上 下
122 / 701
二章

118話 タコはやばいらしい

しおりを挟む
 窓から光がチカチカ。
 海の反射かしら。

「リーシャ、起こしてしまったか?」

 ジュリアスさまがすでに起きていて私の頭を膝に置いて海を眺めているよ。

「んん~、大丈夫です。おはようございます」
「おはよう」

 どうやらカーテンを開けて朝焼けを堪能してたよう。

 すでに日は登っていて晴天を映した海は見事なエメラルドグリーンです。

「綺麗ですね」
「ああ」

 もうすぐ漁師さんが戻って来てお魚が並ぶそうで、ニーナに手伝ってもらって準備して部屋を出た。

「おう、おはよう。じゃぁ出るか」

 ヴィアナさまは朝は起きないと決めているそうでアルジェさまの案内で海辺の朝市?に向かいます。

 クラウスさまとルルゥとチェイスさんは普通に着いてくる気満々。
 
 ニーナとサラ、メルはお留守番。
 騎士さんたちは護衛なのでご一緒です。

 アルジェさまの馬車にジュリアスさまと乗って。他の人たちは馬です。

「そういえば、お前の馬車、何か凄そうだったな」

 おっきさ?

「車軸とかゴツくないか?」
 
 あ、速度に対応した部分だ。

「ああ、馬たちが早駆けし過ぎて車体が安定しなくてな」
「馬すごいな!?」

 魔道具のことはあまり広めないんだっけ。
 まぁレイドラアース国内でも広めてないから仕方ないか。

 アルジェさまの馬車は紺色を基調に銀で飾り付けされててかっこいい。

 うちのはゴツい馬が引くのにメルヘン☆

「ああ、着いたな」

 海辺から少し離れたところに簡易な作りの屋台のような建物が数件並ぶ。
 買い物に来たっぽい人たちが結構いる。

「うちには直接持って来てもらっているが住民たちや食堂の者が買い付けに来ている。昼前には仕舞いだからな」

 アルジェさまは人気者のようですれ違うたびに笑顔で挨拶されてる。私たちも貴族なのが丸わかりだから深々と頭を下げられる。
 買い物の邪魔になっちゃうなぁ。
 ついでにジュリアスさまに抱っこされてる私を「優しいパパね」みたいな温かい目で見てるし。

「俺たちも魚を買いに来ただけだから気楽に過ごしてくれ」

 お店の人たちが「寄って行ってください」って声をかけてくれる。

「気になるものが見つかったら言ってくれ。どの店でも良いぞ」

 軽く《鑑定》しながら見てるんだけど、タコとエビっぽいのがない。

「リーシャちゃん、あのパケー夕はどう?」

 ルルゥが鮭っぽいのを指指す。
 使い勝手が良さそうなので買ってもらおう。

「うん、あれも良いね」

 50cmから1mくらいのお魚を数種類、貝類も買ってもらった。
 貝もデカい。
 ちっこいのを採ったらダメなのか生まれてすぐデカいのか?

「タコいない・・・」
「嬢ちゃん!そりゃむちゃだよ!タコなんて普通の漁師には無理だって!」

 ええ!やっぱり魔獣なん?

「リーシャ、タコは島に行ってからな」

 あれ?やっぱ自分たちで狩るのね?

「島に行くのかい?そりゃありがたいね。アイツら減らしてもらったら漁がしやすくなる」

「お、そんなにいるのか?」
「確認できてるのは三匹だ、だがあの辺りは特にでっけぇのが出るからな」
 
 借りる島、物騒!船で行けるの!?

「やったな!リーシャさま!いっぱい食えるぞ」

 うっさい!全然やってない!チェイスさんもヤベェ人だった!!

「いやぁ、これは楽しみです」
「陸と違って海の上でどうやろうか?」

 海で何する気か!?サーキスさまとアモンさんも何かおかしいよ。

「ハハハ!頼もしいな。そろそろ俺が出ようと思っていたがジュリアスのおかげで楽させてもらう」

 アルジェさま、別荘貸してくれる前に一掃しようとして?

 いや?でもデカくてもタコなら良いのか?

「嬢ちゃん、船がもう一艘戻ってくるから船着場行ってみな!タコみたいな大物はいねぜが、売れないから還す奴の中に気にいるのがあるかもしれねぇ」

「おお、それは良いな、ダン!早速見に行ってくる」
「へぇ。領主さま。また釣りに来てくださいよ~」
「わかった!」

 ダンさんの情報で船着場に。
 ちょうど魚を降ろしている場面に間に合った。

「よぉ。エイガー、ちょっと成果を見せてくれ」

 アルジェさまが声を掛けると作業をしていたおじさんが手を止めてこちらに来た。
「領主さま!」
「うちの客人が変わったモノが好きでな!何か無いか?」

「変わったモノ?さて・・・」

 おじさんは網を手繰って探してくれる。

 色とりどりの1m前後の魚の中に甲殻類っぽいのがいた。

「今日はハズレはいないっすわ。変わってるって言うならこれとこれくらいですかね」

 そう言って出て来たのは半透明な水色のタコ。
 タコいるじゃん!!

「ペオウンは死ぬと水になるから食えないんですわ」

 何ですって!!?何てこった!!

 次に出されたのが極彩色のフナムシ!!!??50cmくらい!!

「これは海の掃除屋だから逃すんですわ」

 ・・・イェンゲ(フナムシ)はシャコの味らしいけど掃除屋なら食べちゃダメだね。
「あー、コイツは島でたまに大発生するからちょっと嫌なんだよ」 
 アルジェさまが渋い顔。 

 んー?ダイオウグソクムシとか五色エビって思えば食べれなくもない?

「・・・これ蒸しても焼いても茹でても美味しいですよ?」

「「「「は!!!??!!」」」」

 いやこの世界クモ食べるくせになぜグレーデンの君たちも「信じられない」って顔してるん?

「昨日のヅモヴィ(ヤシガニ)より脂の乗ったクリーミィな味(らしい)です」

「ふぁっ!?」

 エイガーさんがかなりショックを受けたよう。私はタコが溶けちゃうのがショックだよ。

「・・・ヅモヴィは俺の好物なんだがヅモヴィよりうまいと!?」
「いや、好みによるかと・・・」

 ひぃ!おじさん、イェンゲを握り潰しそうな勢いでプルプルしてる。

「俺はいつもヅモヴィよりうまいものを手放していたのか・・・」

 そんなに絶望しなくても。

「エイガー、明日はイェンゲをたくさん漁って来てくれ。味見会をしようではないか」
「領主だばっ!!」

 泣き始めちゃった。でも掃除屋食べ尽くしちゃダメじゃん?

 エイガーさんからもお魚と貝を売ってもらってお屋敷に戻った。

「島にもイェンゲはいるから試してくると良い」

 私は別に・・・。エビかカニの方が好き。



 お昼ご飯を頂いてから、島に向かうことに。

 再び船着場に行くと貴族仕様の豪華なキャラベル?で島まで送迎してくれるらしい。

「はぁー、船って久しぶりだよ」

 クラウスさまは乗った事があるんだ。

「この船には魔物避けがしてあるから心配ないぞ」
「はぁ・・・」
 ジュリアスさまが教えてくれる。海の魔物って。やっぱクラーケンとかそう言うやばいやついるんだ!?

 なぜか騎士さんたち含めみんなウキウキしてるんだよ。
 筋肉鍛えるのに余念がないとか思ってたけど、ただの戦闘狂っぽい。

 到着した島は結構大きい。
 船を付けたところは砂地で。ちょっと見ただけでも貝とカニが見つけられる。
 普通に小さいのいた~。

 



 





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

三回も婚約破棄された小リス令嬢は黒豹騎士に睨まれる~実は溺愛されてるようですが怖すぎて気づきません~

鳥花風星
恋愛
常に何かを食べていなければ魔力が枯渇してしまい命も危うい令嬢ヴィオラ。小柄でいつも両頬に食べ物を詰めこみモグモグと食べてばかりいるのでついたあだ名が「小リス令嬢」だった。 大食いのせいで三度も婚約破棄されてしまい家族にも疎まれるヴィオラは、ひょんなことからとある騎士に縁談を申し込まれる。 見た目は申し分ないのに全身黒づくめの服装でいつも無表情。手足が長く戦いの際にとても俊敏なことからついたあだ名が「黒豹騎士」だ。 黒豹に睨まれ怯える小リスだったが、どうやら睨まれているわけではないようで…? 対照的な二人が距離を縮めていくハッピーエンドストーリー。

婚約破棄にも寝過ごした

シアノ
恋愛
 悪役令嬢なんて面倒くさい。  とにかくひたすら寝ていたい。  三度の飯より睡眠が好きな私、エルミーヌ・バタンテールはある朝不意に、この世界が前世にあったドキラブ夢なんちゃらという乙女ゲームによく似ているなーと気が付いたのだった。  そして私は、悪役令嬢と呼ばれるライバルポジションで、最終的に断罪されて塔に幽閉されて一生を送ることになるらしい。  それって──最高じゃない?  ひたすら寝て過ごすためなら努力も惜しまない!まずは寝るけど!おやすみなさい! 10/25 続きました。3はライオール視点、4はエルミーヌ視点です。 これで完結となります。ありがとうございました!

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

断罪現場に遭遇したので悪役令嬢を擁護してみました

ララ
恋愛
3話完結です。 大好きなゲーム世界のモブですらない人に転生した主人公。 それでも直接この目でゲームの世界を見たくてゲームの舞台に留学する。 そこで見たのはまさにゲームの世界。 主人公も攻略対象も悪役令嬢も揃っている。 そしてゲームは終盤へ。 最後のイベントといえば断罪。 悪役令嬢が断罪されてハッピーエンド。 でもおかしいじゃない? このゲームは悪役令嬢が大したこともしていないのに断罪されてしまう。 ゲームとしてなら多少無理のある設定でも楽しめたけど現実でもこうなるとねぇ。 納得いかない。 それなら私が悪役令嬢を擁護してもいいかしら?

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

処理中です...