ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

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二章

187話

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 夕食中は若干静かになってしまった。
 いつも賑やかなので居た堪れないなーって思いながら、餌付けされるがままにもそもそ食べてたらセリウスさまが普段とは違う雰囲気で話し始めた。

「リーシャちゃん、別にルークは怒ってるわけじゃないから。アイツはあえて厳しめにするのがクセなんだよ」
「そうだね~」

 クラウスさまが肯定する。

「まずはリーシャちゃん自覚が無いみたいだけど魔力がウチと外のバランスがめちゃくちゃ悪いんだ。来たばっかりの頃から比べたらだいぶマシだけどね」

 確かに肉体的にも精神的にもバランスが悪くて魔力の使い方も分かってなかったです。

「本来なら魔道具でも魔法でも好き勝手させてあげたいっていうのが陛下からの言葉だったけど、アンバランスなまま好き勝手してたら危険なのはわかるよね?」

 セリウスさま、いつものヘラヘラっとした楽しげな笑顔は影を潜めさせて真顔で丁寧に説明してくれる。

「多分ルークはリーシャちゃんを引き取りに行った時からリーシャちゃんを懐に入れちゃって余計にうるさいんだと思うんだけどさ」

 引き取りにって!でもただのお迎えの任務でグレーデン家に着いてからサーキスさまの責任を持つ部分なんてないはずなのに。

「うちの家族や騎士団の連中が規格外に強いのはもう理解してるよね?みんな好きに行動してるように見えてるだろうけど、それなりに制限は自分にかけてるよ」

 真剣なお話だけど普通にお肉食べ続けてるのがつい気になっちゃう。
 全力を出す場面が無さそうだとは思ってたけど制限してのアレなんだね。ちょっと規格外がすぎる。

「過ぎた力は慢心を生んだ瞬間に命を奪うんだ。傲慢や過信で自分だけじゃなく周りの命も危険に晒すよ」

 ジュリアスさまに似た顔でとても重い言葉を告げるセリウスさまは少し怖い。

「ほんの一瞬で命なんて消える。リーシャちゃんは実感が持てないかもしれないけどそれだけの魔力を持っているんだ。ルークの小言は鬱陶しいかもしれないけど無茶をさせたくないって気持ちはくんでやってよねー」

 いつもの語尾伸ばしが消えてたのに急に元に戻ってびっくりした。

「ま、兄上の護身用は歓迎だけどね~」

 セリウスさまはお皿の料理をほとんど食べ尽くしてから、ジュリアスさまとお義父さま、お義母さまに向かって、
「兄上たち、リーシャちゃんに嫌われたくないのはわかるけどルークにばっか悪役せせんなよ。優しいだけが愛情じゃないだろう?」
って諭した。

 怒られたりで嫌いになったりはしないけど、何しても良いよって言われ続けるのは少し怖い。
 だからサーキスさまやロジャー先生みたいなはっきり言ってくれる人は貴重なんだってのはわかってる。

「あとルルゥ!お前も多少はストッパーになれよ」
「ええ?私は人のことは言えないものぉ」
 
 ルルゥは好きなことを好きなようにしたい派っぽいからね。

「んー、あなたたちも散々無茶をして成長してきたんだからリーシャちゃんがちょっと無茶したところでねぇ?」
「うむ。多少失敗して学ぶものじゃろ」

 お義父さまたちが普通に大物だった。

「失敗したら命に関わることと一緒にするなよ~」
「あらあなたたち、しょっちゅう大怪我して帰ってきたじゃない?」

 ヤンチャなガキンチョレベルじゃなさそう。

「でもリーシャちゃん、命に関わる失敗は良くないから怪我したりしないようになるべく慎重にねぇ?」

 せっかくセリウスさまが渾身の説法をしてくれたのに気が抜けちゃうよ。

「ルークには確かに任せ過ぎたな。リーシャ、後で一緒に謝ろう」

 ジュリアスさまが背中をポンポンしてくれた。

 食後のお茶ではポムたちの踊りを見て和んだ。デェディエが真似るけどやっぱり途中でコロンと転がってしまう。可愛そうで可愛い。

『主の魔力の不安定さは制御がかかっておるから主が頑張ってもどうにも出来ぬな』

 (え?)

 一人我関せずバパブサラダを食べまくってたアズライトが念話で話しかけてきた。

『おそらく大すぎる魔力に体が持たずに制御するほかなかったように見えるの』

 (ええ?それって解除したり出来ないの!?)

 このままアンバランスだとずっとサーキスさまが鬼神になっちゃう!魔道具作り断念するしかない?

『術者本人か同等の魔力を持つ者にしか無理じゃろうの』

 マジかーーーい!?

『どうもかなり古く魔力残滓が少な過ぎて誰がかけたのか追跡出来んの』

 うぉぉー?打つ手無しか。

 しょんぼりがっかりだ。

『今で十分凄い魔道具が作れるのだから悲観せぬでも良かろ?』
 (でも危なっかしいからって)
『まぁの、そのうち歯車があうじゃろうて』

 もう!曖昧なこと言って!


 サーキスさまは従者棟で食事をしていると教えられて、ジュリアスさまに連れて行ってもらった。

 初めて来た従者棟は本邸よりは小さいけど立派な建物だ。

 案内してもらって行った先でサーキスさまはチェイスさんと飲みの段階に入っていた。

「おや、どうなさいました?」
「休憩中にすまないな」

 私たちに気がついてサーキスさまがそばに来てくれる。

「あ、あの、ごめんなさい」

 普通に接してくれる少し勇気付けられてサーキスさまに謝る。

「・・・その謝罪はもうしませんって反省できたと言うことでしょうか?」

 んひゃ!もうしませんはちょっと・・・。

「ふぅ、仕方ないですね。私も言い方が良くありませんでした。申し訳ありません」

 ほんのりお酒の香りがしてるけど全く酔いが見られない。
 予想外に謝られて焦っちゃうよ。

「いえ!サーキスさまはサーキスさまのままで良いんです!」

「おや、変わってますね」

 一瞬目を見開いてからニヤッと片側の口角を上げた。ドSスイッチ入れちゃった?

「リーシャさま、多少変わってもらうべきですわ~!この堅物はちったぁ柔らかくなるべきだわ!!」
 あわわ!チェイスさんがなんか地雷を踏みまくってる!!

「へぇ、チェイスはちょっと遊びたいようなので相手をしてあげますよ。ジュリアスさま、リーシャさま、これで失礼します。おやすみなさい」

 調子良く笑っていたチェイスさんを引き摺って部屋から出て行ってしまった。

「・・・」
「訓練場で鬼のシゴキコースだな」

 無言でジュリアスさまの顔を見上げたら苦笑いで教えてくれた。
 チェイスさん、口は災いの元だよ。

「リーシャ、ルークが怒ってないのはわかっただろう?」
「はい。でも心配かけたのは良くなかったです」

 つい、簡単に出来るからってやっちゃうけど次からは気をつける。

「無茶してほしくないのは俺も同じだが、やりたい事をやらせてあげたいからな。それにリーシャは自分の欲のためだけに魔道具を作りたいわけではないだろう?」

 ミンサーとか食べ物用のはほぼ自分の欲望なので肯定も否定も出来かねるです!

「これだって思いやりが籠っている」

 自分の耳に触れてピアスを見せて。

「怒られたのは俺の説明も下手だったからだろう。すまなかった」
 
 従者棟を出て本邸の戻る途中、チェイスさんの断末魔が聞こえた気がした。







 
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