上 下
157 / 701
二章

152話

しおりを挟む
 領内のお方たちで、あまり持ち場を離れるのは望ましくない方達も多かったようで夕食後にほとんどの方が帰宅されてた。
 残られた方は騎士棟や貴賓用の屋敷に案内されてお泊まりで。

 本邸にはお義父さまの兄ダレスさまと弟フォーガスさま、ジュリアスさまたちの従兄弟たちが残っていて朝食の席に全員集合みたいな。
 いやぁ血が濃いね!
 みなさん濃淡あれど赤髪です。身体の逞しさまで似てる。
 マッチョいっぱいで大変結構です!

 そんな桃源郷で幸せな気持ちなんだけど、彼らは私をモニパルでも見てるかのように目を細めてる。
 
「ほんとジュリアスってラッキーだよね!」
「こんな可愛くて料理もうまいって」
「魔道具の才能もすごいしね」

 従兄弟さんたちにめっちゃ誉め殺しされて照れる!

「レオルカ、お前の婚約者はいい女じゃないか」

「確かにいい女だけど怖いからなぁ」

 お義父さまのお兄様の次男レオルカさんはジュリアスさまよりお義父さま寄りのゴツいお兄さん。

 ん?レオルカって今度結婚するって言われてた人だ?

「アイツの世話だけで大変だからマジでアッガスはイラねぇからセリウスがもらえよ」
 レオルカさんは隣でサンドイッチを食べてたセリウスさまを小突く。
「俺は気ままな騎士がいい」
「俺だってそうだよ!」
 どうやら仲良しみたいで押し付け合いつつ楽しそう。

 でもアッガスもらうの罰ゲームかなんかみたいになってるぞ。

「まぁ最初はみんなで支えるからそう気負わなくてもいいさ」
 お義父さまやジュリアスさまが宥める。

 アッガスは正式に決まればグレーデン領に併合って形になる。
 海の利権を持っていたいから独立の形は取らないんだろう。
 まぁ親戚だから独立でも良いんだろうけど、まとまってた方が周辺の貴族対策には良い。
 
「俺じゃなくてアンゼリカにやってほしいわ~」

 セリウスさまとクラウスさまみたいに自由でいたいタイプかな。

「アンゼリカの方が嫌がるだろう」

 ジュリアスさまとセリウスさまが眉間に皺を寄せて却下した。

「アンゼリカはレオルカの姉でレオルカの婚約者マデリーと長期で遠征に入ってるんだよ」
 クラウスさまがこそっと教えてくれた。

 ん?もしかしてこの前話してくれた女騎士さんたちのことか?

「アンゼリカだってそろそろ落ち着いた方がいいだろ~」

 あ!そういえばグレーデンの血筋の女の人初めて聞いた気がする。
 アンゼリカさんはやっぱ赤い髪です逞しいのかしら?強い女の人きっとカッコいい!

「アレは内政向きじゃないぞ!暴れ牛は放牧が一番だ」

 暴れ牛って!!ダレスさま自分の娘にひどいなぁ。

「家に留め置いたら屋敷が全壊してしまう」

 ダレスさま、お義父さまとよく似たガチマッチョボディをプルプル振るわせてる。
 アンゼリカさま、どんだけ猛烈なんだ。

「はぁ~俺も暴れておけば良かったなぁ」

 レオルカさんは姉に振り回されてきたのかしら?

「僕さ~アンゼリカ見て女姉妹いなくて良かった~って思ってたんだけどリーシャちゃんみたいな妹なら大歓迎だよねぇ」

 立場的には義姉ですが・・・。

「お前マジでムカつくなぁ」
 レオルカさんはクラウスさまのほっぺを掴んで伸ばした。

 ゲラゲラ笑いあってお返ししてまた返されてる。
 
「まだ正式発表されておらんからの、表沙汰にせず進めてくれ」

 アッガスの領主と主要ポストにいた人たちは軒並み捕縛されたから今は王国預かりで、おそらく領地は早々にグレーデンに引き渡されるらしい。
 浮いた爵位もいくつかもらえる方向らしい。
 表面的には現在不良債権のアッガス領を押し付ける形になるから他の貴族から文句も出ないだろうって。

 アッガスの海にどれくらいの魚がいるかとかは未知だけど、領地自体はそれなりに大きく農耕地も広げられるからうまく運営したら海の利がなくても採算は取れるらしい。
 今までが相当ダメな運営だったんだね。

 正式に決まれば、あちこち視察して必要な対策をとって、グレーデンのように土地を活かして発展していくだろう。

 海の状況を見に私も連れてって貰えたら嬉しいな。

「ほんとジュリアスの嫁は神の使徒だな」

 ダレスさまとフォーガスさまが私の頭を撫でてくれた。

 神の使徒ってなんだろうと思ったら日本でいう福の神に似た表現らしい。
 随分と持ち上げられてる。

「リーシャさんのおかげで数年に一度はあった不作の対策が楽になった」
「備蓄も冷凍貯蔵庫のおかげで長持ちになったし、畑の改良で豊作でな」

 自分の食い意地でやりたいようにやっただけなのでむず痒くて仕方ないよ。

「食べ物が劇的によくなったおかげでますます身体に力が漲る」

 え!?グレーデンの人たち元々頑強じゃん!!料理関係ないと思う。

「食事が変わったのは大きいわぁ!私の髪とお肌の調子も良くなったしね」

 お義母さまは出会った時も今もうる艶で素晴らしい美貌ですが?

 その後も話が変わってホッとしたのにしばらくしたらまた褒められる、みたいな感じでお昼過ぎに彼らが帰るまでループで少し疲れたっちゃった。

 褒めてもらえるのは嬉しいけど、別に私の手柄ばっかりじゃないし、私のなんとなく思い浮かんだ事を形にできる人脈と財力がある事が大きいからね。

 ジュリアスさまは見送った後にお仕事に行ったので私はお義母さまに誘われたのでお茶タイムに。

「リーシャちゃん、お疲れ様。いきなりで悪かったわねぇ」
「いえ・・・」
「森の異変は何もなくて良かったけど、万が一があるからねぇ。まぁ今回はアッガスのこともあって呼んだけど普段は〈伝心鳥〉飛ばすくらいなのよ」

 伝心鳥は手紙を運ぶ魔鳥のこと。伝書鳩っぽいね。


「みなさんそっくりでびっくりしました」
「うふふ、そうねぇ、嫁側の血筋が残りにくいみたいねぇ?」

 どういう仕組みで!?

「多分ねぇグレーデンの者は長年魔素の強い地に住んでるから魔素に耐えられる強い体が必要でここに合った子が生まれるんだと思うのよ~」

 ヒエェ。だからって偏りすぎ。
 クラウスさまは少しお義母さまが残ってるけど、それでも逞しいほうだもんね。

「リーシャちゃんは魔力が多いからジュリアスとどっちの色合いが出るかわからないわねぇ。私はリーシャちゃんに似た女の子が産まれたらドレスいっぱい着せたいし、男の子もきっと綺麗に育つから衣装選び楽しみねぇ。ジュリアスに似ても女の子ならアンゼリカちゃんみたいにカッコいい子になるからどっちも素敵だわねぇ」

 うはは。まだ当分出来ないかなー!イチャイチャはしてるけど内臓系が良くなっててもまだ心配みたいで先に進めないんだもん~。
 
 ってアンゼリカさんって宝○風なんだろうか?もしかしたらレスラー的な方?

「そうそう、アンゼリカちゃん、レオルカの結婚式が近いからそろそろ帰ってくるわねぇ。マデリーちゃんはドレスどんな感じにしたのかしらぁ?」

 ダレスさまが震え、クラウスさまとレオルカさんが遠い目になる女騎士さん、どうやら近いうちに会えそうです♪




 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

三回も婚約破棄された小リス令嬢は黒豹騎士に睨まれる~実は溺愛されてるようですが怖すぎて気づきません~

鳥花風星
恋愛
常に何かを食べていなければ魔力が枯渇してしまい命も危うい令嬢ヴィオラ。小柄でいつも両頬に食べ物を詰めこみモグモグと食べてばかりいるのでついたあだ名が「小リス令嬢」だった。 大食いのせいで三度も婚約破棄されてしまい家族にも疎まれるヴィオラは、ひょんなことからとある騎士に縁談を申し込まれる。 見た目は申し分ないのに全身黒づくめの服装でいつも無表情。手足が長く戦いの際にとても俊敏なことからついたあだ名が「黒豹騎士」だ。 黒豹に睨まれ怯える小リスだったが、どうやら睨まれているわけではないようで…? 対照的な二人が距離を縮めていくハッピーエンドストーリー。

婚約破棄にも寝過ごした

シアノ
恋愛
 悪役令嬢なんて面倒くさい。  とにかくひたすら寝ていたい。  三度の飯より睡眠が好きな私、エルミーヌ・バタンテールはある朝不意に、この世界が前世にあったドキラブ夢なんちゃらという乙女ゲームによく似ているなーと気が付いたのだった。  そして私は、悪役令嬢と呼ばれるライバルポジションで、最終的に断罪されて塔に幽閉されて一生を送ることになるらしい。  それって──最高じゃない?  ひたすら寝て過ごすためなら努力も惜しまない!まずは寝るけど!おやすみなさい! 10/25 続きました。3はライオール視点、4はエルミーヌ視点です。 これで完結となります。ありがとうございました!

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

処理中です...