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二章

177話

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 トウモロコシのオヤツのあと、バーベラさんとも少しお話しした。

「教師を引き受けてくださってありがとう」

 バーベラさんは見た目20代真ん中かな。
 大人っぽい艶めかしい雰囲気。
 なんだろう。女優の杉◯さんっぽい?

「私は弟妹が多かったので子供たちがたくさんいると落ち着きます」

 なんてドンピシャな人材!!
 声は涼やかで話し方はゆっくり穏やか。子供に威圧感を与えなさそうでいい感じ。

 ご家族のもとに戻れないか国に帰れない事情がある人?がこの国に残ったんだったよね。
 聞いてはいけないかもだけど聞かないのも・・・。

「そうなんですね。えっと答えたくなければ答えなくてもいいですがご兄弟は今は?」

 クソ親父のせいだったらヘドロに毒混ぜよう。

「国を出てくる前に赤斑病で亡くなりました」

 !?

 また赤斑病が出てきた。この世界でかなり広がってるの?  
 バーベラさん、アルモンド周辺の出ってことなんだろうか。

 アーレンお兄さんがアルモンドでの普及を断念したって言ってたけどやっぱりどうにか多くの場所に広げたいよ。

「そうでしたか。お気の毒です」

 家族を亡くして、自分は奴隷商に捕まるとか人生厳しすぎる。

 獣人さんたちの調査資料ってジュリアスさまなら持ってるよね。見せてもらえるのかなぁ。

「バーベラさん、ここをはじめ、今後が学べる場が増えるようにしていくのでご協力お願いしますね」

 私は慰めるとかは苦手だから困る。

 赤斑病の薬が出来たって伝えたところでそれが慰めになるの?
 自分の家族には間に合わなかった薬の存在なんて知っても虚しいかもしれない。

 もっと上手く言葉が出てきたらいいのに。

「衣食住があって、人に追われない暮らしがありがたいって貴女にはわからないでしょうね」
 嫌味とかの感じはなく淡々とした声音で言われた。

「・・・私は追われはしなかったけど行動は制限されて餓死寸前だったらしいので全くわからないこともないと思います」

 命からがら逃げるとか何日も食べれないとかじゃないから甘いかな?まぁ全く能天気なお嬢様ポジションではないよ~って。

 バーベラさんは目を見開いた。一瞬虹彩が細く変化したのでやっぱ蛇の人なんだなって。

 受け流しても良かったんだけど、誰もが見た目通り幸せに暮らしてきたとは限らないってのは知ってもらっても良いよね。

 
 シャンクさんは騎士団の寮で暮らしてるそうでここでは会えなかったけど、〈認識阻害〉は三人ともあった方がいいだろうってことで今度までに用意することになった。

 帰る前に畑のオッちゃんにネバルの実がないか聞いたらやっぱりあったので草と一緒に少しわけてもらった。

 実が手に入ったのでポムの成長促進の舞?は必要なかったよ。

 子供たちは私にはネバルを仕掛けてこなかったけどクラウスさまは帰る頃にピコピコやってた。



 帰り道にクラウスさまが草原に寄ってピコピコさせながら私を肩車して走り回った。

「たまには外で暴れないとつまんないよねー」
 いや、クラウスさまはわりと暴れてると思う。

「昨日、魔の森でさー、アッガスの悪党たちの残りが森に逃げてたみたいでねー、魔獣の相手に慣れてないのに逃げ足がすごくてねー、追いかけっこしてたの、バカだよねー」

 魔獣に追いつかれないってすごい逃げ足。

「でも結局捕まる直前に回収したよー」

 放置しないんだ!

「魔獣が人の味覚えると厄介だから現場にいた魔獣は全部狩ったんだー」

 普通の森ならともかく魔の森に隠れようとするのってバカなの?

「一応領域があるから森の奥にはほとんで手が入ってなくてねー、今後は調査を入れるんだけどねーどうも魔物避けで奥に隠れ家を持ってたようなんだー」

 あー、でも上位魔獣には効かないんじゃ?

「なんのためにそんな場所に」
 
「奴隷隠しじゃないかなぁー」
 
 あー!!

「そう言うことで兄上も当面は魔の森に頻繁に行くことになるよー」

 そうなんだ。
 ジュリアスさまがいない朝とかはちょっと寂しいけど仕事なら仕方ないね。

「狩りしに行ったって認識でした」
「っはは。まぁ兄上は現場に行かなくても良い立場だしねー」
 やっぱ狩りが本命?
「でも見かけない魔物が出た時は率先して情報拾いに行くんだよー」
 
 散々走り回ってちょっと休憩で下ろしてもらったら、アランとジェイクがハァハァしてて、なぜかポムとティムもハァハァ。
 ただポムとティムは疲れてるんじゃなくて真似っこしてるだけで。

 ハァハァ。
 チラッ。
 ハァハァ。
 チラッ。

 みたいな感じでアランたちの様子を確認してる。

「プキュプ」
「モキュッ」

 そしてちょっと「ウケる~」ってやってるっぽい。
 
 君たちその足の長さでアランたちの速さについていけて真似っこ遊びができるのか。

「お前たち鈍ったなー帰ったら特訓だー」
 
 私の護衛なんかしてたんじゃ鈍るよ。
 気の毒すぎる。

「申し訳けありません」
「面目ないです」

 二人とも自分に対して悔しがってる感じ。
 私を肩車して走ってたクラウスさまが変なのに。

 ニーナが馬車のそばでお茶を用意して待っててくれたのでみんなで一服してから屋敷に戻った。




 クラウスさまは今日はこれから騎士団に顔を出すからって行っちゃったので私は訓練場に行った。

 私が錬金術か魔法攻撃の練習してる間はアランたちも訓練場で特訓できるからね。

 とりあえず、的に水魔法を当てて魔力をちょっぴり放出。

 昔やってみたかったことの中に弓道とかボーガンがあったけど、今は魔力が矢の代わりになるからちょっと味気ない気持ちだけど楽しい。
 全力で魔力込めたらマ◯ンコウ◯ッポウとかショウ◯ュウケンみたいなの出せるかな?
 
 魔法少女の方がいいかなー。人妻だけど⭐︎

 的にあてる程度じゃお腹が空くほどにならない。

 やっぱり魔石に魔力貯めちゃおうかな。

 転移陣とか魔力使うって言ってたし。
 いや有り余ると陛下が「来ちゃった」を連発しそう。

 的に千本ノックみたいに連射してたらちょっとずつずれちゃう。
 まだコントロールが下手なのだ。

 全部的中させて穴が一個しか空いてないってやってみたいもんだ。

 途中でニーナにストップされちゃった。

 ちなみにポムとティムは帰宅してすぐディディエの元に飛んでったよ。




_________

 前話のラスト数行削ってこちらに入れました。

 少し先の話の組み方を考えてたら頭の中が混乱しちゃってまとまりにくくてちょっと難産中です。



 
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