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私、マーガレット・クラエスは、特別裕福でもないけど、それなりな男爵家の次女として生まれた。
クラエス家は、王都からかなり離れた田舎に領地を持っているが、遠すぎるので父の弟に管理を任せて、王都の少し中心から外れたタウンハウスで一家で暮らしている。
私にとってはそれが普通で特に上にとか思ったことは無かったけれど、兄と姉は、学園の同級生を見て、もっと上の暮らしをしたいと言っていた。
父は、ごく平凡な善良なタイプだと思う。野心はなく、いつもの暮らしで満足していて、領民の暮らしが安定していれば問題はないって。
さすがに災害対策とか、何かの時を想定して蓄えようよって子供ながらに思うほど、のほほんな父なので、私は父に似たんだと思っている。
母は、親が決めた結婚でうだつが上がらない(母、祖母談)父と結婚したことは不本意らしい。
貧乏じゃないんだから良いじゃない。
だからか、ちょっと野心がある。自らガツガツ行きはしないけど、出来ればもう少し良い暮らしがしたいと、兄と姉の婚約相手を吟味して、持参金や繋がりに期待して?
母よ、貴女は多少美人寄りですが、兄と姉、私は地味で控えめな平凡な顔なので高望みは無謀です。
兄姉は、母寄りの考えを持ってて、ちょっと上昇志向があった。
学園に通うようになった二人は身嗜みに気を使い、流行りの髪型や衣装など着飾ることに余念がない。
親戚や両親の友人を見ているとみんな華やかで、うちの家族は地味だなぁって思ったけれど、兄と姉は、自分たちがあちら側だと思ってるっぽい。
私が十歳の頃、母の従姉妹のお茶会に連れて行かれた時、退屈でちょっとした出来心で席を離れた。
うちの庭にはない花を見て、他の花を見ようと奥まった場所に行ってしまった。
「きゃぁああああああああああ!!!」
目の前には男の人にのし掛かられた侍女らしき女性がいて、顔を真っ赤に息が荒れてたので女の人が男の人に襲われていると思って恐怖で叫んでしまった。
「な!!」
男の人が私の口を塞ごうと手を伸ばして近づいてくる。
尻餅をついた私の目線は男の人の腰の高さだった。
大きな男が迫ってくることが怖くて。
「いやぁーーー!!」
「何事ですか?!」
護衛の人や侍従がやってきて、その後からここの夫人とうちの母たちが付いてきた。
服を乱した男の人と動けずにいた女の人を見た夫人が顔を真っ赤にして男の人の頬を殴った。
私のことは侍従が抱き上げて運んでくれて、お茶会は解散になったものの、私と母と姉は客室で待機になった。
「もう!勝手にいなくなったと思ったら大変なことをして!」
母がプリプリしてる。
大変なことってなんで?
悪いのは男の人でしょ?
「秘め事を暴いたって良いことなんか何もないのよ!」
「秘め事?」
「お母さま~、この子に言ったって無理よ。この子は人のデートをうっかり見ちゃうこと多いんだから」
四歳上なだけの姉だって〈秘め事〉だなんてわかるわけないでしょ?わかるの?
姉は笑いながら母に言う。その時は大体姉も近くにいたから姉も詳しい。
姉は、私が今までに何度か見てしまった、男女が抱き合ってるとか口を合わせてた話を面白そうに話す。
ただその人物の特徴を話した時に母の顔が怖くなった。
「マギー?もう人気のない場所に言っちゃダメよ!」
母は私の肩に指をめり込まさんばかりに握った。
鬼気迫った顔に私も横にいた姉も怖くなって頷いた。
でも今までだって人気がない場所に行ってたわけじゃないんだけどな。
今日はただお花見てただけだし。
しばらくして、夫人が入ってきた。もう怖い顔はしてない。
「お待たせしてしまってごめんなさいね」
笑顔で私を抱きしめにきた。
「メリンダ、私やっと離婚出来るわ。婿養子の分際で好き勝手した夫の不貞現場をたくさん目撃者付きで見られたんですものぉ」
「え、離婚!!?」
「ええ、浮気は以前から疑っていたんだけどなかなか証拠が近めなくってぇ」
あの男の人は婿養子で、今日は妻が茶会で忙しいからとたかを括って、庭の片隅で情事に耽っていたらしい。
私はあれが男女の営みで夫婦間、恋人同士ですることだと初めて認識した。
今まで見たのは軽いものだったけど、確か別のお相手がいたよねって一人混乱していたけど、上機嫌な夫人はとにかく私を撫で回して頬擦りまでしてくれた。
「アメリア、本当に離婚するの?」
「ええ、息子たちの教育に悪いし、働かないのに金食い虫なんだもの」
姉と私は、金食い虫を、金貨を食べちゃう虫がいるんだってびっくりした。
金貨を持ったことはないけど、いつか持つようになったら虫除けとかしなくちゃって。
「離婚ねぇ、私は嫁入りだから離婚になったら追い出される方だもの。さすが女主人は思い切りが良いわねぇ」
「そうねぇ、うちは子供があと少しで成人だし、何とかなるまできてるからぁ」
よくわからないけど、嫁入りより婿取りの方が女性が強いんだなって漠然と思った。
普通の家は浮気は泣き寝入り・・・。
浮気って結局なんだろう?
帰る時に夫人からたくさんのお菓子とお花を貰った。
帰宅後、母が父に今日の報告をしたら、嫌な顔をされて。
「良いか?男女のことに他人が口を挟むことはよくない。今度そう言った現場を見ても静かにそっとその場を離れるんだよ」
そう諭された。
悪い相手だったら私が殴られたり、危険な目に遭うからだって。
父の真剣な顔に私はただ頷くだけだった。
クラエス家は、王都からかなり離れた田舎に領地を持っているが、遠すぎるので父の弟に管理を任せて、王都の少し中心から外れたタウンハウスで一家で暮らしている。
私にとってはそれが普通で特に上にとか思ったことは無かったけれど、兄と姉は、学園の同級生を見て、もっと上の暮らしをしたいと言っていた。
父は、ごく平凡な善良なタイプだと思う。野心はなく、いつもの暮らしで満足していて、領民の暮らしが安定していれば問題はないって。
さすがに災害対策とか、何かの時を想定して蓄えようよって子供ながらに思うほど、のほほんな父なので、私は父に似たんだと思っている。
母は、親が決めた結婚でうだつが上がらない(母、祖母談)父と結婚したことは不本意らしい。
貧乏じゃないんだから良いじゃない。
だからか、ちょっと野心がある。自らガツガツ行きはしないけど、出来ればもう少し良い暮らしがしたいと、兄と姉の婚約相手を吟味して、持参金や繋がりに期待して?
母よ、貴女は多少美人寄りですが、兄と姉、私は地味で控えめな平凡な顔なので高望みは無謀です。
兄姉は、母寄りの考えを持ってて、ちょっと上昇志向があった。
学園に通うようになった二人は身嗜みに気を使い、流行りの髪型や衣装など着飾ることに余念がない。
親戚や両親の友人を見ているとみんな華やかで、うちの家族は地味だなぁって思ったけれど、兄と姉は、自分たちがあちら側だと思ってるっぽい。
私が十歳の頃、母の従姉妹のお茶会に連れて行かれた時、退屈でちょっとした出来心で席を離れた。
うちの庭にはない花を見て、他の花を見ようと奥まった場所に行ってしまった。
「きゃぁああああああああああ!!!」
目の前には男の人にのし掛かられた侍女らしき女性がいて、顔を真っ赤に息が荒れてたので女の人が男の人に襲われていると思って恐怖で叫んでしまった。
「な!!」
男の人が私の口を塞ごうと手を伸ばして近づいてくる。
尻餅をついた私の目線は男の人の腰の高さだった。
大きな男が迫ってくることが怖くて。
「いやぁーーー!!」
「何事ですか?!」
護衛の人や侍従がやってきて、その後からここの夫人とうちの母たちが付いてきた。
服を乱した男の人と動けずにいた女の人を見た夫人が顔を真っ赤にして男の人の頬を殴った。
私のことは侍従が抱き上げて運んでくれて、お茶会は解散になったものの、私と母と姉は客室で待機になった。
「もう!勝手にいなくなったと思ったら大変なことをして!」
母がプリプリしてる。
大変なことってなんで?
悪いのは男の人でしょ?
「秘め事を暴いたって良いことなんか何もないのよ!」
「秘め事?」
「お母さま~、この子に言ったって無理よ。この子は人のデートをうっかり見ちゃうこと多いんだから」
四歳上なだけの姉だって〈秘め事〉だなんてわかるわけないでしょ?わかるの?
姉は笑いながら母に言う。その時は大体姉も近くにいたから姉も詳しい。
姉は、私が今までに何度か見てしまった、男女が抱き合ってるとか口を合わせてた話を面白そうに話す。
ただその人物の特徴を話した時に母の顔が怖くなった。
「マギー?もう人気のない場所に言っちゃダメよ!」
母は私の肩に指をめり込まさんばかりに握った。
鬼気迫った顔に私も横にいた姉も怖くなって頷いた。
でも今までだって人気がない場所に行ってたわけじゃないんだけどな。
今日はただお花見てただけだし。
しばらくして、夫人が入ってきた。もう怖い顔はしてない。
「お待たせしてしまってごめんなさいね」
笑顔で私を抱きしめにきた。
「メリンダ、私やっと離婚出来るわ。婿養子の分際で好き勝手した夫の不貞現場をたくさん目撃者付きで見られたんですものぉ」
「え、離婚!!?」
「ええ、浮気は以前から疑っていたんだけどなかなか証拠が近めなくってぇ」
あの男の人は婿養子で、今日は妻が茶会で忙しいからとたかを括って、庭の片隅で情事に耽っていたらしい。
私はあれが男女の営みで夫婦間、恋人同士ですることだと初めて認識した。
今まで見たのは軽いものだったけど、確か別のお相手がいたよねって一人混乱していたけど、上機嫌な夫人はとにかく私を撫で回して頬擦りまでしてくれた。
「アメリア、本当に離婚するの?」
「ええ、息子たちの教育に悪いし、働かないのに金食い虫なんだもの」
姉と私は、金食い虫を、金貨を食べちゃう虫がいるんだってびっくりした。
金貨を持ったことはないけど、いつか持つようになったら虫除けとかしなくちゃって。
「離婚ねぇ、私は嫁入りだから離婚になったら追い出される方だもの。さすが女主人は思い切りが良いわねぇ」
「そうねぇ、うちは子供があと少しで成人だし、何とかなるまできてるからぁ」
よくわからないけど、嫁入りより婿取りの方が女性が強いんだなって漠然と思った。
普通の家は浮気は泣き寝入り・・・。
浮気って結局なんだろう?
帰る時に夫人からたくさんのお菓子とお花を貰った。
帰宅後、母が父に今日の報告をしたら、嫌な顔をされて。
「良いか?男女のことに他人が口を挟むことはよくない。今度そう言った現場を見ても静かにそっとその場を離れるんだよ」
そう諭された。
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