ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

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二章

185話

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 ジュリアスさまが帰宅して着替えて食堂に入るとお義父さまがバタバタっと入って来て。

「リーシャちゃん、馬車面白いのぅ!!」

 後ろにクラウスさまとセリウスさまがいたので馬車の話を聞いて早速見て来たんだろう。

「馬車?」
「少し改造しました」
「そうか」

 今日の行動予定に入れてなかったし、そもそも先に馬車の改造許可取ってなかったかも?やっちゃった~。

「椅子が動くなんてびっくりだぞぅ」

 全然怒ってないからセーフだったけど次からは気をつけよう。

「旅行の時の野営時に馬車で寝た時に思い付いてたんです。すっかり忘れてたので思い出してすぐ改造しちゃいました」

 
「そうか!思い切りが良いのは良いことじゃぞ!」

 お義父さまは大らかだから笑ってくれるけど、サーキスさまだったら無茶してとか報告は?って静かにキレそうだから次からは報連相を気をつけるよ。性格上、絶対やらかすから徹底するとは言い切れない。

「野営とか外で過ごす時は仮眠する程度だから寝心地気にしたこと無かったよねー」
「でも王都まで行く時結構しんどいもんねー寝転がりたい気持ちわかるよ~」

 セリウスさまとクラウスさまも出来には文句なさそう。

「執務室の椅子も倒れたら良いのじゃがのぅ」

「仕事が進まなくなそうなのでダメですね」
 後ろでハロルドがお義父さまにツッコんだよ。

「ちょっとくらい休んでもバチは当たらんじゃろうが」

 新しいことにワクワクしてたお義父さまを一瞬で沈没させちゃうのすごい。

 執務室にはダメだけど自室かティールームにでもリクライニングマッサージチェアを作って置いてみようかな?
 あの筋肉に勝てる馬力がいるかしら?
 がっつりじゃなくてソフトめでも癒せるよね。

「あとで馬車を見に行こう」

 ジュリアスさまが私を見て言うのでご一緒にだね。

「さて食事を頂こうかの」

 みんなが着席したので夕食の開始です。

「あれ~?シエルは?」
「シエルは当家で働きたいとのことなので教育のため今後は侍従たちか私と食事をとることになりました」

 あらら。もう未来を決めちゃったのかな。
 クラウスさまが残念そうだよ。

「まだゆっくりしていれば良いのにねぇ。でもシエルちゃん本人が希望してるからねぇ~」

 お義母さまは知っていたようです。まぁ雇用はいくら執事長でも勝手に出来ないもんね。
 家政のことは本当は私がやるべき事だけど、まだ当分はお義母さま任せにさせてもらえるからありがたいよね。

「まぁ見習いを始める年頃だからそんなものかなぁ~」

 シエルは自立心のある立派な子だね。私なんていまだに過保護にされてるけど☆

 今日の食卓に出てきたお肉はアッガス領寄りの場所で出たポイズンスパイダーだそうです。
 毒は取り除いてあるらしいけどビビる。
 若干痺れる部位があるそうだけどそれ微毒ってことだと思うよ~!!
 悲しいかな美味である。
 ジュリアスさまが餌付けしてくれるので断れずモグモグ。
 もちろん微毒部分は避けてくれてる。

『ふぅ~これこれ、これが良いのじゃ~』
 
 がっつりそこ狙いのアズライトは置いといて。

「プギュギュッーン」
「モモモキュゥー」

 君らその体のサイズでは微毒も猛毒じゃん?致死量?
 口に入れて体を上下に揺らして楽しんでる。マジなの?

 痺れたいだけならパバブで良いじゃん?

 さすがにディディエは真似しようとしたところをルルゥが止めた。
 ポムたちは魔獣だから平気かもしれないけど生まれたてのディディエは心配だよね。

「こっちも美味しいわよぉ~」
 お義母さまが勧めてくれたのは、トロッとしたお肉が入ったスープ。ビックエレファントブルっていう魔獣の肉らしい。
 
 ゾウなの?ウシなの?

「お鼻のところがプルプルお肉でお肌に良いのよう♡」

 コラーゲン?鼻にコラーゲン貯めてる鼻が大きいウシ?

「久しぶりに腕がなったわぁ」

 ルルゥが同じ肉を使った角煮を持ってきた。
 鼻以外もトロトロらしくて美味しそうなお肉さまだよ。

「アッガスの、こんな美味いのに森を放置だったなんてもったいないね~」
「放置だったからこそたくさんいたんじゃないか~」

 もはやアッガスは食材の扱いだよ。

「運が良くスタンピードにならなかったが放置は大問題だぞ」

 ジュリアスさまが眉を寄せてる。アッガスの放漫に静かに怒ってるのだ。

「うちが狩る量増えてたからあっちで増えてた分がこっちに来てた可能性もあるよねー」

 そういえばサンダー系が出てきたり少し良くない兆候もあったね。

「前回調べた時は奥地に特に異変がなかったがアッガス方面までは調べられなかったからなー」

 領域侵犯はわりと重罪なのでいかに魔の森の保全でも慎重にしてたそう。

 今は陛下の許可があるから出入りできてるけど。

「まぁ中域の厄介魔獣は殲滅してきたからしばらくは大丈夫だろう」

 軽く〈殲滅〉って言うのどうなんだ!

「今後は定期的に間引けば良いからねー」

 ここの人たちは魔の森レベルが超級でも気にしないけど、中ランクの魔獣だって普通の貴族なら王国騎士やS級冒険者に泣きつくレベルだって言うからビックリだよ。

 アッガス領側の魔の森はレベルとしては〈中〉らしい。
 騎士団を常駐させず放置するのは正気じゃないけど、やっぱりグレーデンが間引いてるからこその慢心だったんだろうね。
 もしスタンピードが起きててもグレーデンが国の依頼無しでアッガス側で戦うことはなかったと思うけど、ダメ領主(会ったことないから知らんけど)深く考えてなかったんだろうね。

 
「そーいえばくっさい花?なんかやたらデッカいのが咲いてたけど運ぶの嫌だったから採らなかったよー」

 ラフレシアみたいなのかな?

『それは魔植物だの。虫も動物も人間も動くものはなんでも食べるぞ』

 ゲ!

『討伐の必要はないが気をつけないと食われるの』
 (放置でいいの?)
『中型くらいの魔物を喰らうから間引きをしていると思えば良いの』

 はー。おっそろしいけどありがたいのかな。
 すごく臭いんじゃ人間もそうそう近付かないだろうし。放っておけば良いのか。

「アズライトが魔獣も人も食べる花だから近寄るなって」

「「「「ええ!?」」」」

 人を食べる花って想像できないよね。

「適度に魔獣を間引くから放っておけば良いそうです」

「「「「・・・」」」」
 
 クラウスさま、結構近づいちゃったんだろうな。すっごい顔してる。

「アレが捕食してる魔獣が美味しいやつだったらむかつくから殺っておきたいなー」

 あ、そっち?

『まぁ好きにすれば良かろ』

 おやつタイムにも見慣れない果物のゼリーやパフェが出てきて。

「めちゃくちゃ渋い果物があったのよぉ、動物が齧ってないのは食べれないって言うけどほんと酷い味だったわぁ」

 オヤツを運んできたルルゥが味を思い出したのか目がギュッて真ん中に寄ったよ。
 〈鑑定〉使える人いなかったのかな。味見して毒だったらどうするんだ!?

 渋い果物って渋柿みたいなやつかな?
 酒かけて干したら美味しくなるけど、あれも好き嫌いが分かれるから魔の森に採り行ってもらうのもなんだしスルーしておこうかな。また機会があったらその時にね。


 食事が済んでジュリアスさまに運ばれて馬屋近くの小屋に向かった。

 椅子を倒したりをドーリさんがやってくれて、中を観察して。シャワー付きの方を見て。

「快適な旅ができそうだな」

 って言ってくれた。

 部屋に戻ってお風呂を済ませてから、先日作った魔道具をジュリアスさまに差し出す。

「これは?」
「非常時に念話で話すことが出来るのと非常時に私から魔力を譲渡出来る魔道具を作りました」
 〈念話通話〉は常時できるけど非常時だけって伝えたよ。普段使いしてたら独り言言ってる人って周りの認定されちゃうからね。

「魔力譲渡?」
「私の魔力が余りがちなので貯めて置いてジュリアスさまが大量に魔力を必要にしている時にスムーズに魔力を渡せるようにしました」

 必要じゃないかもだけど魔力余ってるんだから万が一用に貯めてても問題ないでしょ?

「・・・こちらからは魔力を渡せないのか?」
「私は戦えませんし、魔力は多い方なので枯渇することはないと思うので」
「そうか」

 攻撃魔法は習ってるけど、いざとなったら使える気がしないよ。パニクってる間にアランたちが対処してくれるだろう。

 耳に穴を開けたくなかったらイヤーカフにするって言ったら大丈夫だと言ってくれた。

 お互いの魔力登録をしてから自分の耳に針でブスッと穴を開けてつけてくれた。
 私も穴を開けなきゃだったとちょっと焦ったらジュリアスさまが一瞬で開けてくれた。
 
 お互いの魔力が魔石を通してリンクしているのでほのかに繋がってる気配を感じて嬉しい。

「ありがとう、大事にするよ」
 ピアスに指を当てて言ってくれた。
 ちょっと気持ちが重いプレゼントだけど喜んでもらえたようで一安心。

 

 抱きしめてくれる腕のぬくもりにすぐに眠りに落ちた。





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