上 下
3 / 484
一章

2話 いきなり王様と謁見?

しおりを挟む
 自分の情報を確認してたら扉をノックしてニーナが入ってきた。キャスターワゴンで軽食と飲み物を運んできてくれた。

「お加減はいかかですか?」
「特に問題ないと思うけど頭の瘤が痛い」
「あら。これは大きなコブですね。しばらく痛いと思いますよ」
 ちょんちょんと薬を塗りつつそのまま髪を綺麗にまとめてくれた。器用ー。
  
 食事をしていたら廊下が騒がしくなって扉がバーン!!
 着替えてたらどうしてくれるんだよ!

「悠長に飯を食っている場合か?!お前一体王宮で何かしたのか!?陛下から呼び出しだぞ!すぐ準備しろ」
 入ってきた時よりすごい勢いで出ていった。

 王様に会うための衣装なんて持ってない。
ので王宮で何かしでかすなんてことは無理でしょ。
 義姉の衣装はフリフリ派手目だからお古なんとかリメイクしてるけど王城では無理そう。
 母の衣装ならと思うけどお直し調整はすぐにはできない。
 学園の制服一択だな。致し方なし。

 制服で玄関に着くと無茶苦茶嫌な顔されたけど無いもんは着れない。
 馬車には頭は寒そうなのに腹回りは肉布団巻いて暖かそうな父と二人で乗る。
 義母義姉はお留守番か。目立ちたがりっぽいのに。

 王城につくと謁見の間じゃなくて少し狭目の広間に案内された。
  
 何事かわかんないから父の顔はこわばってて目をキョロキョロさせてる。小物感。

 侍従の人にお茶出してもらって待っているとやっと王様が来て下さったみたい。

「イダルンダ・オレイユ男爵、リーシャ嬢よく来てくれたね。リーシャ嬢に是非引き受けてほしい事があってね」

 目の前の綺麗なおじさんがやたらぐいぐいにじり寄ってくる。

「この魔道具直してくれたの君だよね?」

 手元に渡されたこれは学園の空き時間になんとなく魔道具教室を見学して置いてあってモノの裏を覗いたら故障箇所がわかったのでいじったら直っちゃったモノ。
 それから授業時間外にこっそり参加するのが許されて密かな楽しみだったけどたった今親にバレた・・・。あとで怒られちゃうだろ。やめてよ、おじさんー。

「こういった古いものを大事にしてくれる君に辺境伯の奥さんになってほしい」

 なんかよくわからん理由だけどあの家で堅苦しく日陰にいる生活より未来がありそう。
  
「オレイユ男爵はこのリーシャ嬢に大した愛情もなく婚約者も決めてないそうじゃ無いか?結婚が可能な年齢なのだからすぐにでも辺境に向かってほしい。馬車や護衛も用意する」

 愛情がないって知ってるけど、外から撃たれたらダメージでかいな。至れり尽くせりだけど心に散弾かましてくるな。
 学園はあと少しで卒業式だったのにちょっとしょんぼり。

「この娘は体の成長が遅く女としての役割に不安があります。結婚などむりがあるのではと縁談はお断りしていたのです」

 うん。失礼だな!もっともなこと言ってるけど多分探してないし興味もなかっただろうし良さげな縁談来てたら義姉が奪ってると思う。
 そもそもあまり外に出してもらえなくて、お茶会に行けても姉のお下がり衣装でダサくて、お手入れもそう出来てないのに出会いなんぞあるか?

「魔力を持つ子供の中に栄養を魔力が吸ってしまい体に栄養が回せなくなる子がいる。その子は通常の半分も食事が出ていなかったと報告されている。成長が遅いのも無理はない」
 
 家の中にスパイ。なにそれ~。
 ご飯半分以下だったのか。ペチャパイになったのはハゲ親父のせいか!
 ハゲ親父はダラダラと冷や汗をかきながら俯いてる。

「あまり使いたくはないが王命とでも思ってくれ。その子には辺境で気軽に暮らしてほしい。辺境伯はちょっと大雑把だがいいやつだ。心配ない」

 綺麗なおじさん=王様が優しい笑顔で頭を撫でてくれる。

「この後馬車を貸すから持って行く荷物、連れて行ける人などの手配をしなさい。男爵、この結婚ではなにも利益はでない。そなたが冷遇した前妻の友人たちが怒っていることは伝えておく」

 いつもはいばり気味の父は風船が縮んだように大人しくなった。
 母、冷遇されてたのか。その寂しくなった頭皮がさらにハラハラっと散るように祈っとこう。

 帰宅後ほぼ自分のものがないので最低限の着替えと下着、教科書、本を詰めてふと思い出したので父に質問に行く。
「お母様の本やお洋服を少しいただいてもいいですか?ニーナも連れて行っていいですか?」

 両方許可を得たので母のものは肖像画と本、思い出のある衣装を数点、そして隠し部屋の中身は全てアイテムボックスに収納。隠し部屋はもう二度と使えないようにして消去。
 父の知らないモノだからいいよね?

 荷物を馬車に移動させてたら義姉のキミーが人の悪い笑みを浮かべて近いてきた。
「なにやったら辺境送りになるの?しかも辺境の人って体がデカいんでしょ?あんたなんて小さい子相手にされないんじゃない?」

 お義姉様は18歳でお遊びには誘われるけど結婚相手見つかってない。それなりの美人なのにね。衣装が下品でダサいって誰か教えてあげればいいのに。 
 しかも遊びまくりってバレてるっぽいから良い縁談なんて来ないと思う。

 私を揶揄ってる場合なのかしら?

 記憶戻って?二日でお嫁に行くことになった。
 
 辺境ってどんな感じなんだろう。







しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約者を奪われた少女は、敵国の王を守る剣となる。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,167pt お気に入り:192

君の屍が視える

ホラー / 完結 24h.ポイント:681pt お気に入り:7

全校転移!異能で異世界を巡る!?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:489pt お気に入り:884

【R18】後宮に咲く薔薇

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:3,235pt お気に入り:35

機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:689pt お気に入り:12

【R-18・連載版】部長と私の秘め事

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:4,133pt お気に入り:738

処理中です...