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二章

183話

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 相変わらずの熱量のマダム・シフォンの御一行。

 馬車は3台でお針子さんたちが乗ってきて荷物はマジックボックスを複数に詰めてる。
 
 馬寄せに荷物をガンガン降ろしてうちの侍従さんたちが屋内へと運んで行く。

「いらっしゃい~」

 お義母さまがマダム御一行を迎え入れると玄関ホールが一気に華やかになる。
 お仕事用の衣装だけどドレスを売る人たちだからおしゃれなの。
 グレーデンでは女性陣がおしゃれに着飾って集まることが少ないから毎度目が楽しい。
 この後の着せ替えタイムがなければね☆

「スノウリリィーさま、リーシャさま、お呼び頂き嬉しく存じますわ」

 マダムたちががニコニコとカーテシーしてくれるので私たちも。

「クラウスさまもお久しぶりにございます。相変わらずリリィーさまに似てお美しいですわ」

 クラウスさまはグレーデンの血筋がはっきり出ている上の兄お二人に比べるとお義母さまがちょっと出てる。
 若干ソフトってくらいだけど、まだ筋肉成長中のボディなので王都の男性よりは鍛えられてて、マッチョって思うよりイケメンって思う方が先に来ると思う。
 かなりモテる部類なんだと思うけど、「グレーデンに来てくれる~?」「婿にはいけないけど~」なんて流してたり、軽い口調でヒラヒラ躱してるそうで女っ気はない。

 マダムに褒められても、綺麗よりカッコいいって言われたいクラウスさまなので愛想笑いで「ありがとうー」って返してる。

「シフォンちゃん、今日はね、リーシャちゃんだけじゃなくって、クラウスとこっちのシエルちゃんの衣装もお願いしたいの~」

 お義母さまがハロルドの後ろに隠れてたシエルを紹介する。

 認識阻害は使わずに素の姿なので、マダムもお針子さんたちもシエルの容姿に目を見開き、ほぅっと息を吐く。

「まぁ!美しい子ですねぇ」

 神秘的なシエルを前にシエルが何者かとか疑問を持つ前に美しさが先にきちゃったみたい。

「リーシャちゃんがね、クラウスとシエルちゃんお揃いの礼服が見たいって言うのよぉ~!私も是非見たくって~」
「「「!!?!?」」」

 どうやらみなさん同意のようです。

 早速応接間まで行ってお針子さんたちがクラウスさまとシエルの採寸を始めた。
 衝立向こうで、クラウスさまの筋肉美にため息を吐いたり、シエルの肌の白さを賞賛している声が聞こえる。

 女子の着替えを覗きたい男子の気持ちがちょっとわかる。腹筋や腸腰筋とか気になるじゃん~。

「それでどんなデザインを?」

 マダムが目を輝かせて勢い込んでくる。
 あらぬ想像力を働かせそうになったら現実に引き戻された。良かった。変態になるとこだった。

「そうねぇ、まずはシエルちゃん普段着や執事服がいるのよぅ」
「あら執事見習いの予定の子ですの?」
「ハロルドに憧れているようで執事になりたいって言うのよ?でも焦って決めることもないしやってみたいって事は色々試してもらう感じよー」
「相変わらずここの雇用人は幸せですねぇ」

 それね。人手は大事にしてるし、子供に対する保護は手厚い。

「ふふふ、人を大事にすればその分良いことが返ってくるのよぅ」

 誰もがそう思ってくれたら平和なのにね。
 グレーデン領は騎士が多くて、それこそ常に魔獣や近隣国の侵略を警戒する場所だから人が居着いてくれないと困るのは領主や国なんだもの。

「そう思える器の大きさがない人が多いのですよねぇ」

 マダムは布を見繕いながらボヤく。

 私はそれを横目にシエルの普段着とクラウスさまとの礼服のデザインを思い浮かべる。

 獣人っ子たちもいろんなの着せてみたいね。

 マダムが私用にスケッチ出来る紙を持参してくれてるのでぼんやりとしたデザインを描いてみる。
 白系のセーラー襟の上下とか着せたいよね。
 甘ロリっぽいのもいい。
 真逆の黒ゴシックも似合いそうだけど、やっぱり白かな。
 あと紺色や水色もいい。

 アズライトの庭(池の島)いじりもするから、カーゴやラフなトップスもいるし。
 靴も白いブーツや運動靴っぽいのも欲しい。

 お義母さまが私に色々着せたい気持ちがちょっとわかった。
 でも量は控えめにして欲しいけど。

 クラウスさまとシエルのお揃いはロングコートジャケットで襟元が刺繍でキラキラしてるのが良いな。

 紙にサラサラ書き出すと視線が降ってくる。
 お義母さま、マダム、シエル、クラウスさまが上から覗き込んでた。

「あらぁ、可愛いですわ~」
「これならクラウスの凛々しさがハッキリ出そうねぇ」
「僕、これ似合いますか?」
「うわぁ!煌びやかすぎない~!?」

 礼服はよくアイドルアニメのPV用キラキラ服やコンサート衣装とかイメージした。

「あらぁこれでもシエルちゃんの美しさに負けそうよ~?」

 見せてみたイメージを元に色々な布を当てられる二人。

 これは今日は私の時間少なく済みそう?

「あっちは任せちゃってシフォンちゃん、リーシャちゃんの衣装は出来上がったかしら~?」
 ありゃ?

「当然ですわ~抜かりありませんことよ」
 マダムがスッと手を上げるとお針子さんたちがトルソーに着せられた服や畳まれた衣装をドーンと出してきた。

 おふ!すでに依頼してた分があったのか。
 びっくりしてお義母さまを見上げるとにっこりと笑われる。

「マーベルハント領はここより気温が少し低めですもの~生地からこの辺りとは変えないと大変なのよ~?」

 ほわ!そこまで考えてくださってたの!?私には考えも付かなかった。
 北のホーン領は寒いって言ってたけど、グレーデンには季節感が無いから気にしたことなかった。

「お心遣い感謝します」
 
 生地がいつもより厚手で重なりも多い。
 色合いも少し濃いめにしてあったりで。

「ホーンのことを思えば涼しいくらいの感じだけど慣れない気候では体調を崩すでしょうから暖かくしないとねぇ」

 お義母さまが笑いながら手に取ったのは赤いフードマント。レースや刺繍で華やかなんだけどドレスそれはもうアレですよ。
 それ羽織ってだよ、ジュリアスさまやサーキスさまに囲まれた私を想像してみるとさ。


 赤 ず き ん !!!

 私のサイズ感だと完全に一致しちゃう。

 フードマント、超可愛いけど笑っちゃう。

「ほら!やっぱり似合うわぁ♡」

 お義母さまがご満悦だから良いけど。
 グレーデン家の色だからこうなるねって感じだけど。

 腹筋が崩壊しそうなので、とりあえず今はマント仕舞ってください。

 お義母さまがシエルにも普段着を依頼していたようで抜かりがない。

 クラウスさまは突然決まったので採寸と布を選ぶ程度ですんだけど、シエルの服を見立てさせられてる。

「男性用の衣装は滅多に依頼されませんからとても腕がなりますわぁ」

 男性用は別のご贔屓テーラーがいるからマダムに頼むのは子供の頃以外なのかな。

「そうねぇ、うちの男性たちは動きやすさ重視だからシフォンちゃんにお願いするならドレスの方が楽しいもの~」


 シエルと共に数十着の衣装を着せられ、マダムたちが帰る頃にはちょっと痩せちゃった気分だよ。

 太らないとお酒解禁にならないのに!!

 ちょっと虚無になってるシエルと私をクラウスさまが苦笑いで見てる。

「久しぶりだったけど、やっぱり母上たちのパワフルさは恐ろしいよね~」

 次回のクラウスさまは同じような状態になるんだから~。
 でも子供の頃には散々味わってきたのかな。だと巻き添えにして悪かったかも。


「プッキュ~ン」
「モキュ~ゥン」
 何やら凹み気味のポムとティムがシエルの頭に登ってきた。

「ポムたちもなんか服着せられまくってたよ~」
 あら。自分の着替えで疲れてて気が付かなかったけど、二匹は小洒落たベストを着てる。
「最初は服を着てポーズして喜んでたけどレディたちにもみくちゃにされてたら疲れちゃったみたい~」
 ここにも犠牲者が・・・。

「可愛いけど、大変だったねぇ」

 服着てるモニパルも可愛いけど、あの勢いにやられたんならお疲れだよ。

「プキューゥ」
「モキューゥン」

 二匹ともやれやれって感じでシエルの頭の上でベローンってなっちゃった。


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