長屋で暮らす俺の周りは面倒な奴らばかり(仮)

紫楼

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 蘇芳も銀時も会える可能性は少ないが言付けだけでも入れておこうと蘇芳の紅葉茶屋を訪ねた。
 一軒目で会えるのは助かる。あちこち管理しているからな。

「竜、どうした?」
 蘇芳が飄々と迎えてくれ、茶屋の中の自室に入れてくれる。ちょうど銀時も居たようだ。

「常盤屋か客の個人間のやつかも知れんが暴力行為を確認した。結構ひでぇ」
「・・・芙蓉か?」
「ああ」
「常盤屋でそんな話あったか?」
 銀時が首を振る。
「芙蓉も常盤屋も断れない相手・・・最近変わった代官くらいじゃないか?」

「だが代官だって遊女の見受け金は大きくねぇか?」
「なんかきな臭いね」
 蘇芳が煙管を取り出し蒸す。
「・・・芙蓉が自分が逃げれた時の保険にって預けてきた」
 金子袋だ。

「わかってて行くんだな」
「自分が戻らない時はトリの成人の晴れ着の足しにしろってさ」
 二人とも微妙な顔になった。そりゃこの手の預け方はなぁ。
「トリの保護者はテメェだ。蘇芳が持ってろ」
 銀時も蘇芳もこの辺りのシマを荒らされないように管理しているがお上の側の人間には手は出せない。領分が違うからな。

 蘇芳は金子の重みに顔を顰めながら、
「あの払いに激シブな常盤屋でこんなに貯めて、さらに下の子たちに色々してやってたのか・・・」
 きちんとした大店の後妻にでも入れればしっかりした締まり屋女将にもなれただろうな。
「少し情報を仕入れてくる」
 銀時が出て行ってしまった。

「んで、竜よ。芙蓉と寝たのはどう言うこった?」
 銀時が外した途端、ニヤッと笑って聞いてくる。
「どうも何も衿元や袖口からあざが見えて。いきなりひん剥いて確認なんざ出来んだろうが」
 バツが悪い俺をニヤニヤ見てくる。
「そんなんでお前が手を出してくるならそこら中の女が自分で傷を作って泣きついてくるぞ」
 そこらの女なら店の人間に任せて逃げる。

「テメェこそ、調べるなら常盤屋の他の女を抱いてこいよ」
 コイツらがたまに潜入調査しているのを知ってる。
「アザ調べるだけなら部下がやるさ~」
 煙管を蒸しながら、
「俺たちはいちいち抱いてたら身が持たないからおしゃべりしてお触りだけでいい関係を築くんだよ。半裸くらいまで脱がしゃわかるしなぁ?」
 って完全に揶揄われている。
「竜はなんだかんだ真っ直ぐだな」
 クソー!
 結局こいつら玄人の前じゃ赤子のようだ。手を出す前に丸投げすればよかった。

「すねんなよ。芙蓉はお前じゃなきゃ多分見せなかった。アイツはお前と出会ってからずっとお前が心の拠り所だったんだ」
「俺はそこまでの付き合いをした記憶がない」
 周防の紹介であちこちの女郎屋に品物持って売り歩いて顔を広げて。気に入られたら個人で呼ばれて特注で作る。納品で髪に挿してやり日常の会話をする程度が俺の仕事の流れだ。
 芙蓉は中級の店の中では割と頻繁に依頼をくれる上客で、毎回少しずつ会話が増えて行った。多少気心が知れた程度だと思っている。

「移り変わる客の中でいつ会っても変わらず体を重ねなくても話ができる相手なんてのは女郎には貴重だろうよ」
 結局やっちまったじゃねぇか。
「アイツは親に売られてからずっと常盤屋にいるが特定の相手と懇意にしたり客に入れ込んだりもしねぇ気性の強い女だよ。でもお前に前だけそこらの娘みたいだったな」

「お前は見てくれが歌舞伎の色男ばりに美人だし所作も綺麗でそりゃ女も勝手に乗っかりたい艶がある。だがその見てくれより心意気がより惹きつけられる」
 無茶苦茶クサイ事言ってんじゃねぇよ。

「芙蓉はお前の心そのものに触れられて幸せだろうよ」
「そうかよ」

「俺もなんか艶っぺぇことしたいなぁ」
 煙管をプカプカしながらつぶやく。
「ほっといても女が勝手に跨るだろ」
「お前、俺はそんなんに飽きたから言ってんだよ。やっぱ楚々とした女にしなだれかかられたい」
 それ結局グイグイくるやつじゃ?

「そーいや、小鳥が今日預かり先なくて助左に預けてある」
 は?
「お前は居なかったしお蝶は生徒が来てたから」
 いやいや?茶屋の使用人や銀時んとこの手下や長屋の他のおっかぁとかいるだろう?

「帰る!!」

 アイツはガキがいようが女が来たら盛りかねん!
 後ろで蘇芳が笑っているが知らん!


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