ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

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二章

114話 ビヤの実は強烈。

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 宿の朝ごはんはパンとお豆のスープ。
 パンは固いやつなのでスープに浸して食べる。
 お肉も塩で焼いたやつだけど、魔の森産じゃないからさっぱり?風味。
 国境の門付近は魔の森が発生しにくい土地らしい。
 人の出入りが激しい場所に魔物がいっぱい出たら困るもんね。

 チェイスさんやアモンさんたちは昨夜絶対飲んだなって感じ。臭いがするとかじゃないけどなんかわかるよね!

 ルルゥについってったアズライトはすっかり餌付けされたみたいで、今日もべったりしてる。

『新婚旅行と言うのは初めて聞いたが夫婦の間に居座るのは申し訳けないからの。帰還するまではこの者に世話になるぞ』

 旅行期間中はルルゥにつきっきりと宣言された。何故か振られたみたいな感じ。
 きっとグレーデンに帰っても厨房から離れないと思うよ!

 みんなが馬に騎乗して私たちも馬車に乗って出発。
 少ししたら街道を逸れて停車した。
 ジュリアスさまに抱っこされたまま降りたら普通に原っぱ、この奥に行くんだって。
 アラン、ジェイク、ルルゥ、チェイスさんで徒歩で進む。
 丘を越えて森?林かな?

「リーシャ、良かったな。ちょうど見頃だ」

 着いた場所には山百合が一面に咲き誇っていた。

「うわぁ!」

 視界全部色とりどりの百合。
 しかもデカい!
 私の胸元まで高さがあって花も頭一個分はある。
 匂いは少し漂う程度。

「ここは昔父上が迷子になって見つけたらしい」

 迷子!街道から複雑な道では無かったと思うけど、なんでだろう。

「父上はわりとよく迷う」

 お義父さま、天然疑惑再び。

「でも誰も採ったり見に来たりしないものなのねぇ」

 そう、人の手が入ってる気配が一切無いの。
 まぁ国境近くでお花を摘んだりしないかなぁ?

 しかも食用でもないし。球根が食べれるとかでもないっぽい。
 は!花より団子って思われちゃう!

 でも百合はやっぱり綺麗だよ。景色は素晴らしい。

「持って帰るか?」

 うーん、アイテムボックスに入れれば枯れないし、少しなら離れのお庭に植えるのも良いかな。記念になるし。

「球根ごと掘れますか?」

 アランたちが素早く動いて30株くらい放り起こしちゃった!
 5株くらいで良かったかな。誰かにお土産で押しつけよう。

 掘ったところを均してってチェイスさんがやってたら、おっきなミミズが出て来た。一瞬の間に剣で薙ぎはらったけど、ミミズさん悲運。2mが出て来たらそりゃ仕方ない。合掌。

 山百合は私のアイテムボックスに収納して。

 ふと森の木々を見てみたらおっきな実がなってた。

「あらぁ久しぶりに見たわ」
『これはハズレの実じゃ』

 ハズレって名前なの?

 《鑑定》してみたら〈ビヤの木。実は強烈に酸っぱい。食べるとビャっとなったのでビヤと呼ばれる。穀物酢っぽいけどかなりキツい。種は酒作りに使える〉

 ・・・お酢!!!強烈に酸っぱいってどう使えば良いの?
 って言うより酒って!!!詳しく視て見たらどうも種麹っぽい。

「ルルゥ!!これグレーデンにもある?」
「あるけど必要ないから結構伐採されちゃってるわねぇ」

 なんだと!!!もったいないお化け出るぞ!

「これがあるとマヨネーズとかドレッシングとか使えるの!種も使えるの!!!!」

「ウソぉ?」
「これはかなり酸っぱいぞ?」

『これは痺れる前に咽せるぞ?』

 アズライトはとりあえずだまれ。

「酸っぱくても良いから採れるだけ採って欲しいの!」

 アランもジェイクも嫌そうだけど採り始めた。
 新人の頃、変な味の実は草は粗方食べさせられるらしい。野営の時とか食べれるのと食べれないのを覚えるために。
 ビヤも体験済みなんだとか。

 チェイスさんもルルゥすらも微妙な顔。
 酸っぱい=腐ってるみたいな印象はこの世界でもあるんだね。

「帰ったらちゃんと食べられるって証明するから」

 新しい物大好きなルルゥにすら笑顔を貰えなかった。ビヤ、どんだけ~。

 ジュリアスさまも顔に出さないようにしてるけどちょっとブルーそう。

 かなりの酸っぱさなんだね。


 結構集まって、念の為挿し木用も確保して。馬車のところまで戻った。

 ニーナが戻ってきたら私達のために冷たいハーブティーとサンドイッチを用意してくれたので一服。
 
 ルルゥに簡易テーブルで野菜をカットしてもらって。

「樽みたいなの、無いかしら?」

 先に聞くべきだったと思いつつ聞いてみたら、樽出てきた。中くらいサイズの酒樽。

「・・・夜飲んだ分です!今じゃ無いですよ!?」

 じとっと見ちゃったから騎士さんたち必死に否定。疑ったんじゃなくて羨ましかっただけだい。

「ルルゥ、野菜ここに入れて、砂糖とお塩を少し入れてかき回して」

 私はさっきのビヤを取り出してチェイスさんに殻を開けてもらう。
 途端に物凄いツーンとした臭いが漂う。

「うへぇ!マジでキッツイ。リーシャさまこれどうすんっすか?」

「これをしぼって汁をさっきの樽に入れるの」

 予想よりすごい刺激臭。流石に私も食べれるのか心配になって来た。

「絞れって!!!??」

 めっちゃ非難がましい目で見られたけど、私はピクルスが食べたい。

 ルルゥが実をチェイスさんから取り上げて道具を使って絞って混ぜてくれた。

 使った道具と皿をすぐさま《洗浄》したのはさすが!

「混ぜたけどこのあとは?」

 匂いのせいでルルゥがちょっと咽せたけどちゃんと混ぜてくれた。

「んー、半日くらいしたら食べれるはず」

「・・・食べれるものなのか!?」

 チェイスさん半泣き。騎士さんたちもゾッとしてるみたいで少し遠巻き。

「お酒のつまみにも良いのに・・・あげないから」

「!!??リーシャさま!!」

 私飲めないのにね!悔しいからピクルスあげないでおこう。

『我は?我は食べて良いかの?』

 アズライトもビヤを外れって言ってたのに。

「アズライトは食べても良いよ」

 ルルゥの肩で謎のダンスを始めた。

「・・・酒は置いておいて俺も食べたい」

「ジュリアスさまは食べても良いです」

 ジュリアスさまがおずおずと聞いて来た。ジュリアスさまは嫌な顔し・・・てたけど、文句を言わなかったからね!

「あーぁ、リーシャちゃんが作るものは絶対美味しいって決まってるでしょ」

 ルルゥは刺激臭の中頑張ったからもちろん大丈夫☆

 ニーナたちがお茶や食器を片付けてくれたので馬車に乗って移動です!

 しっかし酸っぱい匂いは強烈だった。

「あの実にも使い道があったんだな」

「私的には種が宝物です♫」

「そうなのか?」

「少し時間がかかるけど良いものが作れるので期待していてくだざいね」

「そうか!楽しみにしていよう」

 ジュリアスさまがピンクの馬車空間でめっちゃ笑顔くれたよ!









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