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二章
182話
しおりを挟む今朝はジュリアスさまはいなかった。徹夜?で騎士団本部にご出勤したらしい。
魔の森の状況はどうなってるのかな?
ニーナがハロルドから聞いたとのことで教えてもらいながらお着替え。
朝食を食べているとお義母さまに、
「今日はお昼からシフォンちゃんに来ていただくからリーシャちゃんもご一緒してね♡」
とちょっとばかり気を失いそうな宣告をされた。
お義母さまのお友達でもあるマダム・シフォンは素敵ドレスを作ってくれるけどお義母さまと負けず劣らずパワフルなんだよ。
綺麗なお衣装を作って貰えるのは嬉しいけど着せ替えが半端ないし。
すでに日替わりで着る物があるんだよ。
少しは大きくなるかもしれないから一気に作らなくてもいいのにー。
「そうそう、シエルも一緒にね⭐︎」
んにゃ?
「執事見習いの衣装と普段着を作らないとだわぁ~」
それはむちゃ楽しそう。ゴシック服っぽいのが良いなぁ。
「あちゃー、シエル頑張れよ~」
シエルと一緒にテーブルに着いてたクラウスさまがかなり同情的な顔でシエルの頭を撫でてる。
「はい!」
素直なお返事にちょっと心が痛むけどお義母さまの着せ替え人形仲間が増えて嬉しい。
朝の後のデザートにパウンドケーキとクッキーを出されて。
ポムとティムが踊りながら足環とカバンを見せびらかしつつポーズを取ってる。
「ププキューンプゥーキュッン」
「モキュキュキューキュィー」
そうすると厨房からコックさんたちが持ち運び出来る用に柔らか葉っぱで包んであるクッキーを持ってきてプレゼントして。
コックさんにカバンに入れてもらってはポーズを取るから何人も持ってきてるよ。
「ピギャーゥピガゥ」
それを横で見てたデゥディエが真似したいのに出来ないのでしょんぼり。コックさんはデェディエにも持ってきてそばに積んでるから仲間はずれではないんだけど。
デェディエが何か集める習性が無いからとディディエのカバンを作らなかった私の落ち度だ。
チラリとニーナを見ればしっかり頷いてくれたのでとりあえず今日は許してね。
「リーシャちゃん、今日は騎士団に詰めてるね~(ガンバ!)」
巻き添え回避でクラウスさまはお昼からのお仕事はお休みで騎士団の方に行くってさ。口パクで応援してくれたけど逃げようってのはずるいわ~。
「お義母さま~、私、クラウスさまとシエルのお揃いの礼服って可愛いと思うので見てみたいです~」
思いっきり上目遣いで普段しないきゅるるーんと胸元に手を重ねてお願いポーズをしてみる。
「なっ!!!??」
「まぁぁ!!それは良いわねぇ♡きっと可愛いわぁ。クラウスも同席なさいな~」
クラウスさまは決して可愛い枠ではなく綺麗系細マッチョ(成長中)男子だけどシエルとお揃いはきっとシエルがより可愛くクラウスさまがより凛々しく見えて良いと思う。
「裏切り者~」って目で見られるけど知らないもん。いつも同情だけしてスタコラと消えるのが悪いもん!!
成り行きを見てたルルゥは肩を震わせてて、ハロルドは苦笑い。
侍女さんメイドさんたちは想像して萌えてるっぽい。
マダムの来られる時間までお開きになったので隠し部屋で作業でもしようかなって思ったらクラウスさまに執務室まで拉致られた。
「ちょっと!!僕は今更母上に服選んでもらうなんて必要ないよ!!」
猛抗議である。
「いつも私ばっかり誂えてもらうのも悪いですもん~」
「僕たちはもう定番のを適当に持ってきてもらうからいいんだよ~」
子供の頃相当付き合わされたんだろうな~。でも適当は良くないよ~?
美の持ち腐れだ。
「ジュリアスさまの婚礼式のお衣装みたいに身体のラインを綺麗に見せる夜会服とか着たらすごくカッコいいと思うんです~」
「カッコいい?」
おや、お年頃男子、少し興味があるようだ。
「騎士さまは身体を鍛えてるから普通のデザインじゃヤボったくなるんでその仕上がった美しい筋肉をより良く見せるお衣装とか作ってもらうととってもカッコ良くなるはずなんです~」
これは本音。お仕立てでも主流のデザインんだと筋肉パツパツ腿とか盛り盛り二の腕でラインがちょっとモタっとしちゃう。
せっかくの素敵ボディをイカせてないんだよ~。
「確かにあの日の兄上はすごかったけど」
ま、人数少ないとエグい量の衣装着せられるから頭数増やしたかったのが一番だけども。
「はぁ、もう良いよ。母上は言い出したら聞かないし」
諦めちゃった。お義母さまに逆らうのは困難なのだ。
ちなみに騎士団の団服はズボンは皮(伸縮性のある魔獣皮)でぴっちりしてて、上着はかっちりしてるので筋肉もりもりな方がかっこいい。
夜会服は動きやすさより華美であることが優先されてるから騎士団の団服の機能美と比べるのも無意味なんだけどね。
「ちょうど良いから仕事片付けようか~」
ぎゃ!お仕事無しじゃなくなった。
領地中の街や町、村とそれぞれにお勉強場を作るのは場所の選定、教師、予算と色々やることがある。
概ね受け入れられて地域の有志たちが率先して手伝ってくれてる。
大人たちの子供達への愛情深さが目に見える。
孤児院がないってあり得るのかと思ってたけど本当に互助の精神が染み渡ってて身寄りを亡くした子供が放置されることはない。
「お金は問題ないけどやっぱり教えるって言うのが難しいよね。自分がわかってることでも教えるとなると難しいって。王都から教師呼んでも多分逃げ帰っちゃうからー」
魔獣が闊歩してるって噂がたってるけど、実際住んでみたらそこまでじゃないってわかってもらえそうなものなんだけど、魔獣の恐怖よりもナイフやナタが飛んでくるのに遭遇したらそりゃ逃げると思う。
「教師用にマニュアルっぽいのがあれば読み書きまでなら一般の人が教えられそうですかね?」
「マニュアル?」
「教え方、教える順番、教える範囲とか型枠を作っておく感じ?」
「あー、それなら自分の出来る範囲に悩まなくても良いかもー?」
ガッチリとマニュアル通りの四角四面にしなくてもいけどね。
始めた以上は途中で投げ出せないから頑張らないと。
少し話し込んでいたら、お昼ご飯をどうするか聞かれたので食堂に戻ることに。
「はぁー、シフォンさま、かぁ・・・」
「?」
「子供の頃良く服を作ってもらってたけど母上並みに圧がすごいからねー」
ああ・・・。でも社交界のご夫人たちのテンションと大差ないと思うんだけど。
「グイグイした感じって苦手なんだよね~」
うーん。王都の婚活令嬢を思い出す。
マダムは押しが強いけどあくまで仕事の、良いものを作って良い気持ちで衣装を着てって感じだから嫌な気にはならないけど。
かっこいい地位の高い男性に果敢にアタックしてる令嬢たちはちょっと怖い。
「マダムのグイグイはご令嬢のグイグイとは違いますよ?」
「それはそうだけどー。でも切羽詰まってる令嬢とかの押しの強さを連想しちゃうんだよー」
うはー。トラウマだ。
「今日は多分シエルが主役になりますよー」
あの神秘的な存在感は創作意欲を刺激するだろうから。
「うわー、何気に人身御供?リーシャちゃんえげつないよー」
「違いますよ!」
人聞き悪い。人身御供なのはクラウスさまだけだし。
シエルはお義母さまだって着飾らせたいくらいの綺麗さなんだから仕方ないよ。
お昼はパスタとピザ。
お義母さまはお部屋で取るそう。
シエルとともにローテブルでいただきます。さすがにクラウスさまは私に餌付けしないのでシエルと並んで食べられる。
またもポムたちの謎な踊りを見せられながらお茶を飲んでいたら侍従からマダムの訪問を知らされた。
「さて諦めて楽しもうかー」
クラウスさまは潔くマダムを出迎えに動いた。
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