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二章

133話

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「グレーデンがどんどん繁栄に向かって羨ましいばかりですねぇ」

 ジェイクに抱っこされて、授業にため離れにやって来て畑と池を見たリックさまの感想がこれ。

 どうも魔素がムンムン漂って土壌が良くなって、少し乾燥気味な土地に池が出来たことで潤いが加わってさらに豊穣に向かいそうらしいです☆

 魔素ムンムンは魔の森が出来やすくなるからダメじゃん?って思ったら古代竜のナワバリに悪さする魔物は来れないから良いんだって?

 元々が魔素濃いめの土地だって聞いてるんだけど本当に大丈夫かな?

「リーシャさまがこちらに嫁がれたことは王家にとってもグレーデンにとっても最良だったということですねぇ」

 しみじみと溜息を含んだつぶやきをされた。

「?」

「もしですよ。今のグレーデンで起きている魔素の上昇やレアな古代竜を迎えるなどが王都で起きると色々な軋轢が生まれるんですよ」

 魔の森の生成が起こらないなら王都でも大丈夫なんじゃ?いや王都に居たかったわけじゃないけど。

「どのみちグレーデンの一族の様に魔素の濃さに対応できて魔物が増えようが災厄クラスのドラゴンが現れようがすぐ対処できるなんていうのは他には北のホーン家ぐらいでしょうね」

 うわー、マジですか。アズライトって災厄扱いなの?

 ジュリアスさまがわりとすぐ受け入れちゃったから深く考えなくても良いと思ってた。

「池を作れるくらい大地に穴を掘れるモニパルもおかしいんですがね・・・」

 ポムもか。クッキー欲しさについて来た愛玩動物なのに。

 ティムも風の操作が上手かったからすごいかも?

「規格外のあなたの側には規格外が集まるのか・・・」

 物凄く小さい声で呟いてたけどしっかり聞こえたから!

「ポムはジュリアスさまが拾ったしティムは勝手に居着いてたし、アズライトはパバプを取った責任だから私のせいじゃないですぅ」

 パバプ欲しがったのは私だけど・・・。

「・・・グレーデン家の250年の歴史の中でドラゴンを住まわせたとか加護持ちの魔獣を使役した話はないのですがね」

 えー。

「グレーデンの騎士がドラゴンを屠った記録は多々あるんですが」

 え?そっちの方がすごくない?

 リックさまの物騒なお話を聞きつつ離れに入って部屋に向かう。
 
 すでにカンガリー教授とジョシュー先生が魔道書を開いて議論してた。

「おお、ガーランド卿、リーシャさま、おはようございます」

 三人とも王都で付き合いがあったようでこちらに着いてからすぐに魔導書談義もしてたみたいで、挨拶も略式ですぐに席に着く。

「今日はポーションでしたか?」
 
 ジョシュー先生がリックさまに尋ねる。

「まずは普通の傷薬の調合からですかねぇ」

 なるほど~って頷きながら素材を出して来てくれる。さすが助手先生です☆

 簡易錬金台を設置して、調合レシピと手順を確認して。
 まずはリックさまがお手本を見せてくれる。

 さすがの手早さと優雅さ。
 薄く均等な魔力を素材に丁寧に流してるのがわかった。

 調合、調薬は母がやってたのを見た記憶はあるけど、その当時は魔力の流れとかを意識していたはずもなく。

 私が学んだのは本の中だけなのでとてもエキサイティングな気持ちになった。

「やってみましょうか」
 リックさまが私に席を代わってくれて並べられた素材を自分で選んでやるようにって。

 すり潰した薬草三種類と精錬水をを順番に混ぜるだけ。
 魔力を薄く均等にが何気に難しい。

「っあ!」

 一気に魔力を流しちゃって失敗。

「・・・今の間違いポーション類でやってしまうと爆発します」

 え!?

「なのでサーキス卿が何故あなたを止めたのか理解できますね?」

 失敗作をしげしげと観察しているリックさまと何か微笑ましい状況を見たような顔のカンガリー教授。

「とんでもない魔道具を作り上げるのにのぅ」

 陛下に渡したやつや魔石に彫刻していることがそこまでだったの!?

「師が良かったのでしょうが強運だっただけなのかもしれません」

 えええ・・・。そんな危ない橋を渡っていたの?

「魔力の放出を自由自在に出来るようになるまでポーション類作成は禁止です。魔石を扱うより繊細な感覚が必要で持っていかれる魔力の量が違うのですよ」

 ん~、一応本に載ってたけどそこまでか~。
 勝手に作って爆発起こしてたら大変だったね。

「わかりました・・・」

「魔道具の中でもミスリルやオリハルコンを扱うのはポーション並みにごっそり魔力を取られますからそちらも当面禁止です」

 マジか。陛下のお守り作った時そんなことなかったけど、まずかったんだね。


 一旦お昼ご飯休憩を取ることになったので、ニーナがお弁当に持って来た分を並べてくれた。

「本当にここの食事は素晴らしいですね」

 リックさまがルルゥ特製ソースが使われたサンドイッチを頬張りながら目をトロンとさせてる。

「そうなんじゃ、ワシここに腰を落ち着けることができて人生最大の幸福を得たわい」

「本当に羨ましい限りです。食事も環境も良く、秘伝の魔導書も見放題なんて。私もこっちに永住したいですよ」

 ひえー!サーキスさま系スパルタのお方が増えたら怖いからヤダ~。

「そういえばリーシャさま、この魔導書の白いページはなぜ何も書かれていないのでしょう?」

 ほえ?白いページなんてあったかな?

 5冊出してあった中の赤い表紙の魔導書を開いて見せられた。
 普通に魔法陣と構築式、説明文が載ってる。

「・・・?」

「こっちの書にも無地のページがたくさんあります」

 ジョシュー先生が見せたページも同じくびっしり書かれてる。

 書を受け取って全ページをパラパラして確認してみたけど白いページはない。ちょっとボヤけてるのはあるけど古いから仕方ないよね。

「全部白くないですよ?」

「「「は?」」」

 ・・・。

「・・・そうですか。これらはセラーナさまの蔵書だったものですか?」
「おそらく。全部母からもらったので・・・」

 隠し部屋の中身丸ごとね。

「午後はカンガリー教授とジョシューとで魔導書の確認がしたいので今日はここまでにして良いですか?」

「はぁ・・・良いです」

 元々カンガリー教授とも半日くらいが授業だったし。

「魔力の流し方はしばらく魔石に薄く纏わせることを意識して訓練してください。明日も傷薬を作りますよ」

 魔導書が気になって仕方ないらしく早々に離れを追い出された!私の離れなのにね!
 白いページが見えない私では検証に役立たないから必要ないみたい。

 いきなり時間が出来たのでジェイクの抱っこでニーナと畑を見に行く。

 薬草もハーブもわさわさ育ってる。

 ポム達が畑で妙なダンスをしてるのを見つけた。何してるのかしら?

 私を見つけてダーッとかけて来て登ってくる。

「モッキュン」
「プキュー」

 私の服をクイクイっと引っ張ってあっちに行けとばかりに誘導する。

「なあに?」

 言いなりになって指定された方向に進むと昨日植えたバニラがある。


「プキュキキュキーー、ンーーキュン」
「モキュッーキュキュン」
 身振り手振りで何か伝えてくるんだけどさっぱりわからん!

「・・・魔力を流してほしいと言ってるように見えます」

 ニーナが翻訳?してくれた。マジか?
 ポムとティムを見るとうんうんってしてる。

「そうなの?」

 どうやら正解みたいなので流してみるか。

 爆発しないよね!?

 極力少なめに流してみたらバニラと隣のナードがワサワサっと揺れて少し大きくなった。

 なぜ!?

「ンキュ~♡」
「キューーーン♡」

 ササっと身を取って匂いを嗅いでる。

 バニラの匂いでマタタビを与えた猫みたいになってる。

 バニラはマタタビだったのか?

 とりあえず完熟してるバニラとナードをジェイクとニーナが収穫してくれたので本邸に戻っておやつを作ってもらうことに。

 海の島で採った分もあるけどまぁすぐ無くなるだろうからすぐ収穫出来るのはラッキーね。

 ナードも問題なく育つみたい。

 バナナケーキもいいね。ピンクな仕上がりになりそうだけど。



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