ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

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二章

163話

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 アンゼリカさまたちが騎獣を預けに行って着替えてくるって事なので私たちは食事の前に広間で一息。

「すごい人数でお出迎えでしたね」
「いやーあれは出迎えじゃなくて警戒だよー。アイツらが大暴れしたらあの人数でもきつい」

 クラウスさまが「やれやれ」と言った感じで答えてくれる。
 いきなり大暴れする可能性があるって、山賊か野盗みたいだな。

 しかも「アイツら」って複数いるぅ!!

「今回はあれで済んで良かったよ~」

 んんー?地面抉れて一面砂まみれで良かったっていうレベルなのね。
 しかもジュリアスさまに向かってすごい速さで抜刀してたけど。
 そのスピードに負けずに剣で庇ったサーキスさまとセリウスさまもすごかったねぇ。

「剣撃すごかったです」
「んー?あんなの戯れた程度だよー」

 ひぇー!藤岡○。もびっくりな抜刀だったのに。

「アンゼリカはいつもあんな感じだからリーシャちゃんは真似しないでね~」
 出来ないのでご心配なく。

「アンゼリカちゃんたら相変わらずワイルドよねぇ~」
 お義母さまがお茶請けに出されたおはぎをもりもり。
 これから朝ごはんですよー。

「息子が斬りかかられたのに出る言葉がそれかよ~」

 セリウスさまが呆れながらもおはぎをパクパク。親子だな~。
「あんなので動じるような軟弱な息子なんていないもの~」
 やっぱりグレーデン家の女主人たる者は肝が据わってないとダメなのね。無理かもー!

「すまないね」

 身なりを整えたダレスさまとレオルカさまが入ってきた。
 ダレスさまの住む領地はここからワイバーンで15分ほどだそう。全然距離感がわかりません!ワイバーンの時速何キロ?

「マデリーちゃん相変わらずこえぇー」

 セリウスさまに泣きつくかのようにその肩に顔を埋めてる。イケメンたちの絡み・・・。
 怖いのに「ちゃん」付けなのね。

「一生尻に叱れるどころか足蹴にされてそうー」
「いや、アンゼリカとほとんど遠征に出て放置プレイに一万デル」
「やめてよねー!」

 従兄弟たちで楽しそう?
 ちなみに一万デルは無理やり日本円に合わせると十万円くらい。

「アッガスのこと言ったら俺消されちゃう!セリウスやっぱりアッガスはお前が貰え!!」

「お前、報告入れてなかったの?マジで!?バカなの!?」

 セリウスさま、いつもの間延びした口調じゃなくなった!!

「生活のことはきちんとお話ししないとダメよぉ?」
 お義母さまがおはぎのお皿をすでに三枚積んでる!
 
「まだまだ帰ってこないと思ってたんだよー!!」
「婚姻式まで三ヶ月切ってるんだろうが!」
「アイツらなら一ヶ月、下手したら一週間もあり得ると思ってたんだよー!!」

 えっとドレスとか招待状はもう済んでるんだろうか?
 レオルカさまがイケメンフェイス台無しなくらい半泣きでセリウスさまに縋り付いてる。プチマッチョのイケメン二人。
 クミちゃーーーーん!!!!ラインしたいよー。

「いくらアイツらでもそれはないだろ~」
 
 アンゼリカさまたちは通常は戦力が少ない領地に派遣で向かって、警備と戦力拡充のための育成を主に各地に行ってるそう。
 今回長引いたのは、魔の森が無かった土地に初めて出現したのでノウハウを持っていない領主と騎士たちに間引きや探索、調査が出来るように特訓もしていたかららしい。
  
「みなさま、食堂にお揃いください」

 ハロルドが声を掛けてくれたので食堂に向かう。

 アンゼリカさまとマデリーさんもすぐに入ってきてそれぞれ席へ案内される。
 残りの女騎士さんたちは別の部屋に。

 アンゼリカさまたちは私がジュリアスさまの抱っこで座ってるのを見つけて、ジュリアスさまを毛虫でも見るように眉を顰めた。

「いくら可愛いとはいえその扱いはどうなんだ?」
「自分でやれることをやらせないのは愛ではないと思う」
 アンゼリカさまとマデリーさんがとても常識的なことを言う。
 ははは。もう慣れちゃってたけど普通はそうよねー。

「うるさい。人の事情に口を出すな」

 ジュリアスさまはムッスリと答える。

「ああん?ハナッタレがずいぶんと生意気になったな?」
 アンゼリカさまが席をたち、ジュリアスさまににじり寄ろうと動く。

「アンゼリカ、やめなさい!」
 ダレスさまが慌ててアンゼリカさまにゲンコツを落とした。暴れん坊相手に大丈夫なのかしら?

「おおーい。アンジー、ともかく食事を楽しもうぞぅ」
 お義父さまがそういうとアンゼリカさまがヘニョっと笑顔になって席に戻った。
「はーい!叔父様!!」
 お?
「相変わらず父上に媚び売るんだー」
 セリウスさまが嫌そうに眉間を寄せた。
「うるさい!叔父上はここで一番強い男だ。当たり前だろう。尊敬して何が悪い」

 うはー。脳筋の判断基準だ!!

 順番に運ばれてくる料理の匂いに気がついたアンゼリカさまマデリーさんの気が料理に向かった。

「さぁさぁ、アンジー。マデリー。長い間ご苦労であったのぅ。慰労会はまた別に行うが今はこの朝食を楽しんでくれ」

「「ありがとうございます」」

 本来ならジュリアスさまのセリフなんだろうけど、アンゼリカさまはお義父さま大好きらしいのでお義父さま任せなのね。

「!?」
「は?」

 二人ともスープを口に入れた瞬間に固まった。
 遠征先はまだグレーデンのコックさんたちのレシピ回ってなかったんだろうか?

 それから一心不乱にサラダやパン、肉料理を食べて。

「貴様!人が魔の森でクソまずい兵糧で過ごしてる間にこんなに美味いものを食べ、可愛い嫁といちゃついていたというのか!!」

 またもジュリアスさまに怒り始めた。理不尽!!

 そういえばルルゥが厨房から出てきてない。あとアズライトたちもいないな。

「兵糧しか食えないのはお前らが湯すら沸かさないからだろ~」
「肉すら焼かないってどうなのー」
 は?お肉って炙るだけよね?

「うるさい!鍋が破裂するし肉は炭になるんだから仕方ないだろう」
 あ、待てなさすぎて魔法で一気に焼いたりするのかしら?
 宿とか滞在先でご飯食べないの?

「ともかく貴様ら許さん!!表に出ろ!!」

 えええ?

「や・め・よ!!!」

 お義父さまがアンゼリカさまのそばに寄って止める。

「はい!!」
 コロっと機嫌が直って、それをみているダレスさまが微妙な顔をしてる。

「食事を気に入ったというならアンゼリカもそろそろ派遣隊を降りて領地に腰を落ち着けたらどうだ?」
 ダレスさまがそう言うとアンゼリカさまがギッと睨む。
「騎士を辞めても私は結婚などしないからな!」
「お前みたいなじゃじゃ馬にそれは望んでおらん!!」
「な!」
 今度は親子喧嘩になった。

 なんて言うかエネルギー有り余ってそう。

「あ・あのマデリーちゃん・・・」
 父と姉が言い争ってる隙に婚約者にアッガスのことを話そうとレオルカさまがチャレンジ。

「なんですか?」
「あの・・・僕ね。アッガスの領主になるみたいなんだけど・・・」
「は?」
 言い方ーーっ!!なぜそんな弱腰?
「・・・確かあそこは・・・失脚しましたか?で、なぜあなたに回って?」
 なぜかメガネをクイっとしてる幻影が見える。
 切れ者秘書さんのような。

「んーとリーシャ様が海が欲しいって言ったから?」
 
 ぎゃっっっーーーーー!!
 レオルカさま!その説明は雑すぎる。

 ギギギと首から音がしそうな振り返りでマデリーさまが見てくる。

「っっそそそれれでででぇ・・・叔父上ぇぇががが僕たちのけけけけ、結婚のぉぉお祝いぃにぅぃく・くくくださると・・・」
 レオルカさまが壊れたカラクリ人形のようにカクカク動きながら説明した。

「ルドガーさま?ジュリアスさま?きっちり説明していただけますか?」

 マデリーさんは目が全く笑ってないけど口元だけ微笑ませた。

 
 

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