリー。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

もふきゅな
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

愛なんてどこにもないと知っている

紫楼
恋愛
 私は親の選んだ相手と政略結婚をさせられた。  相手には長年の恋人がいて婚約時から全てを諦め、貴族の娘として割り切った。  白い結婚でも社交界でどんなに噂されてもどうでも良い。  結局は追い出されて、家に帰された。  両親には叱られ、兄にはため息を吐かれる。  一年もしないうちに再婚を命じられた。  彼は兄の親友で、兄が私の初恋だと勘違いした人。  私は何も期待できないことを知っている。  彼は私を愛さない。 主人公以外が愛や恋に迷走して暴走しているので、主人公は最後の方しか、トキメキがないです。  作者の脳内の世界観なので現実世界の法律や常識とは重ねないでお読むください。  誤字脱字は多いと思われますので、先にごめんなさい。 他サイトにも載せています。

【書籍化進行中】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ  前世の記憶がうっすら残る私が転生したのは、貧乏伯爵家の長女。父親に頼まれ、公爵家の圧力と財力に負けた我が家は私を売った。  悲壮感漂う状況のようだが、契約婚は悪くない。実家の借金を返し、可愛い継子を愛でながら、旦那様は元気で留守が最高! と日常を謳歌する。旦那様に放置された妻ですが、息子や使用人と快適ライフを追求する。  逞しく生きる私に、旦那様が距離を詰めてきて? 本気の恋愛や溺愛はお断りです!!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2024/09/07……カクヨム、恋愛週間 4位 2024/09/02……小説家になろう、総合連載 2位 2024/09/02……小説家になろう、週間恋愛 2位 2024/08/28……小説家になろう、日間恋愛連載 1位 2024/08/24……アルファポリス 女性向けHOT 8位 2024/08/16……エブリスタ 恋愛ファンタジー 1位 2024/08/14……連載開始

処理中です...