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 フランシス家とアルネス家はそれなりに古い家でお父様たちは幼馴染でもあるので私も幼い頃からアルネス家の領地で過ごしたりしていましたわ。
 幼い頃はグランディスさまにも遊んでいただいたり勉強を見てもらったこともあります。5歳上は当時の私にとってかなり上に感じられて髪の色がお父様と私と同じ黒色ですので兄がいたらグランディスさまのような感じだったのかしらと思ったものです。

 グランディスさまが学園に通うため王都中心の生活になって、卒業後はおじさまと領地経営で忙しくされていてお会いする機会が無くなって、マークとも学園入学以降会うことがどんどん少なくなって今日に至ったわけです。

 私も弟が育つまでは控えとしてフランシス家を支えるために領主教育や友人作りにとがんばってきたつもりなので、入婿とは言え勉学に身を入れず、見かけるたびに違う女性を連れているマークには愛情が持てていなかったから、とうの昔に関係を改善することを諦めていたのでしょう。
 結婚はしなければ、家同士の関係に亀裂を入れてはいけないと。
 貴族としてと言う枷に自分で雁字搦めになっていたようです。
 早く両親に相談していれば、お互いの家の妥協点を探り穏便に解消していたのだと思います。

 やはり痛み分けという感じに持って行くべきだと判断してグランディスさまのことは白紙にしていただきましょう。

 考えがまとまったのでお伝えしようと思ったらお父様がとても残念なものを見るようなお顔です。

「お前は自分の思考に夢中になると周りの声や音が聞こえなくなる。侯爵家当主としても一貴族としても良くないぞ」
 
 えーと、きっと多分家族の前で以外はそこまで考え事に没頭しないはずです?

 プッと吹き出す音がしてそちらを見るとグランディスさまが肩を揺らしています。おじさまもおばさまも小動物を見るような眼差しです。
 お母様はおそらく慣れている?もっと早く注意してほしかったのですわ。

 私が黙考中にお父様がグランディスさまを説き伏せたそうで白紙にはできないそうです。なんということでしょう?

 アルネス家には家の家令候補から優秀な人を移動してもらい、商業ギルドや文官職の人を派遣で雇い、グランディスさまもお手伝いで定期的に通って、おじさまの負担を減らして行くことで合意と言うことらしいです。
 後継については、弟が後を継げば私たちがアルネス家を継ぎ、弟が継がなければ私の産んだ子たちの中からアルネス家へと養子をと。
 遅くとも10年以内には確定していることでしょう。


「クリスタニア嬢、このような状況で年若いあなたには申し訳ない気持ちだが、幼い頃から聡明なあなたを見ていてとても尊敬している。あなたを大切にすると誓うから、あなたを守る盾となることを許してほしい」

 私の前にひざまづいたグランディスさまはそっと手を取り、プロポーズをしてくださいました。
 受け入れる時も『申し訳ない』というのですね。

 私はちょっと泣き笑いで「はい」と伝えました。グランディスさまは本日初めて微笑んでくださったのです。
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