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二章

201話

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 葬送の儀、当日。 
 快晴。

 喪服は黒じゃなくて白のローブだった。喪主と親族だけ白で他の参列者は派手すぎない礼服。

 みんなで霊廟に向かった。

 そして驚愕。

 陛下とリックさまとアーレンお兄さんが一緒に現れた。

 お母さまってとってもVIPなの?

 移動なので親戚や友人方は呼んでないそうなのに王様来ちゃうって。

 リックさまが教授に〈転移〉の魔道具を預けてお祖父様の許可を取って設置したそう。

 葬儀が決まってから参加は確定してたんだね。

 霊廟前に司祭さまが三人待機しててみんなで整列して司祭さまの挨拶を聞く。

 そして霊廟の扉が開かれ、中に入る。
 中は薄暗くひんやり。先頭を歩く司祭さまが進むと壁の燭台が順番にほのかに灯っていく。

 棺が運ばれてお祖母様の隣に設置される。

 まずは司祭さまが神に、「あなたの子があなたの元の還える」と祈りを捧げて葬送の儀が開始された。
 司祭さまの言葉と二人の司祭さまの楽器を奏でてるような不思議な音階の祈りで霊廟に神聖な気配が漂い始めた。

 棺は元の棺を開けるわけにはいかないので新たな棺に中に元の棺を納めるという形になっているそう。
 棺の中に遺品を入れることができないので棺の上に箱を置く形になったそう。

「マーベルハントの先祖たちよ、あなた方の血筋を未来に繋いだ娘ナタリアを迎え入れ、安らかなる眠りに導きたまえ」

 そうして遺品や最後の贈り物をみんなで納める。

 お祖父様は宝石箱、伯父様は思い出の髪飾り、伯母様はお揃いのブレスレット・・・。
 それぞれの想いの詰まった品が納められた。
 私はお父さまの最後の想いが残された魔道具と家族の絵、お母さまがいつも使っていた櫛、日記、そしてリーシャの髪。
 この場で一房切ろうとナイフを出したらジュリアスさまがバッと手を掴んで止めた。
「何を!?」
「私の髪も一房、一緒に入れたいのです」
「「「「?」」」」
 そんな風習はないのでみんな戸惑ってる。

「・・・一房だな?」
 ジュリアスさまは怪訝そうだけどやらせてくれるらしい。
 私は左サイドの髪を顎下あたりで一房切り落として軽く結んで箱に入れた。

 そしてハコは閉じられ、子供達が花を棺に置いた。

 アーレンお兄さんが促されて棺のそばに来て骨壷をお母さまの棺の横に用意された棺にに入れる。
 アルモンド国での家財一切手放し、お墓も移動させると骨壷に収めて運んできてくれたそう。
 アーレンお兄さんの母アルマさんの骨壷も置くかどうか相談してたらしいけど、見知らぬ一族の墓に入れられたら落ち着かないだろうということでアーレンお兄さんが落ち着いた先でお墓を用意するそう。お父さまのお骨を一つだけ譲って欲しいと言われたのでを了承した。お父さまを助けて、看病して、最期を看取ってくれた人を邪険にしてはいけない。

 王様がお父さまに勲章を与えてくれて。書状とバッジを棺に添えてくれた。

「そなたの功績が未来のレイドラアース、そして世界を守ってくれるだろう」
 
 一連の儀式を終え、今度はお祖母様、お母さま、お父さまの遺産を渡されることになった。

「セラーナ夫人からはナタリア夫人の娘の成人後と指定されていたもので、ナタリア夫人の分はカイダール卿の研究結果とともにナタリア夫人の資産を国の財務管理機関が預かっていた物である。カイダール卿の物はハーボット元侯爵、オレイユ元男爵が横領していたものである」

 金銭や宝物は目録を渡され、お祖母様の文箱?は手渡された。
 中を確認すると鍵が・・・。

 (隠し部屋の?)

 鍵に手を触れると私は真っ白な場所にいた。

「リーシャ、ここに来たということはナタリアはもういないのね」

 声のほうへ振り向けば、リーシャが歳をとったような女の人がいた。

「・・・お祖母様?」
「そうよ」
「生きてらっしゃったのですか?」
「いいえ、精神をこの世界に留めたの。長くは話せないの。あなたがここにきたら目覚めるように設定したから」
 切なそうに微笑むお祖母様はお母さまにも似ている。

「私の血のせいでナタリアにもあなたにも迷惑をかけてしまったわ」
「?」
「私はネイマーシュの出で魔力がレイドラアースの者とは釣り合わないのよ。調整して旦那さまと合わせたものの〈歪〉が生まれてしまったの」
「歪?」
「そう、本来なら生まれた子はみんな私の血筋が色濃く出るのよ。でも旦那さま似た子も欲しかった。魔力を極限まで抑えて過ごして、子供たちはそれなりの魔力を持って生まれた」

 お祖母様は悲しそう。

「でもナタリアの産んだ子はネイマーシュで王族に並ぶほどの魔力を持って産まれた。しかも稀人の可能性まで」

 ・・・私が歪?稀人って何?

「レオドラアースの魔素では貴方の成長に必要な魔素を補えないし、ネイマーシュの王族に見つかれば連れて行かれてしまう」

 王族!?

「ナタリアと協力してあなたがレイドラアースで生きていけるように、そして誰にも見つからないように魔力を封印したの。でも完全じゃないから綻んでしまう」

 ん?魔力が不安定なのってそのせい!?

「貴方は成長してもう自分で対処できるでしょう?封印を解くわね」

 お祖母様が私の胸元に手を置いて魔力を流すと魔法陣が浮かび上がってきた。

 そして魔法陣が揺らめいて霧散した。
 
「魔力は外に流さないで内に循環させなさい」

 溢れ出て暴れ出しそうな魔力をお祖母様が操作して私に中に誘導する。

「肉体と精神、魔力が釣り合わないと生命が削られていく。うまく付き合って、適度に消費しなさい」

 そんなマズイなら封印したままでも良かったよ。

「ナタリアがあなたを隠すためにあのどうしようもないイダルンダの言いなりにオレイユ残ったのは嫌だったけど正しかったのかしらね」

 え!?私のためにあんなクソッタレのとこに残ったの!?

「あんな使えない男なら目眩しになるって、ナタリアもリーシャも変な者に目をつけられやすいから、イダルンダなら御し易いってねぇ。極端な選択よねぇ?」

 御しやすかったのかな?まぁ暴力はなかったし無理強いもなかったかな!??
 ご飯と経費ケチられたけど。

「ああ、いけない。くだらないことで時間を使っちゃったわね。リーシャ、私に似てしまったあなたはネイマーシュに近づかない方がいいわ」

 お祖母様は肉体のない精神?魂?だけど私もここでは精神だけみたいで、触れ合えた。

 ギュッと抱き寄せてくれて、頭と頬、撫でられまくった。

「あなたは自分の思ったように生きなさい。自由なのだから。リーシャ、私もナタリアもあなたを愛してるわ。旦那さまにもよろしくね」

 いや、それ口に出したら私ヤバい子ーーー!!!

 お祖母様はうっすらとなって消えて、私は現実に戻った。

 実際には一瞬のことで私は鍵に触れたままぼんやりしてた感じだ。

「リーシャ嬢?」
「え?」
「何かあったか?」
「・・・どこの鍵かなぁって?」

 色々もらってるし、お祖母様の遺産なら親族にも権利があるしこの鍵どうしよう?隠し部屋なのは確かなのよ。
 あとでお祖父様に聞いてみよう。

「葬送の儀は終わったか?」
 頭上から低い声がして上を見ると、魔法使いのじいさんっぽいひとが浮いてた。

「その小さき女がセラーナの孫か?」
 エルフの国から出てきたような銀髪ロン毛の几帳面で潔癖そうなお顔の渋メンキターーーー。背か高いけど体が薄い。やり直し~!!!

「あああ、義兄上」
「貴様に義兄上と呼ばれたくないわー」
 もしかしてシスコンの大伯父!? 

「ゲートが開いたから来てみたらまさか血縁者が揃っておるとはの」

 なんかめんどくさそうなのでお家おかえりください。






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