ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

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二章

179話

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「ププキュン」
「モッキュキュン」
「ピッギャ、ギャン、ァギュン」

 気の抜ける合いの手を入れられながら、私は大鍋で芋を煮込んでる。
 なぜかアズライトが里芋を持ってきたから煮っ転がしが食べたいのだ。

 ここ数日、ジュリアスさまたちは交代で魔の森に行ってて。
 私は朝は教授たちとお勉強、クラウスさまがいる時は少しお仕事する程度、残りの空き時間は魔道具いじりか魔導書をいろいろ見比べてどのくらいなら現代の普通に使われてるレベルかを調べてる。
 お祖母様とお母さまがだいぶぶっ飛んだレベルだったっぽいのがわかった。

 今日はルルゥは騎士団に呼ばれてるらしいし、お義父さまもお義母さまもお留守なので久しぶりに自分で作る。
 離れのキッチンを久しぶりに使うよ。
 
 里芋の皮剥きをアランたちも手伝ってくれるんだけど芋がつるんと滑って転がすのでそれをポムたちが追いかけたり、転がした時の動作を真似してみたりで。

 たっぷりの里芋が剥き終わって下処理して鍋に入れて調味料を入れて。
 出汁は魚粉で味醂はないから蜂蜜でお酒はルルゥが料理用に使ってるのをニックスにお願いしてこっそり貰ったやつ。
 
 なので味の再現は難しいけど、食べたい。

 ついでなので味噌汁と卵焼き、鮭もどきを焼いて定食風に。
 お米は豆ご飯にしてみた。

 いや、すでに三時のおやつくらいの時間だけども。

「美味しそうですね」
 アランとジェイクは普通にお腹が空いたみたいで嬉しそう。

 ちなみにお箸はないのでフォークとナイフです。別にお箸を普及する気もないからいいのだ。

「プキュン」
「モキュッ」
「ピギャァ」

 ポムたちにも人間の一人前出してる。

 アズライトは芋と魚だけでいいって。
『酒も欲しいの』
 本当にね。

「いつもの芋とは違いますね」
「ねっとりしてて腹持ちが良さそうです」

 腹持ちが一番大事か。

 ニーナは黙々と食べてるけど、その目はポムたちをロックオン。

 ポムが里芋を一つずつ左右の頬袋に入れて「ぽっぺ」って手で押さえてやってるけど、君いつもいっぱい詰めてもっとパンパンにさせてるから今は通常サイズとそう変わって見えないよ。
「モキュッ」
 ポムが遊んでる間にティムがポムのお皿から芋を奪る。
「プゥギュゥウウ!!」
 お口を膨らませたままのポムがティムに飛び蹴りして追いかけっこが始まる。
 これってアニメとかで男兄弟の喧嘩シーンっぽいやつ!
 ディディエがそれを見て追いかけっこ?って混ざろうとするのをアズライトが止める。

『飯は残さず静かに食うのだ』

「アズライト、このお芋まだ採れるの?」
『モラたちのいるところになんぞ色々成っておったの』

 マジか。辛いのしか育てないと思ってたよ。

「種芋を分けてもらってもいい?」
『好きにするが良かろ。モラたちも葉っぱが残っておれば怒らぬ』
 日陰にでもしてるのかしら?
 茎も食べれるけど手間のわりに食い出がないから芋だけでいいよね。

「このお芋、いろんな食べ物に合うから結構好きなの」
『それは良かったの』

 今回は「来ちゃった」が無くすんだと思ったらシエルが覗いてた。

「アズさま探してた」

 どうやらご飯の香りに釣られたわけではなくアズライトに会いたかったみたい。
 でもお腹空いてるか聞いたら食べるとのことだったので、アランたちのお代わりと一緒に出してあげた。

「僕の父、主食が果物でした。だから僕も果物だけでした。今は色々食べられるの楽しいです」

 果物でお腹膨れるの!?

「果物だけ?偏食だな」

 ジェェェイクーー!!それは私も思うけど〈父〉の話、繊細なとこーーー!

「肉は臭い、土の物も臭いって。食べてみたら美味しいのに不思議です」
 
 シエルは豆ご飯が気に入ったみたい。
 
『父親は頭が古臭い部類のエルフらしいの』
 (ん?エルフに古いとかあるの?)
『血筋や種族にこだわりのある純血種がよく言う台詞だの』
 (血筋にこだわるのにシエルは羽人が混ざってるの?)
『さて、先祖帰りだからの、気が付かぬほど昔に混ざったのかものぅ。羽人はエルフと新和性が高く、昔は付き合いは濃かったはずじゃ』

 ふむぅ?

『我が最後に会ったのは自分で狩りをして生焼け肉にかぶりつくような荒くれだったがの』

 果物オンリーから肉食に変わるまで何世代あるの!?
 いやシエルの親ならまだ若いよね?個体差がすごい!?

「果物は美味しいけど土の食べ物も美味しいです。食べないのもったいなかったです」

「そうだな。子供はなんでたくさん食べて笑ってる方がいいぞ!ほらこれも食え」

 ジェイクが卵焼きを譲ってあげてる。
 ジェイクって普段は敬語じゃないのね。私に対しても気にしなくていいのね。ルルゥなんてずっとリーシャちゃん言ってるし。

「まだ食べれる?」
 もりもり食べてるアランとジェイクに聞くと頷かれた。

 離れのキッチンは教授たちが入り浸ってるので食材が常時入れられてる。

 のでお肉を出して謎肉の生姜焼きもどきと追加で里芋を芋餅にして出してあげた。

「「めちゃくちゃうまいです」」

 やはり若い男子、生姜焼きにハマるよね。

「これ美味しいです」

 シエルはお肉より芋餅を喜んでるかな。

「プッキュンキュン」
「モッキュンキュン」
 ポムとティムが芋餅を持ち上げてお尻をフリフリ踊り始めた。

「ピ、ピキャ・・・ゥ」

 なんか、黄色い子が出す鳴き声みたいになってる!?ディディエ、それはやめて!訴えられちゃう!負け戦だよ。
 「ピギャウ」も可愛くていいよ!

 ディディエはポムたちと同じよう鳴いて踊ってとしたいみたいだけどまだフラフラしてる。

「うふふ~、リーシャちゃんたらイケズねぇ☆」

 で、出たー!!!

 安心したらやっぱり来たー!

 キッチンの出入り口から覗いてたーー!!
 シャイ○ニング!!!

「ルルゥ?お仕事は?」
「いやぁねぇ、そんなのすぐすませてくるに決まってるでしょう?」

 ゆっくりしててもいいんだよ?

「これは何作ってたのぉ?」

 ってことで余分に作ってあった分をルルゥに差し出す。

「芋の煮っ転がし?少し甘い味付けなのねぇ」

 残りを狙っていたらしいアランとジェイク、ポムとティムにジトッと見られても気にせず食べる。

 シエルはニコニコ、ニーナは微笑で。
 ディディエはルルゥの頭に乗っかって甘えてる。
「芋餅、大奥様が躍っちゃいそうねぇ」

 簡単なのでレシピ書かなくてもすぐ再現しそう。

「あ、リーシャさま、今夜お花が満開なので島に来られませんか?」
 おや。夜に咲く花なのね。

「夜はジュリアスさまに聞いてみないと」
「あらぁ、それなら私が付き添うから大丈夫よぅ」
 私の返答に被せ気味にルルゥが言った。
「アランもジェイクも付いてくだろうし危なくないでしょう?」

 うーん、危ないかどうかじゃないような気もする。

「今日も旦那さまは森に行くだろうし。リーシャちゃんの気晴らしに反対なんてしないわよぅ」

 そうかな?

『花の見頃は見逃すと次に咲くまでお預けだの』

「じゃぁご飯の後に少しだけいきましょう」

 一応帰宅したジュリアスさまに伝えたら、「夜の池デート・・・」って少し凹んでた。
 いつでも行けるよ?って思ったら〈初〉っていうのを自分以外とってのがポイントだった。

「断った方がいいです?」
「いや、せっかくの花を見逃すのは勿体無い。行っておいで」

 ジュリアスさまはセリウスさまとクラウスさまを連れて夜の森に。
 ちなみに騎士さんたち三部隊くらいが昼夜交代で森に入ってるそう。

 お見送りをしてから、ルルゥに抱っこされて、アラン、ジェイク、ニーナ、シエル、ハロルド、ポム、ティム、ディディエ、アズライト、で池に向かった。
 
 





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