ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

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二章

149話

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 陛下がいきなり来ちゃっても料理はいつも美味しいので心配なし。
 まぁ量が量なのでエレガントではないけれど?

 陛下もリックさまも笑顔で席に着かれる。

「いい香りだ!」

 魚介スープとカルパッチョ、クランゴを使ったオイルパスタ、香辛料たっぷり擦り込んだお肉のステーキ。
 焼きたてふわふわパンにフルーツソースを使ったサラダもある。
 
 陛下はサラダを口に入れた瞬間に苦味もエグ味もない美味しい野菜なのでびっくりしてる。
 ポムたちのおかげか最近劇的に味が良くなった。胡椒も採れるから輸入待ちがなくなって以前よりたっぷり使える。

「はぁ、リック、帰りたくないのはわかるが帰って来てくれ。魔導省からもお前の母からもせっつかれて困っておる」
「仕事は遠隔で指示出してます。母上はいまだに釣り書きを送って来ていますので無視でいいです」

 陛下のお願いをつーんと却下してる。家出した妻を迎えに来て振られる旦那みたいな哀愁が・・・。

「ほほ、ガーランド夫人ったら上のお兄様の時もすごい勢いだったけど、貴方それを何年も交わしてるんでしょう?すごいわねぇ」

 リックさまは多分若くても二十代後半だから結婚したくない人なんだろうに諦めきれないんだね。
 って言うか知ってるだけでも結構なイケメンで有能な男性が独身なのは未婚女子が諦めつけれず晩婚になっちゃうよ!!

「ともかく長がずっといないのはまずいから帰ってこい」

 あ、ついにお願いから命令形になっちゃった。

「はぁ、後任見つけて引退しますか」
「ならぬぞ、それにお前ほどの能力持ちは中々出てこぬぞ」
「いないならいないでなんとかなりますよ」

 しれっとしてるリックさまも困り顔の陛下もしっかり食事は味わってる。器用。
 マナー的にはアウトなんだろうけど忙しい人たちはこんな感じで食事をとってるのかも?

「しかし、海のものは確かにうまいな」

 おっきな鮑をスライスしてステーキにしたのを食べて納得したらしい陛下はお代わりを頼んだ。

「王宮でも魚はあんまり出ないのですか?」

「うむ。取り寄せ可能といっても鮮度も落ちるしな。ましてここまでの大物は海の領地の者もなかなか獲れんだろう」

 ん~まぁ鮮度が落ちると生臭くなるし、塩味だけだとそこまで食べたいものでもないのかも?マジックボックスだとあんまり鮮度保てないのか。

「普通の漁師は魔獣などでたら漁には出んからそもそも味を知る機会などなかろう」

 ふえー、カマランの海おかしかったんだねぇ。まぁおっちゃんは大きいのが出たら困るって言ってたから通常の漁では出てこないんだろうけど。

 普通に獲れる魚で十分なのであんな入れ食いは勘弁だよ。

「アッガスの海はあまり魔獣の報告はないが、このクランゴなどは獲れるのか?」

「さぁ、アッガスの資料を見てもあまり詳しく載ってないんです。魔獣は稀に出たようですので調べれば棲家を見つけられると思います」

 ジュリアスさま、すでに情報仕入れてたんだね。

「魔獣は出ないに越したことはないが食べられるのは大歓迎じゃしの」

 うーん、クランゴ50~100cmとエビ10cm前後・・・クランゴのがいいかも。魔物のが味が濃くて量も取れるからなぁ。


「アッガスについてはグレーデンに任せて良いと思うが流通経路はどうする?」

「魔の森の横にはなるが街道を作ります。魔物避けも使いますが兵士の詰所も置きますので対処はできるかと」

 アッガスからの道か~。

「まぁそこは魔導省も協力しますよ」
 リックさまが協力してくれるなら魔物避けも完璧だね。きっと。
 
「王都をグレーデンに遷都した方がいいくらいな強固さを持ちそうだな」
 陛下が苦笑いしつつ言うと、
「マダムたち魔物が闊歩する近くで暮らすなんて発狂するんじゃないー」
 ってクラウスさまが返す。

「口うるさい戦えぬ者が増えても意味がないのぅ」
「辺境は辺境のままがいいですわ」

 お義父さまとお義母さまはお肉を頬張りながら言う。

『王都には王都たる役割があるから移動は出来んだろうの』
 今日はやけに静かだと思ってたら空気を読んで隅っこで静かに食事していたらしい。

 陛下たちには聞こえていないみたいだから念話で聞き返すと、
『王宮がある場所に役割があるからの、移転は出来んの』
 (まぁ本気で移動する気はないだろうけど、王都の方が魔素が薄いのと関係あるの?)
『アレが魔力を喰うから仕方ないの』
 (アレ?)
『まぁ古い盟約みたいなものに縛られておるのだ』
 (へぇ)
 アズライトはお年寄りだから何か知ってるんだろうけど詳しく言う気はないみたい。

「そろそろオヤツを出しますよ~」

 あんなにたくさんあった食べ物はすでにほぼ無くなって、ケーキや果物が山盛り出てきた。
 アズライトと大人しく食べれたポムとティムはオヤツとなるとテンション上がって踊り出す。

「はいはい~お前たちにはこっち~」
 ルルゥはクッキーとケーキを山のように持ったお皿を二匹に一皿ずつ出す。

「プッキュッ~」
「モッキュ~」
 ポムとティムはルルゥの指を掴んでお礼を言う。
 何気に仲良くなってるんだよね。あんなに追いかけっこしてたのに。

「王宮のコックも腕を上げたがここではまたさらに上を行くのだなぁ」

 チーズタルトを食べながら陛下はうっとり。チーズの種類も増えて濃厚さがましてるんだよ~。ベリーソースも添えてくれたりね。

「陛下、うちに研修に来てる子たちがとても熱心ですからすぐに王宮でも美味しいデザートが出ますよぉ☆」
 
 ルルゥが焼きたてのパイを切り分けてくれた。お芋のパイは美味しいけど夕食たっぷり食べた後はキツい。ジュリアスさま、もう口に運ばないで。
 私のお腹具合をよく知ってくれてるので配分よくしてくれるけど、たまに美味しくておすすめな気分になるらしくてたくさん差し出してくる。どう頑張ってもお義母さまほどは食べれないよ!

「そういえば、アーレン・ポッド氏はアルマンドにマーベルハントのペーター卿と向かったのだがアルモンドは少しごねている」
 何をごねるんだろ。
「特効薬に権利は自国の者が作ったのだからアルモンドにあると」
 ああ~。
「だがカイダールは国籍を移していなかったし、ポッド氏と母君住んでいた村は感染が発覚した時点で放棄地とされ国から抹消されている。あの村の民全て難民と言う立場なのだ」
 救助や援助をすることもなく捨てるって。
 なんて鬼畜な所業。

「話にならないし、カイダールの遺産の権利はリーシャの物だからな。ポッド氏は亡命と言う形でレイドラアースに受け入れることになった」
 ん?
「アルマンドでの薬の頒布は諦めるそうだ」
 あちゃ~。
「無事戻ってこられますか?」
「護衛は付けてあるし、ペーターは国使だからな。無茶なことはされないはずだ」
 国使に何かあったら開戦しちゃう!
「共同権利でお互いに協力できれば良かったのだがやはり無理だった」

 薬なんて独占しちゃったらダメだと思うけど大金の前には人命なんて軽くなっちゃうのね。
 
「正直ポッド氏がアルモンドに残りたいと言っていたらもっと面倒になっていた。リーシャ嬢がポッド氏受け入れたことで彼の信用を得られたことが良かった」
 お兄さんがこっちに来てくれてなかったらそもそもアルモンドの権利にされてたと思うから全部お兄さんのおかげだし、そもそも私何もしてないんだ。

「今も感染で苦しんでいる人がいるのに権利ばかり主張してるんですか?」
「そうだな。そもそも感染者を助ける気はないのだろう」
 なら薬要らないじゃん!
「外貨を得る餌にしたいといったとこかな」
 
 なんだろう。感染したら見捨てるってどんどん人口減ると思うんだけど、感染力とか知らないのかな?

「近いうちにペーターは卿とポッド氏が帰還する。ナタリア夫人の棺の移動も済んだから葬送の儀の日程も出るだろう」
 ペーター卿はお母さま従兄弟に当たる人らしい。
 お母さまの葬儀も正式にはしていなかったから改めて葬儀をするらしい。
 あのクソハゲ、ほんと腹立たしいなぁ。
 
「それからナタリアとセラーナ、カイダールの遺産だが葬送の後に財務官の立ち会いで行つもりだ。それでいいか?」
 遺産ってなんだろう?お金ならマーベルハント家に返した方がいいんだけど。

「わかりました。よろしくお願いします」
 まぁ貰ってから考えよう。
 引き継いだ隠し部屋の中身で十分な財産だと思うんだよね。まだあるって不思議。

「ところでそのトカゲはリックが報告してきていた古代竜か?」
 
 おっと、今更?いっぱい食べてる時に気にならなかったんだろうか?

「そうです。過ごしやすいサイズになってもらっていますが水竜だそうです」

「・・・辺境はなんでもありなのだなぁ」

 ん?アズライトは王都寄りの滝に棲んでたよ?
 陛下に言おうと思ったらジュリアスさまが首を横に振ったのでお口チャック。

「実際のサイズで出会っていたら食材として狙ったでしょうからこのサイズで行動してくれていて運がよかったです」

 あー、嬉々として討伐しそうだよね。

「そ、そうか。被害が出ずにすんで良かったな」

 災害級の古代竜とグレーデンの騎士が戦ったら大地抉れちゃってたよねー。

『ふん、挑まれたなら木っ端微塵にしてやったわ』

 アズライトってばそんなこと言うけど、多分無傷では済んでないよ~。

 オヤツも大量に食べてから陛下はリックさまを羽交締めにして転移陣で帰った。
 リックさまはまたすぐ戻ってきますって。




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