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二章

186話

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 目が覚めてジュリアスさまの耳にお揃いのピアスが目に入る。
 へへへ。ちょっと面映い感じ。

 私がもぞもぞっと動いたからすぐにジュリアスさまも覚醒する。

「・・・おはよう、リーシャ」
「おはようございます」

 ジュリアスさまは私を抱き起こして膝に乗せる。

 ゆっくりした朝は久しぶりかも?

 私の耳を触って嬉しそうだから私と同じでちょっと面映いんだね。きっと。

 しばらくハグしてくれてからニーナを呼んでくれた。


 今日は薄ピンク色で何気にポムの色だな~って思ったけど可愛いワンピースドレスだ。
 
 髪を整える時にニーナが私の耳に気がついて「あらいつの間にピアスを?」って言ってからジュリアスさまの耳にもピアスがあるのを見て「なるほど」って一人で納得しちゃった。


 ジュリアスさまに抱っこで運ばれて食堂に向かうと、お義父さまたちがすでにお揃いだった。
 
「「「おはよう」」」
「おはよう、リーシャちゃん、あら?」

 さすが女性の目ってことか、お義母さまが速攻で耳のピアスに目を留めたみたい。

「あらあらあら、お揃いなのねぇ」

「あー、本当だ~」

 お義母さまは可愛らしいって言ってくれて、クラウスさまはちょっと揶揄い?

「あらぁ?ずいぶん魔力の籠った魔道具ねぇ?」

 厨房から出てきたルルゥがジュリアスさまにズズィって顔を寄せる。
 美形同士で顔寄せるなんて朝っぱらから腐っちゃうからやめて~。

「護身用に作ってくれたんだ」

 んー、濁してくれたかな?
 〈念話通話〉とか知られるとサーキスさまが怖いしね。

「あらま、愛されてるわねぇ☆」

 ルルゥったら。でもルルゥに作ったのもわりと護身用よね?

「デザインがシンプルで良いねー」
 セリウスさまがそう褒めてくれた。
 そういえば宝石商が用意する物は見栄え重視で派手派手しいもんね。

 朝食には山盛りのなんだろう、アレ。

 ジュリアスさまが普通に手をつけて私の口に持ってくるから怪しい物ではないはず。

「・・・」

 めっちゃクリーミー。
 味の薄いマッシュポットみたいな、でももっと舌溶けの良い食感。

「今年のはまた格別じゃな」

 お義父さまが幸せそうに味わってる。

「肥えてたからじゃないかー」
「確かにプルンプルンのモッチモチだったよ」

 ん~、なんか元の素材を聞くのは怖いな。知らぬが花。うん。美味しいやつってインプットしとくだけで良いや。

 お肉もほとんど元の姿知らないし。

 お肉やパンもいっぱい食べて、ジュリアスさまたちのお見送り。


 教授たちとの授業に離れに行くとマーベルハント領行きの話をされた。

「ワシらも連れてってもらうんじゃ。葬祭の儀のための訪問だからリーシャ嬢には申し訳ない気持ちもあるがのぅ、書物庫に入れてもらえることになっておっての、少しの期間マーベルハント家に厄介になる予定じゃ」

 
 お祖父様とのやり取りが続いてるのね。
 葬祭って言っても棺の移動のための簡素な儀式をするだけなので気にされなくても大丈夫。

「そうなんですね。研究が進むと良いですね」

 私の教育はほとんど済んでるし、今一番学ぶべき〈魔術の一般常識〉的なは多分、教授たちでは学べないと思う。教授たちもわりとぶっ飛んでるし。

「そうさの、前伯爵はワシらの持ってる知識とはまた違う知識を持っておられる。楽しみじゃ。だがある程度書庫を制覇したら戻ってくるのでよろしくなのじゃ」

 ほほう。あくまでも辺境グレーデンで腰を落ち着ける気は変わってないんだ。

「ところでその魔道具はまたずいぶん丁寧な仕上がりですね」
「凄いのを作る時は同席させて欲しいのぅ」
 
 ピアスをじっと見て言われてしまった。
 誰か監視兼補助をつけていた方がいいとは言われてるけど、ポーション類作りでなければ爆発させたりしてないし、特殊な魔道具の時は集中したいから見られての作業はちょっと嫌だ。

「思い立つと作っちゃうので離れで作業する時にはお願いします」

 未熟者だし、危なっかしいから心配かけてるのもわかってるから妥協案?


「まぁ閃いた時は勢いが大事じゃよ。仕方ないのぅ」

 同じ魔道具作りだから気持ちはわかってもらえたみたい。

 魔導書の翻訳をしながら魔法式の解釈や構築を問答して。

 お昼ご飯にみんなでお弁当を食べてから、クラウスさまが来られるまで休憩。

 ニーナがディディエカバンを仕上げたとのことですぐさまマジックバッグにした。
 ポムたちと同じ白系の皮で。体型を考慮してワンショルダーバッグみたいなデザイン。
 胸元にデンとバッグが斜めがけ。

「あとですね、シエルにもどうかと思って作ってみたのですが」
 ニーナがシザーバッグくらいの腰に引っ掛けるバッグを作ってきた。
 ポムたちと同じ生地でボタンにポムのパステルピンク、ティムのパステルブルー、アズライトのアズールブルー、ディディエのグランディディエライトのボタンが使ってあるシエルが大好きなあの子たちとそれを見守るニーナの愛が詰まってる。

 シエル用には容量は中型魔獣3頭分くらいにしておいた。

 外が少し騒がしくなったのでクラウスさまが到着したんだろうと玄関まで出て。

「いやぁ参っちゃうよ~」
「どうしたんです?」
「ディゴーの街に貴族の令嬢がちょいちょい現れるらしいー」
  
 ん?辺境嫌いな貴族令嬢がわざわざ何したいんだろう。

「なんかね~リーシャちゃんが暮らせるなら自分たちも暮らせるって。でもって~彼女たちの釣り書きを添えて屋敷に滞在させろって何件かきてるんだけど~断ってたら実力行使で街までやってきて宿で吠えたんだって~」

 何それ。

「さすがに街にまでこれば屋敷に招待されるんじゃないかって見越してるらしいけど呼ぶわけないよねぇ?」

 呆れ口調でクラウスさまは続ける。
 
「今のところスルーなんだけどリーシャちゃんも万が一接触があっても無視しといてねー」

 まぁ出歩かないから遭遇の心配もない。

「仮にグレーデンを気に入ってくれても僕らがその令嬢と結婚することはないんだけどねー」

 身も蓋もなくバッサリ切り捨てた。

「まぁディゴーの街なら滅多なことはないから飽きて帰るまで放置だよー」

 うーん?住民に被害が出ないといいな。

 現在の進捗と改善点を相談しながら今日のお仕事はおしまい。

 クラウスさまに運ばれて本邸に戻ると帰宅したジュリアスさまに渡された。

「おかえりー、兄上ー」
「お帰りなさいませ」

「ただいま」

 ジュリアスさまが抱き上げてくれたのでそのままお部屋に・・・。

「・・・まったく」

 ひょ!

「自重する気がないのがわかりました」

 うおおおお!怖い。
 ジュリアスさまの背後から物凄い圧を感じる。

「ですが体は大丈夫のようですし、ジュリアスさまが喜んでいらっしゃるのでもういいでしょう。お好きなように」
 って言って出て行ってしまった。
 
 見限られた?

「言い方が悪すぎるでしょ~、リーシャちゃん気にすることはないわ。ルークはリーシャちゃんの今の状態なら良いって判断したのよ」
「ああ、怒っていたら部屋がもっと寒くなってる」

 ルルゥとジュリアスさまがフォローしてくれるけど、ちょっと悲し。

「心配するな。ルークは大体あんな感じだ」

 怒られるのは覚悟してたけど、やっぱり切ない。












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