ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

文字の大きさ
上 下
110 / 764
二章

間話 スノウリリィside

しおりを挟む
 長男に王命で嫁いできた嫁はとっても小さくてガリガリに痩せて細く明らかに手をかけられてない子供だった。
 それでも王都からの道中に多少手を加えたとルークが言っていたけど、私が見て来た貴族の子女には当て嵌まらないことに困惑したわ。

 グレーデン領には痩せ細った子供はいない。なんらかの事情で孤児になったとしてもすぐに親の仲間や子のいない領民に引き取られ大事に育てるから孤児院が無いの。
 もちろん領主家として補助もしているわ。

 だからウチの家族だけで無く随行していた騎士たちやウチの従者達が受けた衝撃は物凄い物だったと思うわ。

 幸いジュリアスにも私たちにもすぐ慣れてくれて、辺境と言う地に忌避も無く。

 陛下の無茶振りには腹が立ったけど、結果的には感謝しているの。

 ジュリアスは学園に入った当初は体格も王都貴族の平均くらいで自慢じゃないけど美形に育っていたからか、夜会などで年増の破廉恥女たちに薬を盛られて連れこまそうになったり、ねっとりと口説かれたりで女嫌いの傾向を持ってしまったわ。
 もちろん毒や薬には耐性を付けさせていたし、妙な誘いは回避していたわよ。

 当然情報が入り次第、苦情を入れて本人に報復をしたわぁ。

 だから年頃の女性に興味を持たず、年増の色気のある自信過剰な女は嫌っていて、ウチは下に二人男の子がいるし、義兄や義弟、義妹にも有望な子が居るから、婚姻は強要する気もなかったの。
 グレーデン領は血筋に拘って能力のない者に任せることは出来ない危険な土地だもの。継げる者がいるなら直系に拘らないのよね。

 リーシャちゃんは年上の肉感的な女が嫌いなジュリアスにとっては存在が尊いくらいよね。
 もちろん子供が好きとか妙な嗜好では無くてよ。リーシャちゃんはちっちゃいけどふとした表情が大人びてたり考え方はちゃんとしてるから子供扱いは出来ないわね。

 お嫁じゃ無くても娘として来てくれたとしても最高に嬉しい存在なんだけど、ウチからお嫁に出すとか考えたら泣いちゃうから、やっぱりジュリアスの嫁に来てくれたのが最良よ。陛下はジュリアスのことも考慮してくれたのね。


 王都の夜会に参加させるのは最後まで悩んだの。だって今まで外に出されたことがない子がいきなり私たちの家族として、あのハーボットとオレイユの弾劾があるとわかっている場に連れていくのはねぇ。

 会場ではリーシャちゃん居心地悪そうにしていたけど、年配の貴族のほとんどはリーシャちゃんが思っている意味での注目を浴びてるわけじゃなかったの。
 セラーナさまに生写しで、カイダール卿が失踪後に一切表舞台に出てこなかったナタリアさまの面影もあるリーシャちゃんを見て驚いていた人の方が多いの。
 あと私とお揃いの生地のドレスね。

 まぁ若い子達はナタリアさまやセリシアさまのお顔を知らないだろうから、辺境伯家と言う特殊な家にいきなり嫁いだ謎の《子供》に妬み嫉みを向けているのもいたけど。
 グレーデン領に行きたくないとしてもウチの財力や権力に群がりたい人間は多いし、ジュリアス自身はデカいと言っても良い男なのよ。

 くだらない連中はスルーして、ルルゥや他の護衛たちにチェックをして貰い、今後の付き合いを見合わせるリストに追加したわ☆

 
 陛下がハーボットとオレイユを呼び、カイダール卿の死を発表したとき、リーシャちゃんは想像していたより冷静で泣くことも罵倒することもなく淡々とオレイユ男爵を切り捨てた。
 カイダール卿が行方不明と発覚した後、マーベルハント前伯爵や付き合いの深かった友人たちは必死に情報を集めて長く探していたけど10年も経てば誰もが死を受け入れるしかなかったと聞いている。



 夜会の翌日、ルドガーさまが陛下と話をして来た。
 カイダール卿を害したのはハボット侯爵の方は禁止薬物の製作を断ったことと、イダルンダ・オレイユの方は孤児売買、奴隷斡旋を知られたこと、ナタリアさまへの歪んだ愛情が絡んでいたからだろうと。
 まだまだ今後取調べで出てくることもあるだろうけど、一番驚いたことは、マーガレットさまのことね。

 夫の違法商売を知って、リーシャちゃんが普通に育てば餌食になりかねないから見栄えが悪いように夫の関心を引かぬようにしていたのではないか?と陛下が仰ったそう。

 確かに孤児売買や奴隷斡旋などと如何わしい生業をしている者が今のリーシャちゃんを見ればすぐに売り飛ばすに違いないわ。

 マーガレットさまはイダルンダと血の繋がらないリーシャちゃんなら年頃になれば危ないけど、血の繋がった娘なら売ったりはしないだろうと娘にだけ関心が向くようにしていたらしい。

 なぜそこまで?と思えば、マーガレットさまは夫に愛は無く、カイダール卿が存命時にナタリアさまとの付き合いもあり、仲が良かったことからリーシャちゃんをなんとか守ろうとしたのでは無いか?と陛下のお考えだそう。

 同じ母親としては実子キミーへの愛が足りない気もしなくは無いけど、嫌っている夫と良く似た娘が苦手でも仕方がないのかもしれないわね。あの子少し会っただけでも強烈だったし。政略結婚で産んだは良いけど人任せで自分で育ててないのは、まま聞く話しではある。

 ナタリアが実家に戻るなりしなかったのも、オレイユの領地にカイダール卿が大事に育てていた薬草畑があってそれを他者に委ねたくなかった、夫を待ちたかったなどの想いがあったのでは?と。

 全部推測だそうよ。真実は本人のみぞ知るのね。

 マーガレットさまは修道院を希望しているそうだけど、ご実家が叶うのなら引き取りたいと言ってるそう。ただキミーはイダルンダ・オレイユの生業に絡んでるそうで一緒には行けないから、マーガレットさまはおそらく実家には行かないのではないかと。

 リーシャちゃんが抱えていた問題は思ったより大変だったわ。
 
 でもアーレン・ポッド師に対しても穏やかに接して、立派だったわ。

 私の16の頃だったら多分もっと荒ぶって訳もわからず罵倒したかもしれない。
 
 リーシャちゃんが貴族社会に慣れてなくて、見た目もまだまだ庇護すべき子供のようなのに、貴族令嬢としても辺境伯家の一員としても恥ずかしくない、辺境伯夫人としてちゃんとやって行ける風格を持っているのは本当にびっくりよ☆

 最初に痩せ細った姿を見たせいでどうしても過保護にしちゃうけど、立派な夫人として対峙しないとなのよ!

 でも可愛いから、そうねぇ。私は一生可愛い娘としてみちゃうわね。
 
  

 さぁ、今日も可愛い格好をして貰いましょう。ラベンダー色のが良いわ♡


「リーシャちゃん!今日はこのドレスにしましょう♡」
 

 新婚旅行に行っちゃったらしばらく堪能出来ないから今日は私のお膝に乗ってちょうだいねぇ♪



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

処理中です...