ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

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二章

200話

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 夜、ベッドに入ってから思い出した。
 お祖父様と伯父様の分しか懐中時計作ってないぞ。やばし!
 そして初日に渡しそびれた失敗。
 でも叔父伯母、従兄弟まで魔道具を用意するのも大変だし、とりあえずカイロもどきで許してもらおう。

 悶々と考えてかからかジュリアスさまが起きちゃってて。
 「どうした?」って聞いてくれたけど一応解決したので「もう大丈夫です」って胸に埋まって甘えてみた。

 外はまだまだシトシト雨が降ってる。グレーデンでは滅多に降らないから空気しっとりな湿気は懐かしい感じ。日本の湿気嫌いだったけどね。

 メイドさんが暖炉に火を入れてくれたので暖かい。本がいっぱいある家だから火を使うより魔道具の方が良いんじゃないかなと思ったけど、お祖母様の能力なら書庫とかに〈状態保存〉とか〈防火〉の魔道具を設置するのは容易いかって思い直した。
 屋敷内の魔道具とか魔法陣見せてもらえないかな。


 いろいろ考えてたんだけど、気がついたらジュリアスさまの温もりを感じながらぐっすり寝てた。
 
 目覚めても外は雨だった。梅雨とか雨季みたいなのあるのかな?

 ニーナをお休みにしちゃってたからどうしようかなって思ってたら、サラとメルが来てくれた。お着替えと髪のセットをしてもらって。

 食堂に向かうとお祖父様たちと教授とジョシュー先生が目が充血で目の下クマってわかりやすく寝不足だ。
 早速魔導書の話で盛り上がったんだろうな。研究バカってやつだー。

「男どもは仕方ないわね」
 伯母さまが呆れてたけど、自分の専門分野で話が弾んじゃうのは仕方ないよ。

 奥様たちとお子様たち、小さい子たちは食卓にいない。朝は食べないそう。
 
 ルルゥがコックさんたちに憧れの目で見られてる。遠い目をさせてから何があった!?

 雨なので街に出れないので書庫に入っても良いって言ってもらえたので早速行くことに。
 ジュリアスさまとサーキスさまが付き合ってくれる。
 セリウスさまやチェイスさんたちはサンルームでぼんやりするとか騎士さんたちはお休み扱いで自由らしい。
 アランとジェイクは一応護衛でついてくるけど屋内は危険はないはず。

 書庫は図書館とはいかないけど個人経営の本屋さんくらいは本がある。
 出回るのはほとんど写本、写本の写し、みたいな本なのでたくさん集めるのは大変な財力がいる。買い付けも大変だと思うし。
 
 本の種類は大雑把に魔導書、魔術、歴史、神話、薬学、医術、法律、地理、言語、経済、軍事って感じ。

 歴史と神話が気になったのでジュリアスさまにお願いして机に運んでもらった。

 重くてデカいよ。
 B5サイズのごんぶと本。
 
 ジュリアスさまたちが暇になっちゃうと思ったら、ジュリアスさまが軍事、サーキスさまは医術と薬学の本を読み始めたので安心して自分も本の世界に没入した。

 お昼に一旦食堂に行って食べてまた書庫に行って読む。

 リーシャの知ってる内容より濃い建国からの歴史とこの世界の国のそれぞれの信仰神とか教えの違いを比較している内容は面白い。
 同じ神を信仰してても解釈の違いで戦争になるのはどこでも一緒だね。
 この国の神様も浮気の物語がある。妬み嫉みが激しい女神、ストーカーちっくな神様もいるらしい。神さまでさえ自分を律することが出来ないなら人間なんてもっと無理じゃんね!

 
 夕方書庫を出る時に確認したら、魔道具も魔法陣も設置してあった。
 巧妙さがお母さまより上でかなり細かくした魔法式には感嘆するしかないよ。
 おそらくお祖母様が持てる技術を全部使ったと思う。

 夕食時間になったので食堂に向かうとやっぱりお子様方はいない。嫌われたとかだと辛いなって思ったら、伯父家族以外は普段は別に住んでて家族内でも食事時間が違うそう。
 みんな自由人ってことかな?

「いやぁ、グレーデンにコックが学びに行ってくれて十分美味しくなっているのにさらに美味しくなるなんてすごいです」
「やはり早々に移住したいものですなぁ」
 お祖父様、教授たちと研究の日々を熱望してると思ったら食事の方なの?

 食後にやっとお土産を渡すことにできた。

「懐中時計です。〈アラーム〉〈メモ〉〈防御〉〈転移〉の付与をしてあります」
 使い方と効果と転移は近い範囲に一回限りと伝えた。
 お祖母様で慣れてたのか若干の驚きと納得が混じって微苦笑されちゃったよ。
 ジュリアスさまはともかくサーキスさまがどんな顔してるのかドキドキしたけど今回はセーフっぽい?

 あとはカイロもどきを持ってる分全部渡した。夜が冷えるのを体感しちゃったからこれは出し惜しみできない。余れば従者にとか好きにして貰えば良いしね。
 
 雨はやっと止んだ。明日もこのまま晴れてると良いね。
 
 食後にもしばらくお話したあとお部屋に戻った。
 窓を覗けば、夜空が明るい。星が降ってきてるような気がするほど近い。
 
「この辺りは少し高地だからな」

 そうだったんだ。山道登ったり降りたりでここには降りてきたと思ってた。

 グレーデンの空も綺麗だけどここの空も綺麗。緑と水の気配を感じながらだからかな。


「外に出るか?」

「んー、まだ足元が悪そうだから良いです」

 まぁ多分抱っこだろうけど。

「なら地面が乾いたら散歩しよう」

 窓を開けてみたい気もするけどせっかく温めてくれてるのに冷えちゃうのもなので窓越しでしばらく眺めた。

 今夜も猫足のバスタブにみっちりハマるジュリアスさまを堪能してから就寝です。




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